イタリア人記者が訴えるアッという間に蔓延するコロナの怖さと社会格差

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2020年03月29日 18:25  AERA dot.

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写真普段は通勤の車で混み合う道路は、車の通行がほとんどなくなっていた=17日、イタリア・ローマ (c)朝日新聞社
普段は通勤の車で混み合う道路は、車の通行がほとんどなくなっていた=17日、イタリア・ローマ (c)朝日新聞社
 発症国の中国を抜き、世界最多となった米国は感染者が10万人を突破、死者は1619人に達した。次いで多いイタリアは感染者が8万6498人に達し、死者数は9134人と世界最多となっている。イタリア出身で米国の首都ワシントン在住のジャーナリスト、シッラ・アレッチさんが両国の現状をルポした。

【写真】国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の記者、シッラ・アレッチさん

*  *  *
 イタリアの新型コロナウイルス感染ホットスポットとして世界中で知られるようになったロンバルディーア州のベルガモという小さい街に私が初めて訪れたのは今年1月26日だった。いとこがそこに住んでいて、ローマから電車に乗ってミラノ経由で訪問した。

 私がイタリアを去ったのは2月中旬。ローマ空港の到着ターミナルでその時はもう赤十字社のボランティアが旅行者の体温をチェックしていた。ただ、多くのイタリア人にとってはコロナウイルスがまだ他人事で、私も遠い中国の問題のように思っていた。

 L’Eco di Bergamoという地元新聞の電子記事を見ると、コロナウイルスの感染者が爆発したのは2月23日以降だ。それまでロンバルディーア州で感染した人はわずか15人程度だった。

 その2月23日、私はアメリカの米国ワシントンに帰国した。首都のワシントンの空港では誰もマスクを使っていなかったし、誰も旅行者の体温をチェックしなかった。

 約1ヶ月後の3月23日、ロンバルディーア州の感染者が28761人に上っていた。L’Eco di Bergamo新聞の死亡記事欄も劇的に増えた。

 その間、イタリア政府が非常事態宣言を出し、外出禁止、隔離などを命じた。今も必要不可欠なサービスだけは営業しているが、学校、映画館、博物館などは閉まっている。

 家族のうち1人だけ外で買い物することは許可され、食べ物と薬を買いたい人は買えるが、外出許可書を持たず、説明できない理由で外出した人は罰金が課される。今まで2千人ぐらい罰金されたそうだ。

 ホットスポットとなったミラノに在住する記者の多くは、自宅でリモート作業をしている。年配の人と同居している記者は家で仕事しながら気を配っているという。自主隔離しながら電話などでインタビュー、取材をしている。

 普段、経済やヘルスを取材するグローリア・リヴァ(Gloria Riva)記者に話を聞いたら、彼女は毎日、5〜6回ぐらい医者や看護婦から電話で談話をもらうと話していた。

 咳をしながら彼らはリヴァ記者に一日中の出来事や病院での経験を語る。目の前で患者や同僚が死ぬこともあり、その医者や看護師たちも寂しさや疲れで心身ともに疲労困憊しているという。

 毎日午後6時には、多くのイタリア人は家の窓を開けたり、バルコニーに出て歌を歌うことが今では世界的に有名になった。賛歌はもちろん、流行歌も歌う。フィレンツェに住んでいるオペラ歌手、マウリチオ・マルキーニ(Maurizio Marchini) さんは「ネッスンドルマ」や色々なオペラの曲を歌った。そのことがソーシャルメディアで放送され、人気になった。

 しかし、政府が隔離を命じてから3週間以上が経過し、多くのイタリア人はストレスを溜めている。ローマに住む私の家族と話すと、目で見えないウイルスを怖がりながら、家に閉じこもっていることは、心身の健康を損なっているようだ。

 その一方、私が住んでいるワシントンはまだ、感染政策がイタリアほど厳しくない。おそらく多くのアメリカ人がコロナウイルスの重症度を理解したのは俳優、トム・ハンクスのおかげだと思う。3月に奥さんはオーストラリアへの旅行中に感染し、自主隔離したことを発表した。その間、米国西海岸やワシントン州などでは感染者が増加し続け、ドナルド・トランプ大統領が行動を起こすのを国民は待っていた。

 しかし、数日前まで政府と近いテレビとして知られている有力チャンネルで放送された番組では、コロナウイルスについてフェイクニュースを流し続けていた。プレゼンターたちはコロナウイルスがインフルエンザよりも危険ではない、と視聴者に力説していた。「大統領に対する政治的武器だ」と1人が話していた。

 その後、状況はゆっくりと変化し始めた。私が住んでいる首都ワシントンで最初に確認された患者は、大統領と副大統領も出席した保守党の会議に出席していたそうだ。

 今年11月には大統領選挙が控える。アメリカ人はトランプ政権を維持するか、民主党の候補者を選ぶか、投票するので、コロナウイルスは最も政治的な事件になっている。

 トランプ大統領はついに緊急政策を発表した。緊急資金援助、PCRテストの普及(しかし、本当は足りていない)、海外からの渡航禁止令……。
記者会見でこれらの措置の理由について質問した記者団に対し、トランプ大統領は「私は何の責任も負いません」とためらうことなく答えた。

 アメリカのバスケットボール協会であるNBAでさえ、この状況に備えていたことがわかった。中国に200人の従業員がいるNBAは1月からコロナが世界的流行するかもしれないと準備計画を実施していたと報じられた。

 この危機はアメリカの州間、そして富裕層と貧困層の格差を明らかにした。民主党の候補者を選出する州は、投票箱を閉じ、メールで投票するために準備に取りかかっている。イリノイ州とフロリダ州では、投票箱は設置したが、一部の担当者を含め、多くの人が感染を恐れて現れなかったそうだ。

 ニューヨーク州にはだんだん感染者数が増えて、毎日より厳格な措置を発表している。その一方、国の政治的中心部であるコロンビア特別区では多くの人々がウイルスの危険をあまりわかっていないと感じる。

 先週から美術館や事務所は休業。一部のレストランでは持ち帰り用の料理を提供している。市立図書館は閉鎖されているが、映画は無料ストリーミングを提供している。多くのジムはオンライントレーニングを提供している。学校も閉鎖されており、残念ながら、学校の食事に依存している多くの貧困な子供を危険にさらしている。

 多くの社会的行動は民間人に任されている。アメリカで有名になったスペイン人シェフ、ホセ・アンドレス(jose Andres)さんは、自分のレストランを貧しい人々のために料理を作るキッチンに変えた。近隣のバーやクラブをサポートするために、将来使えるクーポンの発行も検討している。一部のレストランは閉鎖されているものの、希望の象徴として、照明付きの看板は点灯したままにしているが、数百万人の派遣労働者が仕事を失い、いま失業手当を待っている。

 日本と同じで今の季節は、ワシントンでも桜が咲き誇るが、今年は有名な桜を祝うイベントは中止になった。しかし、先週末は多くの人が花見していたという。

 日本、アメリカなど各国の政治家にはイタリアの経験を見て、いろいろと参考にしてほしい。何をすべきか、何をすべきでないか、考えてほしいがもう遅い気がする。窓際で歌うイタリア人を賞賛するだけではどうにもならない状況にある。(シッラ・アレッチ)

※週刊朝日オンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • NHKのニュースで、豪華客船隔離を非難してたイタリア人記者はどこ行った?
    • イイネ!4
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  • コロナは大したことないと言い続けたのはWHOであり隠ぺいしたのはチャイナだろう?その結果がパンデミックだわよ。
    • イイネ!23
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