「耳鳴りが続くと耳が悪くなる」は間違い! 最新医学が明らかにした原因とは?

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2020年04月01日 11:30  AERA dot.

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写真(イラスト/寺平京子)
(イラスト/寺平京子)
 人口の15〜20%、1千万人以上──日本における耳鳴りの推定患者数だ。「耳鳴りが続くと耳が悪くなる」と思われがちだが、事実は異なる。最新の医学が明らかにしたのは、「耳鳴りは耳ではなく脳のせいで起きる」ということだった。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、専門医を取材した。

*  *  *
 耳鳴りとは、「実際には音が鳴っていないのに音を感じる現象」だ。耳鳴りのメカニズムとして、昔は「耳(内耳)の異常により起こる」と考えられていたが、近年では「難聴によって脳に伝わる音が減るために、脳が音をキャッチしようと過剰に働くことで起こる」ということがわかっている。

 しかし、「日本ではまだ世界標準的な耳鳴りの治療を受けられる医療機関は少ない」と慶応義塾大学病院・耳鼻咽喉科の神崎晶医師は話す。

 通常、耳から入った音は、内耳の蝸牛という部分で電気信号に変換され、聴神経を通って脳に伝わる。しかし、難聴になると脳に音が伝わらなくなる。

 加齢により起こる難聴・加齢性難聴を例に取ろう。加齢性難聴は、蝸牛の有毛細胞が障害されることで高音が聞き取りにくくなるという特徴をもつ。その場合、高音の電気信号だけが耳に届かなくなるため、脳が高音の電気信号を補おうと過度に反応し、耳鳴りが発生する。耳鳴りの患者数は全人口の15〜20%といわれているが、なかでも65歳以上の高齢者は有病率が高く、約30%といわれている。

 耳鳴りがあると、「このままでは耳が聞こえなくなるのでは」と心配する人がいるが、実際はその逆だ。耳鳴りが難聴の原因になるのではなく、難聴があるから耳鳴りが起こると考えられる。では、難聴にはどう対処すればいいのだろうか。

 難聴には、先天性の病気や中耳炎、加齢などいくつかの原因が考えられる。病気による難聴には、治療により改善するものもあるが、加齢による難聴には今はまだ根治的な治療法はなく、補聴器を装用して聞こえを補うことが有効だ。

 難聴を放置すると、コミュニケーションが減るなどの理由から、うつや認知機能の低下につながるといわれている。2017年のアルツハイマー病会議では「難聴は認知症の予防できる要因のなかで最大のリスク因子」と報告され、注目を集めた。そのため難聴がある場合は、認知症予防のためにも早めの補聴器装用がすすめられる。

 ただ補聴器は、つければすぐに聞こえるようになるものではない。聴力に合わせて適切に調整し、脳を「補聴器による聞こえ」に慣らすためのトレーニングが必要だ。補聴器の活用には、資格を取得した認定補聴器技能者による調整が重要になる。

 そのためにはまず、補聴器装用に関する専門的な知識と技能を持つ補聴器相談医を受診し、診療情報提供書を発行してもらう。日本耳鼻咽喉科学会では、この提供書を認定補聴器技能者のいる認定補聴器販売店に持参することを推奨している。

 杉内医院院長の杉内智子医師はこう話す。

「診療情報提供書は、補聴器装用に必要な患者さんの診療情報をまとめた書類で、販売店で補聴器の調整などをおこなう認定補聴器技能者との連携においても大切な役割を担います」

 このため18年からは診療情報提供書の活用により、補聴器購入において医療費控除が受けられるようになった。

 このように、難聴には補聴器装用が有効だが、難聴によって起こる耳鳴りの対処法としても、補聴器装用は有効だ。

 先ほど述べた通り、日本ではまだ耳鳴りの治療をおこなう医療機関の数が少ない。そのような社会的背景から、19年には科学的根拠に基づく適切な診断と標準的治療の普及を目的として、日本聴覚医学会により日本で初めて「耳鳴診療ガイドライン」が発行された。

 現在、国内で耳鳴り治療として最も多くおこなわれているのは薬物療法だが、ガイドラインによれば、使用されているほとんどの薬剤で、耳鳴りへの効果は認められない。ただし、抗うつ薬については、うつ症状を伴う耳鳴りには改善効果が期待できるとされている。

 ガイドラインで推奨されている治療法は、難聴がある場合には補聴器を装用することだ。不足している音が脳に届くことで脳の過剰な興奮を抑える効果や、耳の聞こえがよくなることで、耳鳴りの音が気にならなくなる効果が期待できる。

「補聴器が不要な軽度難聴では、専用の機器で耳鳴りより少し小さい音や環境音楽を流すことで耳鳴りを減らす『音響療法』もすすめられます」(神崎医師)

 ほかに、耳鳴りのメカニズムなどを正しく理解することで苦痛を軽減する「教育的カウンセリング」や、耳鳴りへの考え方を変える「認知行動療法」なども有用とされている。教育的カウンセリングでは、耳鳴りが発生するメカニズムを、患者が正しく理解することをめざす。とくに耳鳴りに対する不安や苦痛が大きい患者には有効とされ、このカウンセリングだけで症状が改善することもあるという。

 難聴の治療に補聴器装用のためのトレーニング期間が必要なのと同じく、耳鳴りの治療にも時間がかかる。神崎医師はこう話す。

「耳鳴りの治療では、効果が得られるまでに短くても3カ月、半年から2年ほどかかります。何回か通っただけで治らないからとあきらめてしまっては、いつまでも改善しません。治るためには根気強く通い続けることが大事であることも理解する必要があります」

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、補聴器外来の有無、本記事でも紹介した耳鳴り治療の一つ・音響療法の有無がわかる病院リストなども掲載しているので参考にしてほしい。(文・出村真理子)

≪取材した医師≫
慶応義塾大学病院 耳鼻咽喉科 神崎晶医師
杉内医院 院長 杉内智子医師

【おすすめ記事】「耳鳴り」の苦痛を軽減 今注目の「音響療法」とは?


このニュースに関するつぶやき

  • 2か月薬飲んで治らなかったので医師と相談の上で耳鳴り放置中。 そろそろ14か月ほど常時キーンだわ。
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