「わたしの裸はわたしのもの」 元AV女優・大塚咲さんが提訴「引退後もアダルトグッズに無断で写真使われた」

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2020年04月05日 09:31  弁護士ドットコム

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元AV女優で、写真家・アーティストの大塚咲さんがことし3月、アダルトグッズメーカーを相手取り、計460万円の損害賠償を求める訴えを起こした。


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大塚さんは2004年、AV女優デビューして、2012年に引退した。現在は、当時の女優名のままに写真家・アーティストとして活動している。



ところが、引退から7年経った2019年、自分の女優名を冠して現役時代の写真を使ったアダルトグッズが、無断で販売されたことに気づいたのだ。(ライター・玖保樹鈴)



●「一度脱いだら自己責任」はおかしい

「これまでAVに出演した人の権利は、引退後うやむやにされてきました。でも、『一度脱いでいるんだし裸に慣れてるのだから、何が起きても自己責任』というのはおかしいと思います」(大塚さん)



大塚さんは2019年6月、SNS上で、「大塚咲」の名と写真を使用したアダルトグッズの「新作」が複数発売されていることを知った。



そのころ大塚さんは、過去に出演した作品の削除を求めて、「AV人権倫理機構」への申請をすすめている最中だった。当時、引退して7年も経つのに「新作」が発売された、というつぶやきを目にして「全身の力が抜け、涙が出た」と語っていた。



使用された写真は、現役時代に別のグッズに使用するために撮影されたものだった。しかし、今回発売された2つのグッズと、別の女優とのコラボ商品に使用を許可した覚えはまったくない。



このことから大塚さんは代理人(弁護士)経由で、グッズメーカーに対して、販売を差し止めるよう警告した。



グッズメーカー側は、2019年7月31日までに販売を中止することを約束して、同年末までに2つの商品の販売は終了した。しかし、うち1つは2020年3月時点でも通販サイトで注文可能だったことから、今回の提訴に踏み切った。



「まず言っておきたいのは、私はAVに出ていたことを『黒歴史』と思っていないことです。だから、こんなふうに商売に利用されつづけることがなければ、過去の作品を消したいとも思いませんでした。



引退して3年が経った2015年ごろまでは、オムニバス作品やグッズもメーカー側に権利があるだろうと容認していました。でも、もう引退して8年が経ちます。このままいくと、半永久的に『新作』を出されるのではと恐怖を感じます。生身の人間なのに私の存在を無視して、まるでモノのように扱われていることに怒りもあります。



せめて事前に相談してほしかった。もう私の名前で商品を作らないでほしいけれど、どうしても出したいなら、事前に相談することもできたはず。それをせずに無断で発売したことに怒りを感じています」(大塚さん)



●「大塚咲」を取り戻すためにヌードを撮っている

写真家・アーティストとしての大塚さんのセルフポートレートやドローイング作品の中には、自身のヌードをテーマにしたものも多い。だから、「今でも裸を見せてるのに」という声がある。



しかし、AVと創作は違うもので、自分の身体は自分のものだからこそ、無断使用を止めたい気持ちがあるという。



「私は、AV女優として好き勝手に消費されてきた『大塚咲』を自分のものとして取り返すためにヌードを撮っています。



私の身体は私のモチーフなのだから、第三者に勝手に使ってほしくありません。また、『一度出演してしまったのだから、永遠に何をされても自己責任』というのは、AVに出演する人を差別する発言だと思います。



なぜ裸になったら、何をされても許さないといけないのでしょうか。一般的な映画やドラマの出演者が裸になったからといって、その姿を他人が勝手に使うことは許されないですよね。だから、その理屈自体がおかしいことになぜ気づかないのでしょうか」(大塚さん)





●代理人「プライバシーやパブリシティ権の侵害にあたる」

大塚さんの代理人によると、今回の無断グッズ販売はプライバシー侵害と肖像権侵害、パブリシティ権の侵害にあたるという。大塚さん側は次のように主張している。



・裸体または下着姿は、私生活上の事実としてそれを公開されない利益は強く保護されるべきものであり、AV女優を引退して8年間平穏な生活を送っていたのであるから、平穏な生活を営むという人格的利益は強く保護されるべきなのに、女性器などを再現した商品に下着姿や上半身裸の写真を使われることは、プライバシー権を侵害するものである



・商品に使われた半裸の写真は一般的には羞恥心を伴うものであり、その公表により精神的苦痛を受ける可能性が高いにも関わらず、引退して8年が経過してから使用されることは同意の範囲を超えていて、肖像権を侵害する違法な行為と言える



・かつてAV女優であり、引退後は写真家・画家として「大塚咲」の名前で活躍していることから、本人の同意なく写真が使用されたことにより主観的利益が侵害されたものであり、パブリシティ権侵害がある



このように不法行為に基づく損害賠償や、今後、画像や動画、名前を商品や宣伝に使用しないことを求めている。



●伝説の女優、黒木香も裁判していた

過去に公の場でヌードを披露したり、性的に奔放な発言をしていたら、その当時の姿を二次使用されても仕方がないのか。引退後のAV女優には「忘れられる権利」はないのか。



昨夏、NETFLIXで『全裸監督』というドラマが公開されたことを機に「引退した女優の過去を本人の許可なく描いて良いのか」という議論が起きた。



この作品は、実在の人物をモデルにしたフィクションであるものの、伝説のAV女優と呼ばれる「黒木香」という女性が登場する。



生い立ちの設定こそ変えてあるものの、森田望智が演じる「黒木香」は、現役時代に出演した作品や語った言葉などをほぼなぞったキャラクターになっていた。



「黒木香」と呼ばれた女性は、同作に対しては沈黙を守っている。



一方で、引退してから10年が経過した2004年、現役当時のセミヌード写真やビデオ画像を掲載しながら、撮影時の様子や彼女の家族のことなどを伝聞形式で記事化した週刊誌の版元を相手取り、1650万円の損害賠償を求める訴えを起こしている。



彼女は現役時代、深夜番組のみならず討論番組やバラエティにも出演して、積極的に性的な発言をしていた。また自身の著書でプライバシーに関することも開陳していた。



しかし、女性は「過去の著書にプライバシーに関する記述があったからといって、未来永劫にわたり放棄されたことにはならない」などとして、裁判に踏み切った。東京地裁は2006年、出版社側に220万円の支払いを命じている。



「原告がかつてそのようなことをしていたからといって、原告のすべての私的事柄について包括的にプライバシーを放棄したとは認められないし、いつ、いかなる状況の下においても性生活や性行為についての私的事柄を公開されていいとまで同意していたとは認められない」(東京地裁)



●引退した女優の肖像を使うことを阻止するきっかけに

女性は引退後、沈黙を守っているが、大塚さんは現役時代の「大塚咲」の名前で、活動をつづけている。その違いはあるものの、「だからこそ自分の作品として、自分を守る権利が私にはある」と大塚さんは語気を強める。



「アーティストは自分の作品と似たようなものを誰かが作ったら、異議を申し立てるものです。また、引退した女優の中には、当時の自分と決別して、事務所との関係を断つ人も多くいます。



そういう人は過去の自分の裸が、誰かの商品として今も使われていても、それを止める手立てがありません。私もここまで行動を起こすのは勇気がいることだったけれど、引退した女優の映像や写真を勝手に使うことを阻止する、きっかけになればと思っています」(大塚さん)



●生きている人間で物じゃない

大塚さんは投稿サイト「note」でも、今回の提訴に至る胸中をつづっている。
https://note.com/otsukasaki/n/nc4176e34b426


このニュースに関するつぶやき

  • 『日本列島は日本人だけのものじゃない』とおっしゃった宇宙人が居ましたね。
    • イイネ!4
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  • コモディティ化したAV業界で、昔の人のグッズや作品が売れるってすごいな。「無かったこと」にはできないが、権利侵害は正していかないとね。
    • イイネ!15
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