「日本の野球なんて認めねぇ…」セーフティバントに“ブチ切れた”助っ人

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2020年04月05日 16:00  AERA dot.

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写真敗戦処理時のセーフティバントに怒りをあらわにした元オリックスのフレーザー(c)朝日新聞社
敗戦処理時のセーフティバントに怒りをあらわにした元オリックスのフレーザー(c)朝日新聞社
 コロナウイルス拡大の影響で今シーズンの開幕がいつになるのか不透明な状況が続くが、野球を観ることが出来ない今、懐かしいプロ野球のニュースを思い出し“野球ロス”を少しでも和らげてもらいたい。そこで『プロ野球B級ニュース事件簿』シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80〜90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「バントは怖い!?編」だ。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

*  *  *
 1996年にダイエーに入団したドミニカ出身のホセ・ヌーニェスは、味方のファインプレーのたびにマウンドで派手なガッツポーズを披露する陽気なキャラクター。スリーアウトチェンジになると、ベンチまで全力疾走で帰る姿も好感を呼んだ。

 来日初登板となった開幕2戦目、3月31日のロッテ戦(千葉マリン)では、7回1失点で順調に白星スタート。だが、そんなホセにもバント処理が大の苦手という弱点があった。

 4月13日の近鉄戦(福岡ドーム)、ホセは1回、先頭の内匠政博を3球三振に打ち取るが、2番・大石大二郎がセーフティバントで三塁線に転がすと、マウンドから1歩も動けず、呆然と見送った。

 2回にも水口栄二がバントの構えで揺さぶると、「すぐダッシュしなければ」と焦るあまり、制球を乱して四球を献上。直後、連打と犠飛で失点を重ね、負け投手になった。

 そして、5月7日の近鉄戦(日生)で、“世紀の珍プレー”が演じられる。

 初回にボークなどで3点を失ったホセは2回1死一塁、大村直之に三塁線ギリギリのセーフティバントを決められると、なんと、ボールに向かってフーフーと息を吹きかけ、ファウルにしようと試みたのだ。結果はもちろん失敗で、内野安打となった。直後、味方の守乱にも足を引っ張られ、3回途中7失点KO。この試合を最後にリリーフに回された。

 ところが、リリーフデビューをはたした同11日の西武戦(福岡ドーム)でも、バント攻めに泣かされる。

 2点リードの8回に3番手として登板したホセは、この回を3者凡退に抑えたものの、勝利目前の9回無死一塁、松井稼頭央に投前セーフティバントを決められた直後、河田雄祐の送りバントを一塁悪送球して1失点。さらに犠飛で1点を失い、勝てたはずの試合を引き分けにしてしまった。

 さすがにこれではまずいというわけで、その後、武田一浩をインストラクターにバント処理を特訓。その甲斐あってか、6月に1勝8セーブを記録して月間MVPに選ばれたのは何よりだった。

 大量リードでのセーフティバントにブチ切れた助っ人投手があわや相手ベンチに殴り込み(?)という騒動が起きたのが、98年7月5日の近鉄vsオリックス(神戸)だ。

 7回、吉岡雄二の左越えソロで12対3と大きくリードした近鉄は、なおも1死一塁で、大村直之がセーフティバントを試み、三塁前に転がした(記録は内野安打)。

 これにブチ切れたのが、敗戦処理のマウンドに上がっていたフレーザー。「あんな場面でバントするとは!米国では考えられん!これが日本の野球かもしれないが、オレは向こうで14年間やってきて、野球には(暗黙の)ルールがあることを知っている!」というのが理由だった。

 しかも、この日はデーゲームで、最高気温35.1度の猛暑に加え、大量リードでの敗戦処理登板に対する不満も手伝って、イライラが最高潮に達したようだ。

 三塁側の近鉄ベンチに向かって「フ××ク!」を連発したフレーザーは、武藤孝司に右前安打、ローズに四球と完全に冷静さを失い、2死後、中村紀洋に2球続けて暴投と大荒れ。さらに3球目は、中村の背中にドスンと当ててしまう。怒った中村がマウンドに詰め寄ろうとしたのを合図に、たちまち両軍ナインによる乱闘が勃発。興奮するフレーザーを背後から抱きとめようとした仰木彬監督が振り飛ばされるシーンも……。

 そして、騒ぎが収まり、ようやく試合が再開されようというときに、オリックスのコーチ、選手が血相を変え、近鉄ベンチへと走っていった。

「うわ、殴り込みか!?」と報道陣は色めきたったが、実は、フレーザーがトイレに行ったのを、ベンチ裏の通路を通って殴り込みにいったと早とちりし、大慌てしていたというしだい。仰木監督は「みんながイラつく展開になったということや」と冷静に分析していた。

 送りバントの際に二封を狙った送球が外野のフェンス際まで転がる大暴投になったのが、99年4月16日の日本ハムvs西武(西武ドーム)だ。

 2対2の延長10回、日本ハムは金子誠が四球を選び、無死一塁。次打者・井出竜也は送りバントで投前に転がした。

 打球を処理した森慎二は、二塁は間に合わないと思い、一塁に投げようとしたが、直後、「ギリギリだったから、投げる場面」と捕手・伊東勤が二塁を指示したことから、前代未聞の珍プレーが生まれる。

 慌てて森が二塁に投げたボールは、力が入り過ぎ、ベースカバーの松井稼頭央の頭上を遥かに越えて右中間へ。必死に追いかけるセンター・清水雅治、ライト・河田雄佑を尻目に、フェンス際まで転がっていった。

 この間に一塁走者・金子はもとより、井出までがダイヤモンドを1周。4対2と勝ち越し、そのまま逃げ切った。

 送りバントが“ランニング2ラン”(記録は犠打野選とエラー)になった井出は、2月28日のオープン戦(中日戦)でも、平凡な遊ゴロが福留孝介の目の前で大きく跳ね、左中間に抜けていく珍ランニング本塁打を記録したラッキーボーイだったにもかかわらず、「疲れた。あんなことは野球をやって初めてのこと」と信じられないような表情。一方、“世紀の大暴投”を犯した森は「手が滑った?違います……。みんなに申し訳ない」とうなだれていた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

このニュースに関するつぶやき

  • 大量リードの終盤にバントって侮辱行為だろ。そんな恥知らずなチームが消滅して良かったわ\(^o^)/ https://mixi.at/a6xkM0E
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  • ドリスもヘタクソやったな。去年福田が見事に攻略してくれたわ。 https://mixi.at/a6xkM0E
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