「最近の選手は死球の避け方が下手」張本勲氏の主張は本当か検証した

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2020年04月07日 16:00  AERA dot.

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写真巨人・坂本は厳しいマークの中でも死球の数が多くない選手の一人 (c)朝日新聞社
巨人・坂本は厳しいマークの中でも死球の数が多くない選手の一人 (c)朝日新聞社
 先月21日、ヤクルトに新加入した嶋基宏が阪神との練習試合で右手に死球を受けて骨折。新型コロナウイルスの影響でシーズン開幕が再度延長されたことは救いだが、新天地での復活に向けて非常に厳しいスタートとなったことは間違いない。そしてこの嶋の死球について苦言を呈したのが球界のご意見番こと、張本勲氏だ。嶋の離脱直後に放送されたTBS系「サンデーモーニング」の中で、死球の避け方が下手だと一刀両断したのだ。更に張本氏は、今の球界には死球の避け方を教えるコーチがいないことについても言及した。では果たして過去の名選手たちは死球に対しても強かったのか。データを見ながら検証してみたいと思う。

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 2019年シーズン終了時点の通算死球数ベスト10を並べて見ると以下のような顔ぶれとなった。

■通算死球数10傑
1位:清原和博 196死球
2位:竹之内雅史 166死球
3位:衣笠祥雄 161死球
4位:阿部慎之助 152死球
5位:村田修一 150死球
6位:井口資仁 146死球
7位:稲葉篤紀 138死球
8位:井上弘昭 137死球
9位:中島宏之 134死球
10位:田淵幸一 128死球

 現役は中島だけだが、過去10年以内に引退した選手は阿部、村田、井口、稲葉、と4人を数える。ちなみに張本氏の通算死球数は78と決して少なくないが、トップ40人にも入っていない。これを考えると張本氏の言うことも一理あるのかなという気もしてくる。

 また死球というと強打者に多いイメージが強いが、通算本塁打数のトップ10人の通算死球数、死球率(打席あたりの死球数)を調べてみると以下のような結果となった。

■通算本塁打数10傑
1位:王貞治(868本塁打) 114死球 死球率.010
2位:野村克也(657本塁打) 122死球 死球率.010
3位:門田博光(567本塁打) 62死球 死球率.006
4位:山本浩二(536本塁打) 62死球 死球率.007
5位:清原和博(525本塁打) 196死球 死球率.021
6位:落合博満(510本塁打) 63死球 死球率.007
7位:張本勲(504本塁打) 78死球 死球率.007
7位:衣笠祥雄(504本塁打) 161死球 死球率.015
9位:大杉勝男(486本塁打) 85死球 死球率.010
10位:金本知憲(476本塁打) 72死球 死球率.007

 清原と衣笠の二人は多いが、他の選手については死球率が.006から.010の間に収まっているのがよく分かる。

 では現役選手のホームラン数上位10名を見てみるとどうだろうかーー。

■現役選手通算本塁打数10傑
1位:中村剛也(415本塁打) 82死球 死球率.012
2位:バレンティン(288本塁打) 15死球 死球率.004
3位:福留孝介(280本塁打) 49死球 死球率.006
4位:松田宣浩(274本塁打) 56死球 死球率.008
5位:中田翔(226本塁打) 43死球 死球率.008
6位:坂本勇人(223本塁打) 32死球 死球率.004
7位:山田哲人(202本塁打) 38死球 死球率.009
8位:内川聖一(196本塁打) 60死球 死球率.008
9位:中島宏之(195本塁打) 134死球 死球率.020
10位:ロペス(186本塁打) 22死球 死球率.006

 この数字を見てみると現役選手ながら通算死球数トップ10に入っている中島は高い死球率を記録しているものの、それ以外の選手は目立って多いわけではない。特にシーズンホームラン日本記録を保持しているバレンティンや、昨年40本塁打を記録した坂本などは非常に低い死球率を誇っている。特にバレンティンは日本での9シーズンでわずか15死球という数字は意外なほど少ない。これはホームベースから離れて立ち、そこから踏み込んでいくスタイルのため、余裕を持って内角のボールを避けることができている賜物であると言っていいだろう。

 古田敦也(元ヤクルト)が正捕手となってから、日本球界では相手打者の弱点を徹底的に突く配球が急増した。その結果として内角を苦手としていた清原には死球の数が多くなり、それが日本記録を更新する結果となった。またツーシームのようなシュートしながら打者の内角を突くボールが増えたことが、近年の強打者に対する死球の増加にも繋がっていると言えるだろう。

 しかし改めて過去の記録と比較して見ると、現役の打者が目立って死球が増えているというわけではない。福留、坂本、内川などは相手の厳しいマークの中でもしっかりと死球を避けて、長年コンスタントに好成績を残している。また現役でも成績が上位の選手は死球が原因で長期離脱を繰り返しているようなことはない。このことから見ても、張本氏の発言はあくまで印象論に過ぎないことがよく分かるだろう。

 今回は死球について取り上げたが、イメージから事実とは異なった評論や解説をしてしまうことは少なくない。印象やイメージも軽視することはできないが、事実となるデータと照らし合わせてみることで、意外な事実が浮かび上がってくる例は少なくない。実績のある元選手や解説者の発言を鵜呑みにはせず、あらゆる点から検証してみるのもまた野球の面白さの一つであることは間違いないだろう。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

このニュースに関するつぶやき

  • 西武→阪神→ヤクルト 金森選手は? 死球で特集を組まれて選手。 プロ野球選手としては大きくないが丈夫な印象があります。
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  • ちがうだろ,「死球の避け方がヘタ」ってのは,「当たる時に急所を外せない」のよ.「避けられない」って時に当たる角度や部位をうまく変えたりできるかどおかで,被死球数比べても意味ない.
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