地上波ミニドラマの増加が顕著、『きょうの猫村さん』制作Pが語る「新たなビジネスチャンス」

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2020年04月08日 08:40  ORICON NEWS

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写真『きょうの猫村さん』で主人公の猫村さんを演じる松重豊(C)テレビ東京
『きょうの猫村さん』で主人公の猫村さんを演じる松重豊(C)テレビ東京
 ほしよりこ原作の人気漫画『きょうの猫村さん』の実写ドラマが、4月8日よりスタートする。主演の猫村さんを松重豊が演じ、猫という性別も生物の垣根も超えた配役が話題となった。さらに、主題歌の作曲を坂本龍一が担当し、濱田岳、石田ひかり、染谷将太、安藤サクラなど、豪華キャストが集結。また、1話2分半、全24話と2クール放送されることも注目すべき点でもある。番組プロデューサーのテレビ東京・濱谷晃一氏に、実写化の背景、短尺ドラマの多い昨今のドラマ事情について話を聞いた。

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◆誰が演じても違和感はあった、松重豊だからこそ実写化できた

――なぜ、『きょうの猫村さん』を実写化しようと思ったのでしょうか?

【濱谷】 原作の世界観が大好きで、ドラマにしても健気な猫村さんの姿は、きっと多くの視聴者に温かく迎えられると思いました。

――実写化の構想は、いつ頃からあったのでしょうか?

【濱谷】 確か2015年に企画書を書きました。ただ、社内選考でも通らず、しばらく塩漬けになっていました。2017年に僕がプロデューサーを務めた『バイプレイヤーズ』の撮影現場で、松重さんのマネージャーさんから「松重さんが猫村さんを演じるのはどう思いますか?」と言われ、そのギャップに「それ最高ですね!」と奮えました(笑)。そこから企画を練り直し、出版元のマガジンハウスさんに提案しました。当時、原作者のほしよりこさんは映像化に慎重な姿勢で叶わず…。諦めきれなかったので、原作権をおさえられないまま、社内での放送枠獲得に向けて各部署への根回しや連動する配信社などを探しました。そして、2019年の春に改めてほしさんにアタックし、どうにか実写化のご許可をいただきました。

――松重さんが猫村さんだからこそ実写化の実現だったんですね。

【濱谷】 松重さんだから実写化できたと思っています。原作の世界観が強烈で、猫村さんは唯一無二の存在。どの役者さんが演じても違和感はあっただろうし、正直、決め手に欠けたと思います。「屈指の高身長、屈指のコワモテバイプレイヤーが演じるギャップ」だけど、「猫村さんのような健気で、実直で、おしつけがましくない温かさを持っている。」この相反する要素が松重・猫村さんには絶妙に同居していると思います。

――松重さんは、オファーを受けた際、どのように言っていました?

【濱谷】 『きょうの猫村さん』という原作を安易に実写化してほしくない1人だった」と述懐していらっしゃいますね。非常に勇気が必要であったろうし。でも、松重さん自身が原作にとても魅力を感じていたし、猫村さんを演じるという挑戦に役者魂がくすぐられたのではないでしょうか。「きっと『きょうの猫村さん』を他の俳優がやっていたら嫉妬する」と言っていました。衣装合わせから、撮影にいたるまで、松重さんは僕や監督にキャラクターについての質問はほぼされなかったと思います。すごいですよね。

――松重豊さんといえばテレビ東京というイメージもありますが。

【濱谷】 だとしたら、申しわけないですね(笑)。

――原作ファンを多く持つ作品だけにさまざまな声があると思います。実写化することへの弊害はなかったのでしょうか?

【濱谷】 制作段階では、ほしさんが了承してくださったので、特にネガティブな声はなかったです。むしろ、皆さんがこの突飛な企画を面白がってくれました。世間に発表したら賛否わかれるだろうなとは予想していましたが、想像以上に皆さん好意的でしたね。「振り切っていて良い」とか「テレ東らしい」とか。今後の皆さんの反応にドキドキしています。

――実写化でのこだわりはありますか?

【濱谷】 松重さんのギャップに甘え過ぎないようにしようと思っていました。シュールだから面白いでしょ? ではなく、原作の持つ温かさや、猫村さんを通して描かれる人間ドラマも、ミニドラマながら大切にしたいと思いました。

◆テレ東は、実験的でリスクのある作品を優先する風土を感じる

――『きょうの猫村さん』もそうですが、『孤独のグルメ』や『きのう何食べた?』など、テレビ東京は漫画原作のドラマの配役が絶妙だと思います。起用する際に、何かテレビ東京独特のポイントがあるのでしょうか?

【濱谷】 テレ東のドラマは外部のクリエイターによる企画も多いので、すべてテレ東独特のキャスティングだとは思っていません。ですが、テレ東で話題になるドラマは他局ではなかなか通りづらいようなキャスティングや企画が多いかもしれませんね。実験的だったり、リスクもあったりするので。テレ東には、そういうことを優先する風土があるのかもしれませんね。あと、単純におじさんの主役が多いですよね。個人的には「思わず応援したくなる」という何か足りない感じがテレ東のポイントかなと思ったりします。まあ、超人気アイドルがなかなか出演してくれない事情もあるんですかね?…テレ東には。

――『渋井直人の休日』や『バイプレイヤーズ』を手がけたふじきみつ彦さんが脚本を担当。どのように進めていきましたか?

【濱谷】 『バイプレイヤーズ』でご一緒したふじきさんのセンスには全幅の信頼を置いていましたし、Eテレでミニ番組を多数手がけている点も、本作にはうってつけだと思います。ふじきさん自身、飄々としていて、猫村さんみたいなところがありますし(笑)。まず全24話の構成を立てて、それから8話ずつ脚本にしてもらいました。ふじきさんの脚本があまりに良くて、ほとんど修正していません。脚本は、原作のほしさんにもご確認いただきましたが、大変おもしろがってくださり、一文字も修正はありませんでした。

――『きょうの猫村さん』は、2分30秒とかなり短尺のミニドラマですが、一話完結なのでしょうか?

【濱谷】 これは原作の特徴でもあるのですが、構成が独特ですよね。どこまでが繋がっていて、完結しているのかわからないような…。例えば、短い尺のコントだと、最後に明確なオチが待っているのですが、このミニドラマは「つづく」で終わるので、一話完結かと聞かれると、違うかもしれません。

――最近では、ミニドラマも増えています。なぜ、2分半という短尺になったのでしょうか?

【濱谷】 もともと原作がひとコマ連載ですし、日常のひとコマを切り取っていくような内容なので、通常のドラマより短いものの方が良いと思っていました。テレビにはミニ枠(2分30秒)という概念があるので、それを利用したら、ちょうど良いのではないか? と思い立ったのがきっかけです。

――とはいえ2分半に収めるのは難しかったのではないでしょうか?

【濱谷】 起承転結をつけるには短すぎるので、“承”くらいで毎度終わります。気を許すと、すぐにオーバーしてしまうのですが、ふじきさんが抜群のセンスでまとめてくれました。とはいえ現場では、ちょうど2分30秒サイズで撮影するのが大変でした。普段は、「あとは編集でどうにかします」「他のシーンで調整します」など工夫ができるのですが、ミニドラマは尺に関して逃げ場がない。松重さんがアドリブで助けてくれた部分もあります。

――逆に、短尺だからできたことはありますか?

【濱谷】 短尺だから、ひとコマ原作の雰囲気を大切にできたのかなと思っています。尺を持たせるための大きな事件を起こす必要もない。それと短尺だったことが、今回、脇役まで珠玉のキャスティングが実現できたことに繋がっています。演技力のある人気俳優に出演してもらえたのも、原作と松重・猫村さんの魅力のおかげです。撮影日数が絞れたことで、他作品で忙しいキャストも「1日仕事」で参加できたことも大きいと思います。

◆コンテンツや視聴環境の多様化で、地上波の短尺ドラマは新たなビジネスチャンスに

――近年は30分ドラマが増え、「ドラマを1時間観るのは疲れる」とYouTubeの台頭やサブスクリプションサービスなどの映像コンテンツ増加に伴い、気軽に観られる短尺ドラマを選ぶ人も増えています。制作者としては短尺ドラマについてどのように考えていますか?

【濱谷】 もともと映画や演劇が大好きなので、2時間かけて作られる起承転結の妙や、連続ドラマだからこそ得られるカタルシスは確実にあると思っています。ただ、コンテンツを観る様式の多様化で着実にショートコンテンツが求められているし、新たなビジネスチャンスが広がったと感じています。僕は今回、ミニドラマを開発して欲しいなどと会社から要請を受けたわけではなく、自分から「配信全盛時代にテレビ局が配信と連動したミニドラマを作ることは必要だ!」と力説して、枠を獲得した節があります。本作を成功させてシーズン2も制作したいし、すでにミニドラマの企画書を他に2つほど書き始めています。とらぬ狸の皮算用ですが(笑)。

――他局ですが『監察医 朝顔』(フジテレビ系)や『あなたの番です』(日本テレビ系)も2クールと、長く放送するケースが増えています。『きょうの猫村さん』も2クール放送されますがいかがですか?

【濱谷】 1クールだと最初の段階で決めた盛り上げ施策で最終回を迎えてしまいがちですが、2クールあると、視聴者の声を受けて一緒に考えられることがあるのではないのか、と期待しています。例えば、印象的だったのが、ドラマの情報解禁時に、松重・猫村さんと星野源さん演じるおげんさん(NHK『おげんさんといっしょ』のキャラクター)が一緒に戯れているイラストがネット上に多数上がりました。その発想は僕にはなかった。もちろん、絶対実現できないので、期待しないでください(笑)。

―― 一方、海外ドラマのように話数が多い長編ドラマは、制作者として作りがいのあるのでしょうか?

【濱谷】 映画と比較すると連続ドラマは尺が長い分、中心となる起承転結とは関係のない余白、日常が描けて良いなと思っています。話数が多いと描けることも増えるし、各キャラクターのバックボーンも掘り下げられる。キャラクターへの愛着を育てていくこともできるので、カタルシスも大きくなるのではないでしょうか。ただ、ビジネス的なメリットだけを理由に、長い話数ありきで企画をスタートさせるのは危険ですよね。望まれない引張りや、無駄な煽りが発生する恐れもあります。だから一概に話数が多いドラマを作りたいとは思っていません。ただ、そういう一長一短含めて、制作者として作りがいはあると思います。

――最近は一話完結ドラマの人気で、そうしたドラマが増え、地続きで物語が進むドラマが少なくなっています。短尺でかつ一話完結のドラマが増える現状について、制作者の立場としてはどのように考えていますか?

【濱谷】 個人としてはオムニバスやショートショートも大好きなので、一話完結の妙はあると思いますし、途中参加しやすいので、間口も広がりやすい思っています。一方で、大ヒットするコンテンツは全話つながったことで得られるカタルシスが大きい連続モノが多いと感じています。連続モノは途中参加がしづらいので、ハイリスクハイリターンなのかもしれません。また、連続モノは脚本家の力量も問われます。製作期間が短く、プロデューサー主導で複数の脚本家が数話ずつ並行して書くスタイルは、連続ドラマの大ヒットに繋がり難い印象があります。

――連続か一話完結か? 制作者としても難しいところなんですね。

【濱谷】 最近、僕が担当したドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』は、野木亜紀子さん脚本によるオリジナルドラマでした。全12話に1話ずつ『●苦』というサブタイトルがつく一話完結ものでしたが、その実、愛すべきダメ兄弟を巡る地続きの連続ドラマだっと考えています。一概に連続ドラマと一話完結を切り離さなくても良いのではないでしょうか。

――では最後に『きょうの猫村さん』を通して伝えたいことはありますか?

【濱谷】 「猫村さん」というキャラクターが大好きです。一途にぼっちゃんという恩人への再会を信じており、奉公先で邪険な扱いを受けても、自分にできることを猫なりに考えて、健気に頑張ります。嫌なことがあっても、すぐに忘れて鼻歌を歌う。猫村さんのように人に優しくできて、前向きに日々を過ごせたら素敵だと思うし、ドラマを観た人にもそんな気持ちになってもらえたら嬉しいです。

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  • 北海道やっとらんな
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