テレワークならぬ「寺ワーク」 葬儀社からの依頼でお通夜をライブ配信

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2020年04月08日 10:21  おたくま経済新聞

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おたくま経済新聞

テレワークならぬ「寺ワーク」 葬儀社からの依頼でお通夜をライブ配信

 親しかった故人とのお別れはつらく悲しいもの。さらに、遠方過ぎたり体調の問題などでお通夜も告別式も参列できないとなると、仕方がないとは言い聞かせてはいても悔いが残ってしまう……。せめてお通夜だけでも遠隔地にいる人と悲しみを分かち合う事ができる、そんな出来事がツイッターに投稿されました。


【さらに詳しい元の記事はこちら】


 「通夜をライブ配信してもいいかと聞かれました。コロナの影響で東京から帰ってこれない親族に配信するそうな。もちろんいいですよと答えました。これもテレワークですかね」と、“お通夜ライブ配信”を執り行ったのは、北九州市のお寺「永明寺」(浄土真宗本願寺派)の松崎智海さん。続くツイートでは、「お寺でやったら寺ワークかw」と。なるほど上手い……。感心して思わずクスッとしてしまいました。


 昨今のコロナ禍。人々の大規模な移動は日本全土に未知の危険なウイルスをばら撒く恐れから、上京した人たちは実家に帰ることすらはばかられる状態。きっと東京にいる親族の方も、帰省するにできない状況の中、せめてお通夜だけでもライブ配信で一緒に弔いの場に参列したいという、強い思いがあったのではないでしょうか。


 最初にこのお通夜のライブ配信の話が出たのは葬儀会社から。「大変失礼なことを申し上げますが……」と言われたので、何事かと松崎さんは身構えたそうですが、話を聞いてみると「なんだそんな事か」と拍子抜けされたご様子。ご遺族の希望を叶えてあげたい、という葬儀会社のはからいから打診された様です。


 葬儀会社からこのような話を打診されたのは初めての事だったそうで、「『親戚に見せるので録画してもいいですか?』と言われたことはありますが、ライブ配信してもいいですかと言われたのは初めてです。どのような形で配信したのかはわかりません。もしかしてテレビ電話程度のことだったかもしれませんが、今のご時世だと思いました」と松崎さん。


 また、今回の配信については「配信しようとしまいと私が行うことについては変わりませんので今後このような申し出があっても断ることはないと思います。また、浄土真宗の教義においては、すべての仏事は故人や先祖のためにあるものではなく、生きている私たちが亡くなっていかれた方々の死をご縁として仏法に遇わせていただく縁です。ですから日にちや時期にもこだわりませんし、受け止め方も様々あっていいと思います。そのご縁を大事にされることが何よりですので、これをきっかけにたくさんの方が仏様の教えに触れていただければと思います。とは言え、仏事は五感で味わうものですので、視覚と聴覚だけのライブ配信にはないものが実際の場にはあります。このようの時期ですので仕方ないとは思いますが、ライブ配信だけで全てが済んでしまうと考えるのはよくないのではないでしょうか」と語っていました。


 なかなか大規模な葬儀を行うのは難しい昨今。この危機がおさまってから、改めて偲ぶ会を行うのもまた一つの手段でしょう。それでも直接弔い偲ぶ機会に恵まれない人々にとっては、こうした弔いの場をライブで遠隔へ届ける事は心の救いになる事でしょう。



 松崎さんが住職を務める「永明寺」では、「縁が生まれてワクワクできる開かれたお寺」となることを目標として、普段は「お寺マルシェ」や「てらこや永明寺」などを行っているそうです。


 迂闊に外出して集まれない現在はこれらのイベントを行えない状態ですが、お供え物を必要な人に届ける「フードドライブ」活動、自分の死について考える「お寺で縁起でもない話をしよう会」や在日ベトナム人のための「ベトナム法要」など、ユニークかつ様々な取り組みを行っているそうです。これらの活動を通して「誰でもが気軽に来ることができて利用できる場所になれればと思っています」と松崎さん。


 これからのお寺は檀家さん以外でも気軽にお話を聞いてもらえるような、よろず駆け込み寺といった感じの「開かれたみんなの場所」が期待されるのかもしれませんね。


<記事化協力>
松崎智海(@matsuzakichikai)さん


(梓川みいな)


このニュースに関するつぶやき

  • 見えない所で終わっているよりいいんじゃないかな。実父の葬儀は2階の葬儀を1階のモニターに生中継したよ。それが近親者向けにネット上になるだけ。お世話になってるお寺も、大規模の法要は同じくお堂の上下階で生中継。
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