『グッド・ドクター』で触れる山崎賢人の温かみ 現代に向けた再放送のメッセージ

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2020年04月09日 06:01  リアルサウンド

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『グッド・ドクター』(c)フジテレビ

 『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)の放送延期が決定し、急遽『グッド・ドクター』(フジテレビ系)が再放送されることとなった。2018年7月期に同枠にて放送された本作は、サヴァン症候群を抱える主人公が、小児科の医師になり奔走するメディカル・ヒューマンドラマ。原作は2013年に韓国(KBS)で放送され、2017年にはアメリカ(ABC)でもリメイクされている。


【写真】白衣姿で微笑む山崎賢人


 主演の山崎賢人が演じた新堂湊は、驚異的な記憶力を持つ一方で、他者とのコミュニケーション能力に障害のある「自閉症スペクトラム障害」と「サヴァン症候群」を抱えている。放送当時、この障害故に苦労しながらも前に進む主人公の姿に、「勇気をもらった」や「何度も泣いた」などの声がSNSに多数寄せられた。


 湊はこの障害のせいで始めこそは大きく苦労する。円滑なコミュニケーションが重視される医療の現場で、思うように話が進まない湊との関わりは、周りの人にとってストレスになってしまうことも多々あった。ドラマの早い段階では、こうした状況に視聴者も同じようにモヤモヤしたり、何かすっきりしない気持ちを抱えることになる。だが、ひたすら頑張り続ける湊の姿に、視聴者は次第に引き込まれ、いつしか彼を応援するようになるのだ。それは、湊が自分を受け入れたり、仲間が湊を受け入れるのと同じように、視聴者が時間の流れの中で湊を受け入れていったからだろう。


 本作が多くの人の心を動かせたのは、主演の山崎の力が大きかったのではないだろうか。山崎は本作に出演するまで、正統派イケメン俳優のイメージが強い役が多かった。出演作も、初期は『L・DK』(2014年)や『orange』(2015年)など青春学園モノの映画が多く、爽やかで容姿端麗さを活かした役が多い。その後、連続ドラマでは連続テレビ小説『まれ』(NHK総合)で主人公を支えるパートナー役、『陸王』(TBS系)では就職に失敗し、挫折を味わう青年を演じ徐々に役の幅を広げる。本作では、得意/不得意が両極端で、人と交流することに苦労する役を担い、これまでのイメージを刷新するほどリアリティのある芝居で魅了した。


 また、人間の優しさや温かみなどを重視した山崎の芝居によって、本作はより深く、困難に立ち向かうことの重要性を表現できたように感じる。常人では成し得ない能力で患者を救う“個性”を“魅力”に変えられるほど、彼は湊という役を自分のものにしていた。山崎がその後の作品で注目されるきっかけとして、本作で芝居の実力をしっかり見せられた実績は大きな意味を持ったに違いない。


 本作では、湊と同僚、父親との関係など、展開が進むにつれて人との関係性が変化していく様子も描かれる。時の流れの中で、一人の人間が受け入れられ、成長していく様子が丁寧に描かれることで、視聴者は時間の流れと共に、湊の人間関係や環境の変化を体感していく。


 “グッド・ドクターロス”の声から2年、本作は再放送として地上波で放送される機会に恵まれた。これをきっかけにまた、湊の姿に勇気をもらい、懸命に生きることの尊さに触れてほしい。


※『L・DK』の「・」はハートマークが正式表記
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


(Nana Numoto)


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