マルチアーティスト XY GENE、マイケル・ジャクソンに憧れた少年が“歌とダンスの融合”を目指すまで

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2020年04月10日 19:02  リアルサウンド

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XY GENE(写真=西村満)

 幼少期にマイケル・ジャクソンに魅了され、独学でダンスを習得。小学生のときにマイケルの追悼ライブにダンサーとして出演し、その後は韓国で武者修行。現在は東京を中心に活動する注目のニューカマー、XY GENEが1stアルバム『Daydreaming』をリリースした。


 本作には浮遊感のあるオルタナティブR&Bや軽快なブギーファンク、ダークな色彩のアンビエント系ナンバーまでを収録。時折ラップを混ぜながらソフトでナイーブな歌声を聞かせている。中学時代の同級生だというOnly Uや、(sic)boy、YOSHIKI EZAKIなど、早耳から熱い視線が注がれているZ世代のラッパー/シンガーが多く並んでいる点も見逃せないポイントだ。


 歌/ラップ/ダンス/トラックメイク/コレオグラフとマルチな才能を見せるXY GENE。今年5月1日で19歳になるという彼に、音楽との出会いや名前の由来、アルバム作りのこだわりや目指す将来像までたっぷり語ってもらった。(猪又孝)


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■マイケル・ジャクソンへの憧れ、韓国での修行を経て


ーー自発的に音楽に触れた一番古い記憶を教えてください。


XY GENE:マイケル・ジャクソンです。小学校2年生のときにマイケル・ジャクソンが亡くなって(2009年6月25日)。テレビで追悼番組が流れていたときに、そこでたまたま「スリラー」のMVを見て「もっと見てみたい!」となって。


ーーどのようなところに衝撃を受けたんですか?


XY GENE:はっきりとは覚えていないんですけど、「何だこの人、かっこいい」というような感覚です。マイケルのパフォーマンスは子どもにもわかりやすいんですよね。シルエットのポーズとか、「スリラー」のMVもホラー映画っぽいところがあって。だから映像から入って、そこから音楽作品も聴くようになっていきました。


ーーDVDを買ってもらったり?


XY GENE:はい。同じ年に『THIS IS IT』という映画が始まって、それも両親にねだって何回も映画館に観に行って。そのDVDも買ってもらったり、あとはネットで映像を見たりして、マイケル・ジャクソンにどっぷりハマりました。


ーーそこからダンスに興味を持つようになったんですか?


XY GENE:もともと空手を習っていたのですが、組み手じゃなくて型が好きだったんです。鏡で自分の動作を見て型の練習をするのが好きで。今思えばそれがダンスとも繋がっていて、マイケルのDVDを見ながら一緒に踊るようになっていきました。


ーー見よう見まねでマイケルのポーズをコピーしていく、みたいな。


XY GENE:そうです。


ーーマイケル・ジャクソンの追悼公演にも出演していたそうですね。


XY GENE:小4のときに日本で『MICHAEL JACKSON TRIBUTE LIVE』(2011年12月)というイベントがあって。マイケルの活動を追っていくなかで、ダンスアーティストのケント・モリさんの存在を知って、そのケントさんに会うためにそのダンサーオーディションに応募したんです。そしたらオーディションに受かってステージに出ることになり、何人かいるマイケル役のうちの一人をやらせてもらいました。


ーーその頃、ダンスは習い始めていたんですか?


XY GENE:独学でやっていました。ダンスを習い始めたのは中学校に入ってから。『MICHAEL JACKSON TRIBUTE LIVE』でケント・モリさんや振付師の仲宗根梨乃さんと親しくなって。梨乃さんがK-POPの振付をしていたことから韓国のエンタメも観るようになりました。そこで「めっちゃレベル高いな」「行ってみたいな」と思うようになって、小6の終わりくらいに韓国の芸能事務所のオーディションを受けて、2年くらいダンスを学びにいきました。


ーー韓国の芸能事務所のレッスンは厳しいと聞きますが、どうでしたか?


XY GENE:厳しかったです。1日12時間、朝から夜までみっちりレッスン。でも、自分に足りなかった部分に気づくことができたし、かなり勉強になりました。バレエを習ったりして、基礎とか軸がもっと必要なんだなって。そこでダンスのレベルが上がってきた実感はあったんですけど、自分の目指すアーティスト像がより明確になったことで日本に帰ることを決めました。


ーーもともとはマイケルの真似から始まったわけですが、当時はどのような将来像を描いていたんですか?


XY GENE:真ん中で踊るダンサーではなくて、周りを巻き込みながら真ん中で歌って踊る1人のアーティストになりたいと思っていたんです。でもダンスから入ったから、どうやったらその理想に近づくことができるかわからなくて。帰国後もバックダンサーの仕事をしたり、振付をやったりしたんですけど、自分から波を起こす人になるにはどうしたらいいのか、ずっと考えていました。そこで自分で曲を作れるようにならないとダメだな思って、トラック作りの勉強をするようになったんです。それが高校2年生くらいですね。


ーー歌うようになったのはいつからなんですか?


XY GENE:韓国で基礎的なレッスンは受けていました。でも当時変声期だったので、あまり喉を使いすぎないようにラップのレッスンをメインにやっていました。だから歌についてはラップから始めたんですけど、自分が好きな音楽はマイケルとかザ・ウィークエンドとかのR&Bなので、やっぱり歌をしっかりやりたいなと。今、自分が作る曲もラッパーではなくシンガーという意識で作っています。


ーーXY GENEとしての初ステージは?


XY GENE:高2の終わりの3月です。だから1年ちょっと前くらい。それまでは自分が作ったトラックを友達にあげたりしていたけど、もっと自分ひとりでやりたくなってきて、自分のために制作するようになりましたね。


ーーXY GENEという名前にはどんな由来があるんですか?


XY GENE:マイケルから何か取りたくて、代表曲の「Billy Jean」の「ジーン」のスペルを変えてGENE。で、GENEは「遺伝子」という意味なので、そこに男性の性染色体を表すXYをつけました。


■パフォーマンスで振り切れたら、もっと強みを出せる


ーー今回のデビューアルバム『Daydreaming』は、いつ頃制作したんですか?


XY GENE:去年(2019年)の夏から秋くらいに作りました。もともとストックしていた曲に、作品としての幅を持たせるために新曲を足していきました。


ーーどのような作品をつくりたいと考えていましたか?


XY GENE:あまりジャンルに縛られず、やりたいことをやれたらいいなと思っていました。自分の周りにはヒップホップのアーティストが多くて、音源の方向性も迷っていた時期なんですけど、あまりヒップホップに縛られ過ぎず、自分が踊って気持ちいいっていうところを大事にして仕上げました。


ーーリード曲の「DIVE」はどのようなイメージで作ったんですか?


XY GENE:これはJaffくんからもらったトラックにインスピレーションを受けて書きました。この「DIVE」がベースになって今回のアルバムができていったところもあって。アルバム制作というこれまでやったことのないことに挑戦する状況だったからモチベーションが高かったし、自分の中に渦巻く感情を表現する曲も作ったことがなくて。それもひっくるめて挑戦だったので、新しいことに飛び込むぞ! ということで「DIVE」にしました。


ーーDance Practice Videoを公開している「Friday night」はシティポップ〜ブギー調の軽やかなナンバーですね。


XY GENE:ブルーノ・マーズもすごく好きで。彼らの音楽性にある80’sファンクみたいなことをやってみたいなと思って作りました。もともと聞いていた音楽がこういう感じだから、わりと作りやすかったですね。


ーーMVが公開されている「Can’t take back (feat. Lazzy, Kohjiya)」については?


XY GENE:最近のアーティストだと、ケラーニとかトリー・レーンズとかブライソン・ティラーとか、R&Bだけどキックが強くて、ドラムのパターンがシンプルだけど面白いみたいな曲を結構聞くので、そういうビートも1曲やってみたいと思って作りました。


ーーアルバム後半になると、ギターのリフを主体にした曲や、割れたピアノ音が印象的な曲が出てくるなど雰囲気が変わりますね。


XY GENE:アルバム前半は明るめというか、色で言うとオレンジとか赤みたいなイメージなんです。「Road to U (feat. (sic)boy)」から最後までの3曲は紫とか黒みたいな色をイメージして、曲調としてもちょっと暗めなものを作りました。あと、「Road to U」からは、タイトルに「U」と入ってるように、誰かとか何かに向かって歌っています。


ーー「Road to U」のUは何を指しているんですか?


XY GENE:悪夢の中に落ちゃってる自分というか。歌詞でも〈nightmare〉と言ってるんですけど、悪夢のような世界と現実の自分との距離感がテーマ。〈暗く深く静まるRoad to U〉の部分のように静けさの中にある緊張感を表現したかったというか。


ーー「Don’t leave me away (feat. monvmi)」は、女性シンガーとのデュエットで男女のすれ違いがテーマ。続くラスト曲「What should I Say」もラブソングですね。


XY GENE:そうです。相手に別れを告げる歌なんですけど、相手からの返答のシーンはなくて。自分が別れを告げるか、告げないかで悩んでいる様子を描きました。「What should I Say」でこだわったのは、フックはオートチューンを使わずに歌っているところ。最近オートチューンはメチャクチャ使われてますけど、オートチューンと地声を使い分けて、揺れ動く自分の気持ちを表現したかった。で、曲の最後では電話声のエフェクトを使っていて、結局は電話で別れを伝えたっていうストーリーにしました。


ーー今回のアルバムは、フィーチャリングゲストのほとんどが10代というのも印象的でした。


XY GENE:(sic)boyとmonvmiちゃん以外は全員10代ですね。友達としてもアーティストとしてもリスペクトしている人たちと作りたかったんです。自分は音楽を人と作ることが好きで。誰かとやることで生まれる化学反応が楽しみだし、バチッと合わさったときの気持ち良さがあるからコラボが好きですね。


ーーこうしてデビュー作品をリリースしてみて、今、どんな気持ちですか?


XY GENE:今聴き直すと、もっとイケたなという気持ちもありますけど、アルバムって、そのときの自分の記録という側面もあるじゃないですか。毎回そういう気持ちになれたら、逆にそれは自分が進化していることだと思うし、これはこれでそのときのベストだったので。これからもそのときのベストをどんどん曲にして、毎回自分のベストを越えていけたらなって思います。


ーー今回の作品は客演が多いし、短い曲も多いので、1stアルバムとは言え、序章というかイントロダクションのような印象を受けるんです。まだ手の内を明かしてないというか。


XY GENE:そういうところはありますね。これは本当、友達とセッションして楽しくいろんな曲を作りましたっていう感じ。やりたいことをとりあえず詰め込んでみようみたいなパッションで作ったので。逆に次の作品はほとんどソロの曲にしようと思っているし、今回はいろんなストーリーをガサッとまとめた感じですけど、次の作品は1個のテーマに沿ったものにしようとも思っています。


ーー歌、ラップ、トラックメイク、さらにMVでは自身でダンスの振付もしていますが、自分の強みだと思っているモノはなんですか?


XY GENE:やっぱりダンスができることですね。将来はステージの演出から自分でやりたいんです。ダンサーを交えたステージをもっとやりたくて。パフォーマンスで振り切れたら、もっと強みを出せると思ってます。


ーーダンスや振付で大事にしているものは?


XY GENE:グルーヴ感ですね。スムーズな、流れるような動きをめっちゃ大事にしています。振付をつくるときも、ストレスなく踊れるけど、上手く見えるような動きを採り入れています。


ーーダンスのジャンルで言うと、何がいちばん得意なんですか?


XY GENE:最近のダンスはいろんなジャンルがミックスされていて。大きく言うと「R&B」というジャンルになるのかな。ヒップホップの要素もありつつ、ジャズの滑らかな動きもありつつ、ポップもちょっと入ったりしていて。それが「R&B」と言われてるんです。わかりやすく言うと、三浦大知さんの踊りは結構R&Bなんですよね。ヒップホップみたいにバウンスがあって、音にマッチさせていくというより、手のパッという動きだけで見せたりする。それがR&Bの特徴です。


ーー最後に、今後の目標を教えてください。


XY GENE:まずは自分のダンスと歌をもっとマッチさせて、さっき話したようにステージの作り方から変えていきたいです。ダンスと歌の融合は絶対だし、そのクオリティを限界なく上げていきたいです。


ーーやっぱり究極の理想像はマイケル・ジャクソン?


XY GENE:マイケル・ジャクソンはすべての自分の考え方の中心にあるので、マイケルなしでは語れないみたいなところはありますね。でも、マイケル・ジャクソンになりたいわけではない。もしマイケル・ジャクソンが生きていたら認めてもらえる、それくらいのアーティストになりたいですね。


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