『Olive』は令和の若者に受け継がれるのか? 1号限定復活『anan特別編集 Olive』に見る“雑誌”のチカラ

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2020年04月15日 09:01  リアルサウンド

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 1980年代、当時の少女たちを震撼させる雑誌が刊行された。『ポパイ』(マガジンハウス)の増刊として出版された『Olive(オリーブ)』(平凡出版株式会社/現・マガジンハウス)だ。『Olive』は1983年から表紙に「Magazine for Romantic Girls」と掲げ、そのキャッチコピーの通り、丸襟ブラウスなどガーリーでロマンティックなファッションを提唱。“リセエンヌ”と呼ばれるフランスの女子高生をファッションアイコンにして、多くの「ロマンティック」な少女たちを熱狂させた。


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 そんな『Olive』が『anan特別編集 Olive』(マガジンハウス)として3月31日に1号限定で復活した。表紙には元欅坂46の平手友梨奈を起用し、誌面を飾るのは菅田将暉や小松菜奈など、時代を牽引するスターたち。令和の『Olive』はかつての本誌をしっかり引き継ぎながら、今の時代の少女たちに合わせたコンテンツでオリーブ少女魂を見せつける。


 そもそも現代での雑誌の位置付けは1980年代と大きく異なる。多くの雑誌が廃刊に追い込まれ、ウェブマガジンとしてのみ生き残る雑誌も多くなった。少女たちが雑誌からファッションアイコンを見つけ、自分の好きなジャンルのコンテンツやブランドに熱狂する時代は終わり、今やSNSがそれを担っている。instagramには、読者からの投稿を引用してファッションやトレンド情報を配信するメディアアカウントが台頭し、多くの少女たちがその媒体に掲載されることに憧れている。雑誌で言う“読者モデル”のように人気のインフルエンサーの投稿は頻繁に取り上げてもらえることから、「この媒体にリポスト(引用投稿)されたい」とinstagramの投稿に情熱を燃やす少女たちが多いのだ。


 『Olive』の栗尾美恵子(現:花田美恵子)が当時、読者モデルから専属モデルになるというシンデレラストーリーをモノにしたように、現代の少女はinstagramのフォロワー数を増やし人気インフルエンサーになることが、憧れの存在への近道になっている。こうした変化から、雑誌は徐々に先細りになってしまっているのが現状だ。SNSのスピード感に印刷物は敵わず、スターを生み出すワクワク感を思うように提供できなくなっている。


 そんな中、コアな層に絶大な支持を持つ『Olive』が令和版として復活したことには大きな意味があっただろう。かつてサブカルチャーを牽引したオリーブらしい紙面構成の『anan特別編集 Olive』は、菅田将暉にメゾン マルジェラのレディースアイテムを着せ小松菜奈とのツーショットを撮影したり、スナップページには映画監督のジム・ジャームッシュのインタビュー本を片手に持った女性が登場、巻末のカルチャーページには瀧川鯉八の創作落語が丸々載っていたりする。今のサブカル好きの少女が痺れるポイントを臆することなく網羅し、攻め込んだ1冊となっている。


 ジャームッシュの『パターソン』(2016)が公開された頃、限定のマッチ箱やノートをもらうためにいち早く映画館に駆け込んだ少女や、オーディトリウム渋谷の跡地にできたユーロライブで定期的に開催される「渋谷らくご」で瀧川鯉八に魅了された若者たちはこの紙面に関心を注がないわけがない。さらにこういったカルチャーに夢中な層にとって、懐古主義的なアクションはより、魅力を放つ。雑誌として「ページをめくる」ことは、今の若者がフォルムカメラやレコードに夢中になり、祖父母や両親の服をヴィンテージとして身につけることと地続きの現象だろう。


 今の少年・少女はよりクリエイティブに、ジェンダーの垣根もなく、発信するチャンスをたくさん手にしている。そして吸収するチャンスもまた、同じように溢れるほど持っているのだ。その中から、『anan特別編集 Olive』のように、よりターゲットがコアでそこに向けて丁寧に編集された雑誌は彼らの琴線に大きく響くだろう。こうしてまた、新たなオリーブ少女が、そしてオリーブ少年が生まれる。時代は廻るとはよく言うが、『Olive』の当時から重視していたサブカルチャーへの力強いプッシュとロマンティックを追い求めるマインドは、令和の若者にきちんと受け継がれ、相応にアップデートされつつ継承されているのだ。


(文=Nana Numoto)


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