MotoGP ホンダ名バイク(3):ライバルを圧倒したマルク・マルケスとRC213V

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2020年04月16日 11:41  AUTOSPORT web

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MotoGP:2016年から19年の4年連続チャンピオンを獲得したマルク・マルケス
ホンダの3台のMotoGPマシン RC211V、RC212V、RC213Vは、他のどのマニュファクチャラーよりも多くの勝利とタイトルを獲得してきた。それはホンダのエンジニアリングと最高のライダーの才能との組み合わせがあったからだ。

 2002年にMotoGPが4ストロークを採用してからの18シーズンの間、ホンダはライダーズおよびコンストラクターズ世界選手権タイトルを22回獲得し、153回のグランプリ優勝を飾ってきた。

 これほどの優位性は、天才的なエンジニアと伝説的ライダーの才能を組み合わせた結果によるものだ。ホンダにとってレースは常に非常に重要なことであり、ホンダがレーストラックで行ってきた仕事は、モーターサイクリングに大きな影響を与えてきた。バイク愛好家たちが日頃楽しんでいる多くの技術は、ホンダのエンジニアの精神から生まれた。常に彼らはレースに勝つだめだけでなく、勝ったレースから学んでいるのだ。

 RC211V、RC212V、RC213Vのネーミング方法は、1960年代に世界選手権に旋風を起こしたホンダの最初のグランプリバイクに使われたものを踏襲している。そうした素晴らしいマシンには、6気筒250ccのRC166や、5気筒125ccのRC149、4気筒500ccのRC181がある。

 RCはレーシング・サイクル(Racing Cycle)の略だ。211はRC211Vがホンダの21世紀最初のグランプリバイクであることを意味しており、Vは5気筒エンジンがV字に構成されていることを表している。212はホンダの21世紀における2台目のグランプリバイクであり、213は3台目だ。

 今回はヨーロッパのホンダ・レーシングのWEBサイトでレポートされた3台のマシンについて紹介していこう。

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ホンダRC213V(2012年から現在)

 2012年のMotoGP世界選手権ではマシンを完全に1000ccへ移行する決断が下され、ホンダのエンジニアたちは3世代目の新型MotoGPマシンを設計した。

 バイクは今回もこれまでのマシンから得たノウハウを通じて製作されたが、またしても大きく異なるものになった。

 ホンダは単にエンジン排気量を大きくしたわけではない。ホンダはRC212Vを一新させることを決断し、完全に新しい、ワイドアングルの90度V4エンジンを構築した。RC213Vは、ホンダが初めて製作した90度V4エンジンではない。1980年代初期のオーバルピストンのNR500は、90度V4エンジンを搭載しており、また1980年代から1990年代の市販車のVF750、VFR750、RC30、RC45も同様だった。

 90度V4エンジンは角度の小さいV型ほどコンパクトではないが、ホンダは全体的な寸法を削減するためにフレーム、エアボックス、エキゾースト、燃料タンクの設計に精力的に取り組めば、このエンジンの利点は欠点を上回ると判断した。

 90度V4エンジンの大きな利点は、基本的なバランスが完璧であることだ。よりスムーズで堅牢であるため、特にエンジニアが異なるビッグバン式点火構成を試して最高のパワーとトルクを引き出そうという時に、調整が容易だ。

 1000ccが初めて出たレースは2012年のムジェロだったが、ダニ・ペドロサは彼のRC213Vで2002年のMotoGP記録より4.9秒速いタイムを出し、メインストレートでは時速342.9km/213.0マイルに到達した。これは初代のRC211Vよりも時速18.4km/11.4マイル速い。こうした数値は、進歩が見られた点がストレートでのパフォーマンスだけでなく、シャシー設計や電子工学などすべての側面の改善を通してなされた全体的なパフォーマンスに及んでいることを示している。

 1000ccの2年目は、現代のMotoGPで圧倒的優位にある関係により始まった。それはRC213Vとマルク・マルケスの組み合わせだ。2013年に若きマルケスは、RC213Vでルーキーとして最高峰クラスのチャンピオンとなったが、それは1978年に”キング”・ケニー・ロバーツが世界タイトルを獲得して以来のことだった。

 最初からマルケスは、誰よりもRC213Vからスピードを引き出す能力を持っていた。マルケスの動き溢れるライディング技術は、RC213Vのブレーキングの素晴らしい安定性を完全に引き出すことができ、彼はほとんどの場合ライバルを凌駕することができた。

■2019年シーズンの最終戦で56回目の優勝を達成したマルク・マルケス

 2014年のマルケスはいっそう強くなった。18戦中13戦で優勝し、マイケル・ドゥーハンが1997年にホンダのNSR500で達成したこれまでのシーズン記録に並んだのだ。2015年にはマルケスとペドロサがそれぞれ7勝したが、チャンピオンシップタイトルはホンダにはもたらされなかった。それは一時的な後退であり、ホンダは敗北から多くを学んだ。そしてマルケスはそれ以来すべてのライダーに勝ち、コンストラクターズタイトルを獲得している。

 2016年に、MotoGPはさらに大規模なルール改定を行った。ブリヂストンタイヤはミシュランタイヤに切り替わり、ファクトリー製の電子制御は、共通ハードウェアとソフトウェアに取って代わられた。つまりグリッド全体で同じ電子制御が使われることになった。

 この変更で、HRCのエンジニアたちは膨大な作業を行わなければならなかった。MotoGPのローテクの共通電子制御はそれほど効果的ではなかったため、エンジンパフォーマンスを弱めなければならなかった。その後の数年でRC213Vのエンジンは大規模な再設計が数回行われた。クランクシャフトの回転方向を変更したほか、ホンダのハイテクのトラクションコントロールとアンチウィリーソフトウェアがなくなったことから、パワー伝達の管理がしやすいように点火構成を変更した。

 空力がMotoGPでも大きな要素となっていたが、新しい空力デザインはRC213Vのフロントのダウンフォースを増やし、ウィリーをさらに減らすことができた。

 マルケスは、こうしたすべての異なる技術に適応する達人であることを証明した。

 2018年、かつて125ccクラスとMoto2世界チャンピオンだったマルケスは、9勝という素晴らしい成績をあげたが、部分的には再度の大規模なエンジン再設計が大幅な馬力向上をもたらしたおかげでもあった。2019年のムジェロで最速のRC213Vは、LCRホンダ・カストロールのライダーであるカル・クラッチローのもので、時速354.7km/220.4マイルを記録した。初代のRC211Vから時速30.2km/18.8マイル改善されたことになる。

 マルケスは2019年のイタリアGPで優勝できなかった。マルケスは地元イタリア出身のダニロ・ペトルッチから0.04秒遅れでチェッカーフラッグを受けたのだ。だが彼らのレースタイムとMotoGPの初シーズンを比較することには価値がある。2019年のムジェロでのレースは、2002年のレースよりも2分7秒速かったのだ!

 マルケスは2019年シーズン最終戦のバレンシアGPを勝利で締めくくった。これはマルケスのMotoGPでの56回目の優勝だった。また、この8年間におけるRC213Vの81回目の優勝であり、1000cc時代における145回目のレースだった。RC213Vでレース優勝を飾った他のライダーには、ケーシー・ストーナー、ペドロサ、クラッチロー、ジャック・ミラーがいる。

 2020年シーズンのMotoGPが再開されれば、マルケスとともにRC213Vを駆る、アレックス・マルケス、カル・クラッチロー、中上貴晶がホンダのエンジニアたちとともに激しくプッシュし、RC213Vを100回目の勝利へ導くだろう。

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