サカナクション 山口一郎、コロナ禍にアーティストが発言することの重要性に言及「リスクがあるけど議論を生むのは必要」

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2020年04月19日 11:21  リアルサウンド

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サカナクション『忘れられないの/モス』

 4月18日、ニッポン放送で特別番組『いま、音楽にできること』が放送され、エンタメ・音楽業界の主要3団体のトップ、及川光博、MISIA、山口一郎(サカナクション)、Little Glee Monsterが生出演。新型コロナウイルスの影響を受ける業界の現状と今後について語った。


(関連:新型コロナウイルスで声を上げる音楽業界 ライブハウス、企業、アーティストが発信するそれぞれの支援活動


 前半は、一般社団法人日本音楽事業者協会会長・堀義貴氏、一般社団法人日本音楽制作者連盟理事長・野村達矢氏、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長・中西健夫氏による鼎談をオンエア。堀氏は、放送冒頭に「ドラマの収録も止まり、バラエティもロケが出来ない状態になっているので、大抵のタレントは仕事が激変。ない人の方が多い」と影響を語った。5月いっぱいで、スポーツを含めるエンターテインメントの損失額は約3300億円と見られている。この数字について、中西氏は「これだけ人の動きを止めている産業はないと思います」と語った。


 安倍晋三首相からのイベント自粛要請に従い、協力してきたエンタメ・音楽業界。世間の「エンタメは生きる上で不要」という声に心を痛めてきたという堀氏は、「なくて死ぬものではないことはわかってる。でも、舞台も音楽もなくなったことを想像してみてほしい。必要な人もいるんだってことは想像してほしい」と語る。中西氏は「100社以上が関わっているフェスもある。そこにまつわる人たちの生活をアーティストたちは支えているということを理解していただきたい」と訴えた。


 ライブハウスが受ける影響も大きく、先日は北海道・札幌にあるライブハウスCOLONYが、4月末での閉店を発表。中西氏によると、あと半年で日本中のライブハウスが同じ状況に陥るという。堀氏は、「アメリカでは、どんなミュージシャンにも補助金が一気に振り込まれている。日本はそういう試みがない」と問題点を指摘。中西氏からは、「ドイツの(文化)大臣は『文化芸術を守ります。あなたたちを見捨てません』と発信していた。そういうメッセージが日本にはない」と、業界に対する日本政府の姿勢に疑問視する声も。イベント自粛要請の後、「#春は必ず来る」というハッシュタグと共に声明文を出した音制連の理事長である野村氏は、「コロナウイルスは一人ひとりが気をつければ感染拡大を防げる。メッセージを発表することは、エンターテインメントがやれる1つの使命」と想いを明かす。最後は、堀氏が「人が人を攻撃するほどに人間は追い込まれている。僕たちは1カ月前からその洗礼を受けていた。業者自体が死んでしまったら前のようには戻らない。そのためには、なんとか生き延びなきゃいけない」と締めくくった。


 ゲストのサカナクション・山口一郎は、この危機的状況を音楽の性質をわかってもらえるチャンスだという。その理由を、「リスナーの音楽に対する知識やリテラシーが低い。例えば、MVを作った時にファンは『山口さん、天才。髪型もすごい』と言ってくれるけど、映像を作ったのは監督であり、スタイリングを作ってくれたのはスタイリスト。バックグラウンドがあまりに知られていない。そういうリテラシーのなさが、危機的状況では弊害になる」と語り、ミュージシャンによる文化の啓蒙活動の必要性を説いた。


 山口は、番組中にボブ・ディラン「Blowin’ in the Wind」をリクエスト。「時代ごとに大きな出来事があって、その裏には名曲が必ず生まれている。僕たちが、ここでどんな曲を届けるべきか意識しなきゃいけない」と語った。アーティスト自身がもっと声をあげるべきというリスナーからの声に、堀氏はマネジメントの観点から「アーティストが政治的な発言をすることで殺害予告のようなものがあると煩わしいし、それくらい危険なもの」と指摘。それに対し、山口は「僕らが何かを言うのはリスクがあるけど、議論を生むのは必要だ」と語る。最後は、「人間が最初に触れる文化は音楽だと思う。あまりに近すぎて意識できないものだと思うので、その感覚を呼び戻すことがミュージシャンとしてできること」だと締めくくった。


 続いては、MISIAがテレワークで出演。MISIAは1月に中国でスタートした番組『歌手 SINGER・当打之年』に出演が決まり、1〜2回分の収録は終えたが、新型コロナウイルスの影響で、その後は遠隔で出演したという。自身が行っている“あなたにスマイルプロジェクト”という取り組みについては、「拡大防止のために自宅にいる人や医療従事者への感謝の気持ちを込めて、海外では色々な取り組みが行われている。窓を開けてみんなで踊ったり、歌ったり。音楽を通じて想いを共有する場面が海外にはあるけれど、日本ではそういう取り組みが少ない」とスタートした理由を語る。また、「人間が生きていく上で、体の栄養も大事だけど心の栄養もないと辛い。音楽のような心の栄養は、緊急事には必要ないと思われることもあるけど、私たちは音楽の力を知っているので、それを伝えていきたい」と想いを明かした。


 同じくテレワークで出演した及川光博は、「ただいま開店休業中。ミッチーです!」と元気よく登場。ワンマンショーツアー2020『SOUL TRAVELER』が延期となり、出演予定のドラマ『半沢直樹』(TBS系)も撮影を中断していることから「率直に言って、ミッチーは寂しいです」と気持ちを明かす。また、「うちの一座は一致団結して、あらゆるステージを実現してきたけど、今は全員開店休業中なので承認欲求や創作威力を失わないようにしている」と現状を語った。及川は、ライブに参加するファンの情熱や愛を代弁した自身の楽曲「Shake me, darlin’」をリクエスト。最後は、「いつの日か笑顔で一緒に歌って踊って、笑って泣ける日がくる日を信じて会えない時間を育てていきましょう」と、ファンへメッセージを送る。そして、「ラジオの前の皆さん、両手を広げて〜! 遠隔ハグ!」とラジオ越しにファンを抱きしめた。


 20時からは、イマジンスタジオからLittle Glee Monsterの生ライブをオンエア。メンバーのMAYUは、「メンバー同士で会うのは2週間ぶり。今まで当たり前の存在だったので、それがなくなったのが不安と不思議な気持ちというか、やるせない気持ちだなと思います」と本音を漏らす。かれんは「アーティストとして音楽を届けることが途端にできなくなり、いつ再開できるかわからないのは不安ですが、そんな中でもアーティストの方が何かを発信しようという姿をSNS上で見ていると勇気をもらえる。私たちもファンの皆さんに何かを伝えられたらなと思います」語った。そして、FUNKY MONKEY BABYS「あとひとつ」、DREAM COME TRUE「何度でも」などのメドレーを披露。2週間ぶりとは思えない、美しいハモリをファンに届けた。その後は、平原綾香「Jupiter」を歌唱。自身の楽曲「世界はあなたに笑いかけている」でステージを締めくくった。


 エンディングでは、中西氏が「音楽って音を楽しむって書くんですよね」「そういう気持ちを持ちながら、音楽に携わる人たちの雇用を守りたいし、僕たちはそのために尽力しなきゃいけない」と語った。(苫とり子)


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