窮屈な外出自粛生活を助ける動画配信などのサブスクリプション。シェアリングやサブスクは生活を豊かにするか

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2020年04月20日 14:01  JIJICO

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家の中で動画や音楽を視聴する時間が増えたという人も多いのではないでしょうか。そして、動画などを楽しんでいる人のほとんどが、定額の支払いで見放題・聞き放題になる「サブスクリプションサービス」を利用しているようです。


モノを所有することが当たり前だった時代から、これまで以上のクオリティーの商品やサービスを利用できる新しい方法が注目されています。
欲しいものを、必要な時だけ借りたり、他人と共有したりする「シェアリングサービス」もその一つ。「シェアリング」や「サブスク」などは、今も、そしてコロナが収束した後の生活でも、人々の毎日を少しでも豊かなものにしてくれるのでしょうか。経営コンサルタントの金子清隆さんに聞きました。


お得感が大きい反面、利用は自己管理をしっかりと。サービス提供者は、常に新しいニーズの収集が必要


Q:近頃よく耳にする「サブスクリプションサービス」とは、どのようなものですか?
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簡単に言うと、定額の支払いで、一定期間サービスが受けられる方式で、動画配信や音楽配信の見放題、聴き放題が一般的です。


ほかに食品・食材の定期宅配、車の定額利用サービス、洋服のコーディネートや高級バッグが定額で何点も利用できるものや、街の飲食店で、ひとつのメニューを一定数まで毎月定額で提供するといったサービスもあります。


また、空き家や遊休別荘などを住居として一定期間利用できるなど、あらゆる分野で利用が広がっています。


もともとは、雑誌などの「年間購読」から始まったサブスクリプションは、当初は高額だったソフトウエアの販売に関わるビジネスモデルとして広がりました。


クラウド型のソフト「Office365」や「G Suite」のように、会社やグループ、個人が低価格または無料で使用できるサブスクリプション方式は、その後、一般消費者向けの物品やサービスを提供するスタイルに拡大されてきました。


動画や音楽配信については、著作権などの問題があり、一足遅れての導入でしたが、スマートフォンの普及で急速に広がりました。


Q:サブスクリプション方式で利用されることが多い、「シェアリングエコノミー」とはどのようなものですか?
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個人などが保有する有形・無形の遊休資産を貸し出す、あるいは貸し出しを仲介するサービスです。民泊や、労働力のマッチングなどのほか、登録を行った会員間で特定の自動車を共同使用するカーシェアリングなどがイメージしやすいかもしれません。


シェアリングエコノミーの考え方は以前からありましたが、資産の貸し借りは信頼関係が前提で、従来は地域コミュニティでしか成り立ちませんでした。


しかし、スマートフォンの普及で環境が一変。SNSで個人同士が簡単につながるようになり、加えてインターネット上の決済システムの構築で、貸主と借主とがリアルタイムでつながる現在のシェアリングエコノミーの成立に至りました。


Q:こうしたサービスの利用は、消費者・企業それぞれに、どのようなメリットがありますか?
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利用者にとっては何より「お得感」が大きいのがメリット。高額なものでも、一時的ながら低価格で所有でき、必要が無くなればすぐに止められるため、保管費用など維持コストがかかりません。


車のサブスクですと、購入した場合の煩雑な手続きがスルーできるうえ、必要な初期費用もかかりません。サービス提供者のフォローが手厚いことが多く、不具合があっても、交換やバージョンアップが可能です。


一方、小売り店や個人経営の飲食店なども含めたサービス提供者は、安定した収入が見込めることのほかに、新規の顧客を取り込みやすいという面があります。また、中にはインパクトのある宣伝効果を期待するケースもあります。


さらに企業にとっては、労せずしてユーザー情報が得られることが大きいと言えるでしょう。商品開発で必要な、利用者の年代・性別・居住地域や価値観などといった顧客のプロフィールとサービス利用状況を解析することで、顧客の理解や満足度の向上、将来の商品開発やサービスのバージョンアップを的確に行うことが可能になります。


Q:利用者にとっては、物品の購入と違い、一度に支払う金額が抑えられ、比較的安易に利用しやすい印象ですが、それゆえの注意点は?
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契約の際、「最低でも数カ月は必ず続ける」などの利用条件が定めれられていることもあり、思ったほど使わなかったとしても料金がかかるので、注意が必要です。


試用期間などもサービスによってまちまちなので、あいまいな判断で何件も契約してしまうと、予想以上の請求がきて驚くというようなこともあります。


また、企業側のさまざまな事情から、突然そのサービスが打ち切られる場合があり、その際には、いくら長期間利用していても、買い取りと違って手元に何も残りません。こうしたリスクがあることも知っておかねばなりませんし、何より自己管理が必要です。


サービス提供者は、事前に商品在庫や配信用のサーバー機などを十分に確保した上でサービスを開始しなければならないため、利益を出すまでにある程度の時間がかかります。加えて、多くのユーザーのニーズに応えるためには、多様な品揃えやマーケット情報を常に確保しておく必要があります。


また、常に新しい商品やサービスを投入しなければ、その手軽さゆえにすぐに飽きられ、在庫を抱えることになってしまいます。商品やサービスの不具合などに対応する、的確なアフターフォロー態勢の準備が必要であることも、認識しておかなければなりません。


Q:上手にシェアリングやサブスクを利用することで、モノの所有に縛られず、これまで以上に豊かな生活が望めるのでしょうか?
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所有しなくても、たくさんの物やサービスを利用することができると、逆に物欲が刺激され、大量消費を誘引することにもなりかねません。一昔前の「使い捨て文化」が形を変えただけになる可能性もあります。


また企業が利用者の絶え間ない欲求に合わせて商品開発やサービス内容の見直しを進めていくと、どうしても多数派に寄せていく傾向になります。人とは違う経験や趣向といったものを求めても、なかなか得にくいということがあるかもしれません。


多様性がどこまで担保できるかが、今後の課題とも言えるでしょう。確かに利便性が高く、ランクアップした生活が楽しめることを思うと、今後もこうしたスタイルはあらゆる分野に浸透していくでしょう。


しかし、子どもの使うおもちゃや道具などに、こうしたサービスを使うことを考えてみるとどうでしょう。


一つのものを大切にすることや、使ったり作ったりする過程を楽しむこと、ものに対する愛着など、大人の感覚とは別の要素も重要になります。お気に入りのおもちゃが、あるとき突然消えて別のものに替わるということが、しばしば起きることを想像すると、個人的には、どうなのかなと考えてしまいます。


特に現在のように世の中が不安要素だらけの時には、人は役には立たなくても「思い出の一品」に、心が救われることもあるのではないでしょうか。その意味では、短期間でいろいろなものを試すものと、長く愛用するものとをうまく使い分ける必要もあるでしょう。



(金子 清隆・経営コンサルタント)

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