中学受験生の母、「下の子を放置してしまう」問題……きょうだい間の「教育費格差」は遺恨となる?

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2020年04月26日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 中学受験は親子の受験。精神年齢が相当高い子を除き、大多数の子たちに親の尽力はマスト。多くの場合、小学校4年生からの3年間、母か父、もしくは両親がわが子にかかりきりにならなければ、事実上、受験をめぐるアレコレに対応できない。その弊害は数々あるのだが、今回は意外と軽視されがちな問題について語ってみよう。

 その問題とは「下の子問題」である。それは「上の子の中学受験に全力投球しすぎて、下の子を放置したような状態になり、かわいそうな思いをさせてしまった」ということに代表される。この問題は、それこそ夫婦で連携を取りたいところなのではあるが、夫が企業戦士、あるいは夫婦共々多忙となると、「下の子」は結果として放置になりやすいのだ。

 筆者にも覚えがある。上の子の中学受験に備えていた時期、低学年だった下の子は完全に置き去り。とにかく上の子の受験勉強の邪魔にならずに、おとなしくしていてくれたら、それでよかったのだ。つまり、下の子の都合など、一切、考慮に入れなかった。いや、入れる余裕がなかった。

 当時の暮らしは、例えば、こんな感じだった。上の子を塾に送るため、午後4時に自宅を出なければならない場合、下の子には問答無用で友達との遊びを切り上げさせて帰宅を厳命。下の子には何の用事もないのに、無理矢理、上の子と一緒に車に乗せられて塾へ直行し、また自宅へ。さらに、午後8時過ぎには、お迎えのためにまた同じ道のりを往復させられるなんてことは当たり前だったのだ。

 上の子が6年生になると、下の子は家に自由に友達を連れてくることも禁止になった。当然、テレビ視聴は、上の子が塾に行っている時のみ。今思えばの話だが、上の子が下の子と同じ学年の時は、何の制約もなく自由に遊んでいたのに、下の子にはそれを許さなかった。そして、上の子が中学に入学するや否や、今度は下の子が入塾。考えてみれば、下の子の小学校生活は中学受験のスケジュールに縛られ、それに強制的に付き合わされる毎日だったのだ。

 子どもは意外と柔軟で、「そういうものだ」と割り切って生活していたらしく、我が家の場合だけかもしれないが、下の子はむしろ自分が入塾する日を楽しみにしていたという。しかし、安心したのも束の間、その理由を聞いたところ、私は思わず泣けてきた。

 「お兄ちゃんがママからすごく大事にされてたから、次は私の番だな! って思ってた」と言ったのだ。子育てを完全に誤った気がして、すごくショックだった。

 受験がなくとも、親がどれだけ目をかけたかについては、きょうだい間で格差が生まれがちだ。親も、上の子の時は何もかもが初めての経験になるので、気を張って身構えがちになり、何でもかんでもしてあげたいという気持ちになる。こと上の子の受験生活が始まると、下の子をないがしろにするつもりはなくとも、体はひとつ、手は2本という状況下では、もしかしたら、まだ幼い下の子に我慢を強いる面は否めないだろう。もちろん、下の子が受験生になった際、親は上の子の時と同じように、下の子に集中するようになる(集中せざるを得ない)ので、この問題は時間とともに自然と解決していくことも多い。しかし翻すと、だからこそ「家族の中で余計に軽視される問題」なのかもしれない。

 ところが、そんなこのきょうだい間格差が大問題に発展するケースがある。

 ミホさん(仮名)は3人の子宝に恵まれた。長男は聡明なタイプであったため、公立小学校の授業に浮きこぼれてしまい、学校に行き渋るようになったという。そこでミホさんは長男に合ったレベルの教育環境を整えるべく、中学受験をさせることにしたそうだ。クラスメートから「ガリ勉」と揶揄される学校とは違い、どれだけ勉強しても非難されない塾通いに喜びを見いだした長男は、その後、トップ校に入学した。

 続いて次男は、小学校でいじめに遭ってしまい、クラスメートと同じ公立中学に行くのは嫌だと拒否したために、中学受験に挑戦することに。面倒見の良さで知られる中高一貫校に入学した。

 そんな中、末っ子の三男は中学受験塾には通わず、地元の公立中学に入学。その理由を聞いた筆者に、当時ミホさんはこう答えた。

「だって、三男は小学校で、何の問題もなかったんですもん。ウチみたいなサラリーマン家庭で3人も同時に私立に行かすことなんてできませんよ。お兄ちゃんたちも、本当は公立に行ってほしかったんですが、そうせざるを得なかっただけなんです。それで三男は当初の予定通り、公立に進むことになったわけです。三男も特に何も言いませんでした」

 そのまま順調に年を重ね、長男、次男が希望の大学に通うようになった頃、都立高校に行っていた三男が突然、不登校になったそうだ。このままでは出席日数不足で学歴が中卒になってしまうと焦ったミホさんが、筆者に相談を寄せてくれた。

「三男に『兄貴たちばっか贔屓しやがって!』って怒鳴られました……。何の問題もなかったあの三男が鬼のような形相になってしまって。決して、お兄ちゃんたちだけを可愛がったわけではなく、むしろあの子は末っ子なんで、甘やかしてたくらいなんですよ。やっぱり、この甘やかしがいけなかったんでしょうか……」

 三男と筆者は、直接話をしたわけではないので、彼の本当の気持ちはわからない。しかし、子どもというものは、最も身近で比べやすいきょうだい間で、絶えず、親の愛情の量を計測しているものなのかもしれないと、よく思うのだ。

 特にきょうだい間での「教育費格差」は、子どもたちに「親からの愛情格差」として捉えられやすく、これは生涯にわたって遺恨を招くものだという印象を持っている。中学受験に初参入する際にはぜひ、下の子のことも同時に考えながら、本人たちに「格差」を感じさせないような計画性が必要なのだ。

 

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