コロナで「離婚成立が遠のいた…」 調停でのテレビや電話会議、利用はなぜ進まない?

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2020年04月30日 10:11  弁護士ドットコム

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緊急事態宣言が発令されたことを受け、全国の裁判所で裁判期日の取り消しや延期が相次いでいる。


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ネット上には、離婚調停中(予定)の当事者から「離婚の成立が遠のいた…」「頭がどうにかなりそう」「婚姻費用を支払ってもらえない。キツイ」などの声も上がる。中には「安全面からもリモートで調停ができればいいのに」「調停くらいテレワークできないのかな」という意見もみられるようになった。



一般のビジネスでも、Zoomなどを利用したオンライン、ビデオ会議が積極的に使われるようになっており、裁判所にも導入を求める声は強まっている。離婚調停において、「テレビ会議」「電話会議」の利用は認められないのだろうか。



●「テレビ会議」「電話会議」を利用した調停が実施されることも

実は、「テレビ会議」や「電話会議」を使うことは法律でも認められている。



家事事件手続法は、当事者が遠方に住んでいる場合や、家庭裁判所が相当と認めるときは、当事者の意見を聞いたうえで「テレビ会議システム」や「電話会議システム」(以下、「テレビ会議」「電話会議」)を利用し、期日における手続をおこなうことができるとしている(家事事件手続法54条、258条1項)。



最高裁判所の担当者によると、2019年1月から12月までの1年間で家事事件において「テレビ会議」が利用されたのは200回程度。電話会議の利用状況は把握していないという。



「電話会議」は電話機器を使用した音声による会話のみが可能。一方、「テレビ会議」は映像機能が付加され、画面ごしにお互いに相手の姿を認識しながら会話をすることができ、全国の家庭裁判所本庁・支部、一部の出張所で利用することができるという。



通常であれば、当事者は離婚調停の期日に係属裁判所(調停が申し立てられた家庭裁判所)に出頭する必要がある。そのため、場合によっては、遠方に出向かなければならない。しかし、「テレビ会議」「電話会議」を利用する場合は係属裁判所に出頭する必要はない。



「電話会議」を利用する場合は弁護士事務所などに、「テレビ会議」を利用する場合は同じシステムが設置されている最寄りの裁判所に出頭することになる。



ただし、離婚や離縁を「成立」させる場面や、合意に相当する審判の合意を「成立」させる場面においてはいずれのシステムも使うことはできない(同法268条3項、277条2項)。そのため、調停が成立する日(最後の調停の日)には、調停期日に家庭裁判所に出向く必要がある。



●「電話会議システム」による離婚調停のメリットとデメリット

実務上は、どうなっているのか。離婚問題に詳しい飯塚予始子弁護士によれば、設備面での課題もあり、「テレビ会議」より「電話会議」の方が多く使われてきたという。



「電話会議」のメリットとして飯塚弁護士は(1)裁判所に出向く必要がなく、往復の移動にかかるコストを軽減できること、(2)調停の合間の待ち時間を有効に利用できること、の2点をあげる。



「まず、裁判所に出向いて調停に出席する必要がないため、移動に要する時間や費用のコストを軽減することができます。



また、調停は、基本的には調停委員が30分交代で当事者双方から話を聞くため、調停委員が相手方の話を聞いている間は待機している必要があります。



『電話会議システム』を利用した場合は、この待ち時間の間も事務所におりますので、ご本人と調停の進め方について相談し合うのみならず、必要な情報を調べたり、書面を作成したりする時間に充てられるため、時間を有効に利用することができます」



一方、「調停委員に与えられる情報が制限される」というデメリットもあるようだ。



「調停は、調停委員を通じて話し合いを進めていく手続である以上、法律上の重要な論点に加えて、ご本人の気持ちやこちらの姿勢といった参考情報も調停委員に正確に伝え、理解してもらいながら進めることが大切です。



しかし、調停委員も人であり、全員がコミュニケーションスキルに長けているわけではありません。そのため、あらゆる手段を尽くしてコミュニケーションを図る必要があります。



『電話会議システム』を利用した場合、ご本人の雰囲気や表情、代理人の姿勢といった非言語情報を与えることができないため、調停委員が無用な誤解をしたり、調停を上手く進行させることができなかったりすることがあります」  



●どのような場合に利用できる?

最高裁判所の担当者によると、「テレビ会議」「電話会議」が認められるのは、当事者や手続代理人が遠隔地に居住していたり、身体上の理由等により係属裁判所への出頭が難しかったりするケースが考えられるという。



ほかにも「家庭裁判所が相当と認めるとき」にはシステムの利用が認められるが、「相当と認めるとき」にあたるかどうかは、裁判官が個別具体的事情に基づいて判断するようだ。



実際に、どのような場合に利用が認められるのか。飯塚弁護士によると、つぎのような場合に「電話会議」の利用が認められたという。



【利用が認められたケース】
・当事者が遠方に住んでおり、代理人弁護士の事務所も遠方にある場合(申立人は東京在住、その代理人の事務所も東京、相手方は地方在住)
・代理人が急病で、急遽裁判所に出向くことができなくなった場合
・新型コロナウイルスの感染拡大を受けて外出を自粛した場合 など


逆に、利用が認められなかったのは、つぎのような場合だ。



【利用が認められなかったケース】
・双方又は一方の代理人の事務所は遠方にあるが、当事者は双方とも近隣に住んでいる場合(申立人も相手方も地方在住、その代理人の事務所は東京)
・裁判所への交通アクセスが人身事故で急遽遮断され、裁判所に到着するまで数時間を要する場合(「電話会議」を利用できる部屋が既に埋まってしまっていたため、利用が認められなかった)
・当事者が遠方に住んでおり、代理人弁護士の事務所も遠方にあるが、当事者が調停の進行上当事者双方の期日出頭を強く希望した場合 など


●当事者である本人が参加しやすい方法を模索するのが一番



コロナ感染拡大を受け、離婚調停が取り消されたり、延期になったりした人からは「電話会議」や「テレビ会議」による離婚調停を希望する声がある。また、DVが疑われる事案においても導入すべきではないかとの意見も出ている。



飯塚弁護士は、つぎのように語る。



「『電話会議システム』で離婚調停を進めたからといって、ご本人の希望通りに調停が進行するわけではありません。そのため、このシステムのメリット・デメリットを上手く見極めながら利用する必要があるように感じます。



他方で、『テレビ会議システム』が、安全性に問題なく広く利用できるようになれば、『電話会議システム』のデメリットを一定程度カバーできる可能性があるようにも思います。



もっとも、コロナの影響を受けているこのご時世でも、電話だと話しづらい、テレビ電話での話し方に慣れない、と言って、代理人との打合せも原則対面を希望される方もいらっしゃいます。そのため、調停の当事者であるご本人が参加しやすい方法を模索するのが一番ではないかと思います。



なお、DV被害が疑われる事案では、ご本人が裁判所にお越しになった結果、裁判所から後をつけられて居場所を突き止められるなどの二次被害の発生を防止する必要もあります。当事者であるご本人の意向も踏まえて、『電話会議システム』や『テレビ会議システム』の利用をより柔軟に検討できるとよいのではないかと思います」




【取材協力弁護士】
飯塚 予始子(いいづか・よしこ)弁護士
東京大学法科大学院 卒業。日本司法支援センター(法テラス)のスタッフ弁護士を経て、平成26年丸の内ソレイユ法律事務所入所。離婚や子の監護、相続などの家事事件を幅広く担当しているほか、渉外案件も数多く手掛けている。著書に「民事信託のことがわかる本」(共著・自由国民社)など。
事務所名:弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
事務所URL:http://www.maru-soleil.jp


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