『犬夜叉』続編制作決定はなぜ大きな話題に? 女性ファンを惹きつけ続けるその理由

3

2020年05月12日 17:12  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『半妖の夜叉姫』(c)高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2020

 高橋留美子原作アニメ『犬夜叉』のその後を描くTVアニメーション『半妖の夜叉姫』の制作が決定した。


 『犬夜叉』は、『週刊少年サンデー』(小学館)にて1996年から2008年まで連載。妖怪が跋扈する戦国時代と現代を舞台に繰り広げられるファンタジー活劇でありながら、登場人物それぞれの人間関係、恋愛模様が繊細に描かれた。2000年よりTVアニメシリーズが放送され、映画4作品も劇場公開されるなど、様々なコンテンツが展開されている。


 殺生丸と犬夜叉の娘たちをメインキャラクターとした新しい物語ということもあり、情報が発表されると、SNSをはじめとして大きな話題となった。『犬夜叉』をはじめ、『らんま1/2』などリアルタイムで楽しんでいたライターの田幸和歌子氏は、本作の大きな反響について以下のように語る。


「『犬夜叉』自体が人気作品なので、続編に対する驚きと期待の声がたくさんあったのと、一部には不安視する声もあるようです。というのも、あまりに熱狂的なファンがいる作品なので、ファンそれぞれの強い思いがあります。原作ではハッピーエンドで終わったのに、続編では、犬夜叉とかごめの子どもが親の顔も知らないという設定が明かされており、さらに当時弥勒役を演じていた声優さんが亡くなっていらっしゃることや、他の声優さんたちから今回の発表に驚きの声が出ていることなどから「続編に登場しないのでは?」と落胆しているファンもいます。また、作中で屈指の人気を誇るキャラクター殺生丸に子どもがいるという設定にも、ファンにとっての絶対的な憧れの人に、子どもができるショックがあるようです」


 『めぞん一刻』『らんま1/2』『うる星やつら』など数々のヒット作を手がける高橋留美子だが、『犬夜叉』には特徴的なポイントがあるという。田幸氏は続ける。


「高橋留美子先生の作品の中でも、圧倒的に女性ファンが多いのが『犬夜叉』の特徴です。『めぞん一刻』や『うる星やつら』は男性ファンが多いのですが、『らんま1/2』あたりから女性ファンが増え、『犬夜叉』で完全に女性のものになったという印象でした。どの作品もホームラン級のヒットを飛ばしている中で、それぞれの時期のさまざまな世代の男女を取り込んできているんです。2019年の11月にNHK BSプレミアムで、『発表!全るーみっくアニメ 大投票』という番組が放送され、各作品の支持層が明らかになりました。この投票に関しては、リアルタイムで盛り上がっていた世代が必ずしも入れているわけではないのですが、例えば、『めぞん一刻』の支持層は40代が44.3%で男性が73%でした。『らんま1/2』は30代が37.6%で女性が80.4%、そして『犬夜叉』では、20代が57.6%、女性ファンが90.8%支持しています。この投票に参加している人とリアルタイムのファン層とのズレはあるとは思いますが、『めぞん一刻』は圧倒的に男性ファンが多く、『犬夜叉』の女性ファンが9割超えしていることは顕著に見える傾向で、高橋留美子先生の作品の多様性とファン層の広さが垣間見えると思います」


 強い女性読者の支持について、要因にはまずキャラクターの強さがあるという。


「『うる星やつら』が典型的ですが、高橋留美子先生はキャラの描き分けがお得意で、ご自身があだち充先生との対談で『詰め込み型』『凝縮』とおっしゃっているように、作品にものすごくたくさんのキャラクターが出てくるんです。だからこそ、“キャラ推し”というのが『うる星やつら』ですでに出来上がっていたのですが、『犬夜叉』では、殺生丸が特に人気でした。最高にかっこよく冷酷無慈悲なクールキャラが、りんちゃんとの出会いによって人間の温かみを知って、不器用な優しさを見せるようになっていく姿や、父親に対する執着心、異母兄弟の犬夜叉との確執など悲しさも持ち合わせているという多面的なキャラクターに惹かれる女性ファンが当時たくさんいたんです」


 さらには、ストーリー構成にも女性ファンを惹きつける強い力があったのだと田幸氏は続ける。


「また、犬夜叉が主人公の作品ではあるのですが、物語の視点の主人公は実はかごめちゃんで、この構造を少女漫画のように読んでいる方も多いんです。犬夜叉はかごめちゃんのことを大事に思っているのに、かごめちゃんはそれに気づいていなかったりと、近年多い鈍感系ヒロインのハシリみたいなところがあり、同性からの支持を集める要因とも言えます。ストーリーも、今までの『うる星やつら』や『らんま1/2』と比べてシリアス色が強く、ちょっと大人な漫画でもあったんです。人間の業の描き方が、『人魚シリーズ』に通じるところもあり、人間のドロッとした部分やダメなところ、弱く、どうしようもない愛おしさなども『犬夜叉』は描いている。登場人物のそれぞれの関係性や心理が丁寧に描かれており、恋愛要素やアクションといろんな要素をふんだんに盛り込んでいることも、女性が読みやすい要因でした」


 連載完結から12年経つ今もなお絶大な人気が続く『犬夜叉』。最新アニメーション『半妖の夜叉姫』も、放送まで熱視線が注がれそうだ。コミック配信アプリ『サンデーうぇぶり』では、5月15日までの期間限定で『犬夜叉』が無料公開されている。今回の盛り上がりを機に改めて振り返ってみるのもいいだろう。(文=安田周平)


このニュースに関するつぶやき

  • 「かもめちゃん」を探せ。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

オススメゲーム

ニュース設定