ツイッターデモに参加し「検察庁法改正案」を阻止、新時代のデモを成功させた背景

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2020年05月20日 17:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

著者のTwitterより

 検察庁法改正案を政府、与党が5月18日、今国会での成立を見送った。

 既に報道されているように、この法案に対してはツイッターで「#検察庁法改正案に抗議します」を付けた抗議の声が8日〜11日のわずか4日間で900万ツイートを越え、その後もハッシュタグが「#週明けの強行採決に反対します」「#検察庁法改正案の強行採決に反対します」「#検察庁法改正案を廃案に」と変わりながらも途絶えることなく続く。また、多くの芸能/文化人らもツイートしていたことでテレビやラジオ、新聞、ネット記事などで大きく紹介され、反対世論が高まったとして成立見送りとなったといわれている。

会社員女性のツイートがトレンド入り

 ツイッターをやっている人なら、多くの人がこのハッシュタグを見たり、また実際にツイートしたりもしただろう。私もそのひとりで、900万ツイートのワン・オブ・ゼムとしてツイートを重ねてきた。

 そもそも「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ・ツイートを最初にしたのは、会社員の女性・笛美さん。5月8日19時40分にその最初のツイートをしている。しかし私の目には最初それは入らず、このハッシュタグの存在に気づいたのは翌9日の夜。すでに3万件以上のツイートをされてトレンド入りしていたのを見て、自分もツイートをした。

 しかし、ひとりの会社員の女性のツイートがトレンド入りするまでの1日、どうやってツイートが拡散されたのか、といろいろな人が疑問に感じているようだが、その理由を彼女自身がブログサイトの「note」にまとめていて合点がいった。

《最初はいつも仲良くさせてもらってるフェミニストの方々が投稿に反応してくださいました。フェミニスト界隈の人たちは、フェミニズムや政治について誰かが声をあげると応援してくれる空気があるんです。個人的にはフェミニストの人たちとその周辺の人たちに知ってもらえれば、それでいいかなと思っていました。法案が通ったら最悪だけど、やばくなったら誰かがオンラインデモしてくれるだろうし。》(https://note.com/fuemi/n/n56bdee1d8725)より

 私もフェミニストの方々を数多くフォローしているが、笛美さんが書いている“空気”には同意する。

小泉今日子ら芸能人も次々とツイート

 日本では長く不遇をかこつ存在であったフェミニズム。それが石川優美さんという女優/フェミニストの、やはり2019年1月の1本のツイートから始まった「#KuToo運動」から、今では日本社会や政治を大きく動かすうねりとなっているのはご存じだろう。「#KuToo」は昨年の流行語大賞にも選ばれ、NTTやJALといった大手企業が女性だけの就労規則にあったヒール靴着用の撤廃などに踏み切った。

 そうしたフェミニズム運動を支え、大きく成長させてきたのが、ツイッターに参加するフェミニストの方々だ。ひどいバッシングを受け続ける石川さんを援護し、ともに学びながら、丁寧(ていねい)に根気強く、決してあきらめず、自身の体験に基づき、そこから深く思考した言葉の積み重ねをしていく。そこから多くの本も出版され、文学にも著わされるようになった。今回もまた、そうした彼女たちの、「なぜ今これが必要か?」を説く言葉や熱意ある応援がまず、このハッシュタグを育てたのかと、私はとても納得した。 

 そこから先は報道にあるとおりに私のような一般ユーザーのみならず、芸能人や文化人といった人たちも積極的にツイートして大きく膨らんだ。小泉今日子さんがツイートしてる! 大久保佳代子さんがツイートしてる! きゃりーぱみゅぱみゅさんがツイートしてる! と誰かがそれを引用ツイートしたり、リツイしてるのを見て、みんなが「ワッ」と盛りあがる。その盛りあがる気持ちも「#検察庁法改正案に抗議します」とハッシュタグをつけてツイートする。すごい連鎖作用が起こっていた。

 芸能人の方々のツイートは、まるで燃料のような存在だった。いったん下火になってもそこに注ぎ込まれるガソリン。ワッと火が大きくなり、私自身も思わず大久保佳代子さんへリプライをした。私のそんなツイートにさえ、「いいね」が190も付いていた。

  そうやってよく勉強しないままにワッと飛びついてツイートするのは良くないですよ、と言う人は、指原莉乃さんのみならずツイッター現場でも大勢いた。私自身、では、検察庁法をすべて理解しているのですか?と問われたら、とてもじゃないが理解していない。15日の衆院内閣委員会で質問に立った、ごとう祐一議員の話す内容を100%理解したか? と問われたら違う。

一般人の怒りが爆発!Twitterデモの参加

 しかし、政治とは私たちの生活そのものだ。今日スーパーで払った消費税10%も政治が決めたこと。六法全書を読破してなくても、私たちは政治と向き合い、選挙に行き、意見を言う権利と義務がある。もしそれが違う、間違っているとしても、ツイッターで声にしたら、それは違うんじゃないか?と誰かが意見をくれる。それに対して、いや、そうじゃない!とまた反論してもいい。そうやって語り合うことそのものこそが民主主義だ。ワッと飛びついてツイートすることは、決して悪いことではないと私は考える。

 それに今回は実に多くの人が、その都度で細かく丁寧にわかりやすく、いろいろなことをツイートしてみんなに教えてくれた。指原さんもテレビでポロっと言っていた「すごく簡単な相関図」など、次々に誰かがツイートしてくれて、それでみんながその場でまた学んでいった。Youtubeでの政治家や評論家の討論番組もシェアされ、より深い理解も得た。

 そのおかげで、「検察庁法」という、「いったい何?」というぐらい遠い存在に思える問題が、われらの問題となり、ワッと噴出したのだ。もう私たちの不満や怒りはコップに溢れそうだった。そこにこれがきて、もうジャーッと溢れ出してしまった。

 桜を見る会、加計森友問題、公文書改竄、それにまつわる官僚の赤木俊夫さんの自殺、などなど。そしてコロナ対応でのお肉券だのお魚券、受けられないPCR検査、検査数の不明瞭さ、補償の遅さ。あらゆる不満に政府は誠実に答えてくれない。私たちは見捨てられてるの? 私たちの命はないがしろにされるの? バカにされてる? なめられてる? その怒りがそのままツイッターで爆発した。その勢いは誰にも止められなかった。

 私は3・11以降、いろいろなリアル・デモに参加してきた。

 新宿や渋谷、さまざまなところをデモして歩いたり、国会前でSEALDsのコールに合わせて大声で叫んだりもした。それは意義のあることだし、自分は好きだし、今回もまさに内閣委員会の行われていた外でリアル・デモをして大きなコールをしていた人たちの声が委員会室にも響き、野党議員の背中を押したし、中継をネットで見ながらツイートしていた私たちにも勇気をたくさんくれた。

 でも、そういうリアル・デモで味わうのにも通じる高揚や連帯感がツイッター・デモでもあった。小泉今日子さんや畑中葉子さんのような芸能人の方々も、仲間に思えた。ああ、子どものころ、私は『カナダからの手紙』が大好きだったんだ。

 ツイッター・デモはこれから日本の新しい生活において、誰もが参加が容易な社会活動として拡がっていくんじゃないか? と感じている。

〈取材・文/和田靜香〉

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