再婚相手の連れ子から20万円請求され… 親が生前整理をしなかったために娘が直面したトラブルとは

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2020年05月24日 08:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (GettyImages)
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 人生で最も費用対効果が高い節約術は、「生前整理」かもしれない。生前整理とは、生きているうちに自分の死や老いに備え、不用品を整理したり、資産状況などを把握し、相続に備えること。

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 生前整理・遺品整理業を手がける「プロバイド」(名古屋市)の代表取締役で、生前整理診断士の三浦靖広さんは、「生前整理をしなかったために、100万円近くのお金を無駄にしたうえ、精神的に大きな負担を強いられたケースもあります」と話す。実際にあった事例をもとに、有益な生前整理について聞いた。

■9歳のころに両親が離婚

 愛知県の小宮美鈴さん(50代、仮名)の両親は、小宮さんが幼いころから喧嘩が絶えなかった。父は酒とタバコが好きなサラリーマン。仕事のストレスからか、酒を飲むと機嫌が悪くなることが多く、母に辛く当たることも少なくなかった。

 小宮さんが9歳のころ、両親は離婚。母は小宮さんを残して家を出てしまう。生活の基盤が整ってから小宮さんを迎えに行くつもりで、母はしばらく自身の実家で生活。月に数回は小宮さんに会いに来た。

 ところが、小宮さんが中学生になったころ、母は別の男性との再婚が決まる。小宮さんは再婚相手との同居を拒否し、そのまま父と暮らすことを選択。

 その後小宮さんは結婚し、式には母も出席。長男出産後には産褥期(さんじょくき)の小宮さんをサポート。3年後には次男を出産したが、その後も母は小宮さんの息子たちの成長を見守ってくれた。

 自動車販売業を営んでいた小宮さんの夫は、友人の勧めで焼肉店を始める。店の経営は順調で、3店舗を営業するまでになった。

 しかし2008年のリーマン・ショックのあおりを受け、翌年に夫の会社が倒産。自宅を担保に金融機関から借り入れをしていたため、引っ越しを余儀なくされる。

 小宮さんの父は、すでに肺がんで他界。貯金もなく、住む家も失ってしまった小宮さんは、家族4人で母の家に転がり込むことに。母の再婚相手も5年ほど前に亡くなっており、その男性との間に子どもはいなかった。相手の男性には2人の息子がいたが、どちらも成人して家を出てからは、母との交流は途絶えていた。

■母の突然の死

 同居から10年後。小宮さんの母は自宅で突然倒れ、救急搬送されたが、4日後に帰らぬ人となる。83歳だった。

 母の遺産は、この家と預貯金約260万円。家は築40年以上経つため、5年前に大規模なリフォームをしたばかり。家の中には母や再婚相手の荷物が大量に遺されていた。リフォームの際、処分するように何度も言ったが、母は一向に手を付けず、母の荷物が入った段ボール箱は、5年間開かれないまま、6畳の2部屋を埋め尽くしていた。

 悩んだ末に小宮さんは、荷物の処分を遺品整理業者に依頼。費用は約50万円にも上った。

 ようやく母の荷物を処分し、スッキリした家で家族4人の生活をスタートできると思った矢先、家の名義を母から自分に変更しようと、資料を取り寄せた小宮さんは愕然とする。土地も建物も、15年前に亡くなった母の再婚相手のままになっていた。

■死人に口なし

 生前に母から聞いた話によると、再婚相手が亡くなった15年前、母と再婚相手の息子たちは、遺産相続の話し合いをした。再婚相手の遺産は、当時築25年になる家と預貯金約20万円。家と土地の資産価値は50万円にも届かず、土地を売ろうにも、家の解体費用でマイナスになることが分かった。

 何よりも、家を解体したら、母は住む家を失ってしまう。20年近く前に独立していた再婚相手の息子たちは、負の遺産を相続するくらいなら、母にすべて相続させたほうがいいと判断したのだろう。それぞれの思惑が一致し、少しも揉めることなく遺産相続の話をまとめた。

 ところがこのとき、相続人の3人で話し合っただけで専門家は立ち会っておらず、遺産分割協議書の作成も、相続放棄の手続きも、相続登記もしていなかった。

 遺産はすべて母が相続したと聞いていた小宮さんは、慌てて再婚相手の息子たちに連絡をとり、名義変更をお願いした。すると彼らは、「そんなことは記憶にない。家は母に貸していた」という。さらに、「母は、家の資産価値50万円のうち、相続金額分を家賃として払うと約束していたのに、15年間一銭も払ってもらえていない。これを機に精算してほしい」と言われてしまう。

「死人に口なし」だ。小宮さんは絶句した。

 再婚相手の名義のままでは、母の相続分の1/2は小宮さんがそのまま相続できるが、再婚相手の息子たちの相続分は、買い取るか贈与してもらわないと名義を自分に変えることができない。しかも、5年前に大規模なリフォームをした手前、いまさら家を手放すことは考えられない。

 仕方がないので、小宮さんは再婚相手の息子たちに、15万円ずつ支払うことを提案。ところが彼らは、それぞれ20万円を要求。足元を見られる形となった小宮さんは、しぶしぶ20万円ずつ支払い、ようやく家の名義を自分に変えることができた。

■生前整理は物、心、情報の整理を行うこと

 小宮さんは、金銭的にも精神的にも、思いもよらぬ大きな負担を強いられてしまった。15年前、母と再婚相手の息子たちが、然るべき手続きを行っていたら避けられた負担だ。

 では、彼らだけが悪いのだろうか。

「母と再婚相手の息子たちの問題だから、小宮さんは悪くない」と思われるかもしれないが、母の言うことを鵜呑みにせず、元気なうちに、一緒に母の財産の洗い出しをおこない、その際に家の名義も確認しておくべきだった。部屋を埋め尽くす段ボール箱も、ただ片付けるよう言うだけでなく、母とともに整理できていたら、遺品整理業者に依頼せずに済んだ。

 まだ使えるものは使い、不要なものは買い取りに出す。時間はかかるかもしれないが、分別して地域のゴミ収集日に少しずつ処分するだけでも大幅な削減になる。そして何より、人生の節目節目で考えていたことや苦しかったこと、楽しかったことなど、思い出話を聞くことができただろう。小宮さんの父と結婚する前の母、離婚後の母、再婚してからの母など、知らなかった母の一面を知ることができたはず。その中には、娘に対する懺悔や感謝もあったかもしれない。

 生前整理の時間は、「ただの物理的な片付け作業の時間ではない」と、三浦さんは言う。

「生前整理は死ぬための準備ではありません。その後も生きることを前提に、物、心、情報の整理をおこなうことです。生前整理は過去を振り返り、これからの人生をより良く生きるためのきっかけになります」

 多くの人は、思い入れのあるものを手放すとき、心の整理を伴う。まずは親の思いに耳を傾けながら、「片付けよう」という気持ちに持っていくことが大切だ。自分の手で整理すれば、写真や手紙など、思い出の品も見つかる。思い出の品によって過去を振り返れば、もう一度会いたい人、やりのこしていたことにも気がつける。生前整理は、「後悔の少ない人生を送るカギ」になるのだ。(取材・文/旦木瑞穂)

このニュースに関するつぶやき

  • どう見ても母親と再婚相手の連れ子が悪いでしょ。男に振り回されて、娘に尻拭いさせて、自分は好き放題して死んでいった母親。赤の他人の老婆の世話と家の維持管理リフォームをさせて、老婆の死後まんまとボーナスをせしめた連れ子たち。切り捨てても迷惑かけられた可能性が高いし、存在自体がマイナス。
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  • 土地や建物の名義変更は生前にしないともめますからね。
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