デアリングタクト、格安牝馬の逆襲。騎手との信頼関係で無敗の二冠達成

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2020年05月25日 06:31  webスポルティーバ

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 無敗の二冠牝馬が63年ぶりに誕生した。

 5月24日、東京競馬場で行なわれた3歳牝馬限定のGIオークス(芝2400m)。断然の1番人気に推された桜花賞馬デアリングタクトが、見事人気に応えて同レースを快勝した。

 これで、4戦4勝。デビューから土つかずの二冠達成は、1957年のミスオンワード以来の快挙である。

 終わってみれば、GI桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)と同様、デアリングタクトの強さばかりが目立った。

「このメンバーでは、二枚も三枚も力が違っていた」

 レース後、ある競馬関係者はそう言って唸った。

 ただそれは、結果がわかっているから言えることで、デアリングタクトが実際に先頭でゴール板を駆け抜けるまでは、ハラハラするシーンが二度、三度、見られた。

 レース前の激しい発汗しかり、最初のコーナー手前で首を上下に激しく振って、位置取りを下げた際もハッとした。さらに、最後の直線で馬群に包まれて、完全に行き場を失った時もそうだ。

 だが、そんなハラハラドキドキが何度かあった分、馬群のわずかな隙間を突いて、そこから切り裂くように抜けてきた時は、感動すら覚えた。

 オープン特別のエルフィンS(2月8日/京都・芝1600m)でレースレコードをマーク。ウオッカ以来となる1分33秒台で駆け抜けたスピードと、泥んこの桜花賞で唯一大外から強襲。他馬とは次元の違う豪脚で差し切ったパワーは、この世代では明らかに抜けていた。

 そんなデアリングタクトのケタ違いの能力に、最も大きな信頼を寄せていたのが、デビュー時からコンビを組む、松山弘平騎手である。

 発汗して、少しイレ込んでいるように見えたレース前のことも、「落ち着いていました」と意に介さない。もともと気性の激しさが残る馬。主戦騎手としては、あの程度のことは「想定内」だったのだろう。

 他の馬に進路を狭められた最初のコーナーにおいても、デアリングタクトの力を信じる松山騎手の好判断が光った。

 現在、高速馬場にある東京コースは、圧倒的な先行有利な状況にある。後方一気や、大外をブン回しての競馬では勝ち切れない。その点を考慮すれば、多少の不利があったとしても、あえて引かず、スタート後に保持した前目の位置を主張するのも手だったかもしない。

 しかし松山騎手は、無理をしないで位置を下げた。

「少し後ろになったとしても、位置取りにはこだわらず、脚をタメることに専念しようと思った」

 それこそ、「最後は必ず脚を使う」というデアリングタクトに対する、松山騎手の絶対的な信頼の証だ。

 そして、最後の直線も同様だ。

 無難に外を回すプランもあったが、馬群が密集し、外側も他馬に封じられていたため、それは不可能だった。結果、前の壁がなかなか開かず、抜けようにも抜けられない状況に陥った。もしここで、焦って、無理やりにでも進路を取りに行こうとしたら、どんなアクシデントが起こっていたかわからない。

 だが、松山騎手はそこでも、無謀なことはしないで、前の壁に隙間ができるまでじっと待った。進路が開きさえすれば、「デアリングタクトなら差し切れる」という愛馬への信頼と確信があったからだ。

「馬に助けてもらいました」

 レース後、松山騎手はしみじみとそう語った。

 主戦ジョッキーから寄せられる絶大な信頼――これに対してデアリングタクトは、メンバー最速の上がり33秒1という驚異の末脚で応えた。

 今年のオークスではまた1頭、「歴史的」という賛辞のつく名牝が誕生した。

 その”名牝”デアリングタクトは、北海道・日高にある、年間生産頭数が10頭前後の小さな牧場で生まれた。そして、1億円を超える馬が何頭も取引される「セレクトセール」(2018年)において、わずか1200万円(税別)で買い取られた。この年、同セールで取引された1歳牝馬86頭中、76番目の金額だったという。

 その馬が今、世代の頂点に立った。この大逆転劇もまた、競馬の醍醐味のひとつである。

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  • もし負けるとしたらジョッキーのレベルの差くらいかな?
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  • チョニキがガン見してるわ
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