変貌するアップルストア 待望の直営店再開も「来店よりもオンラインで」

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2020年05月25日 13:21  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
新型コロナウイルスの影響で国内すべてのアップルストアを一時閉店しているアップルが、福岡と名古屋栄の店舗を5月27日(水)から再開することを発表しました。あのアップルストアがいよいよ復活する!と思いきや、アップルのWebサイトを見ると、オンラインで利用できるチャットでの購入相談やサポート、充実した配送サービスの存在を前面に押し出しており、アップルストアに再び多くの人が押し寄せることを望んでいない様子が強くうかがえます。

近年、アップルはアップルストアを「人が集う街の広場」(タウンスクエア)と位置づけ、経験豊かなスタッフと一緒に製品やサービスを無料で体験したり、何かの用事のついでにふらりと立ち寄ってひと息つける開放的なお店作りをしてきました。しかし、今後そのスタイルが明確に変化するのは間違いなさそうです。
○来店は基本的に予約が必須に、入店人数も制限

3月下旬から全国の店舗を一斉に休業としてきたアップルストアですが、緊急事態宣言の解除を受け、福岡と名古屋の店舗から営業を再開することとなりました。しかし、営業時間は12〜20時に短縮されるほか、アップルが求めるすべての条件をクリアしないと入店できなくなります。

まず、アップルストアではソーシャルディスタンスで十分な空間を確保するため、一度に入店できる人の数が大幅に制限されます。予約をしていない場合は店外で入店待ちの列に並ぶことになりますが、こちらでもソーシャルディスタンスを確保することから、並べる人数も制限される見込み。来店を希望する人は、あらかじめ予約を取ることが必須となるでしょう。

入店にあたっては、店頭で検温を実施するほか、咳や発熱などの症状がないかどうか、新型コロナウイルスの感染者と接触していないかなどの質問に答える必要があり、問題があると判断されると入店を断られます。入店が認められた人もマスクの装着が義務付けられ、持っていない人には店頭で1人1枚配られます。

このように、以前のようにふらりと訪れればそのまま入店できるわけではなくなります。率直にいえば、アップルストアに入店するのはかなり面倒くさくなり、オンラインで事足りるのであれば時間をかけてわざわざ足を運ぶ必要はないといえます。
○アップルストアはオンライン主体の存在に

顧客に不便を強いる変更はアップルらしくありませんが、アップルストアを統括する米Appleのディアドラ・オブライエン上級副社長が公開したレターを見ると、変更は第一に顧客のことを考慮したためであることが分かります。

新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、アップルは2月初旬に中国の店舗をいち早く休業したのを皮切りに、日本を含む世界中の店舗を休業としてきました。その過程で、顧客やスタッフの健康と安全を守るためには速やかな対策とソーシャルディスタンスが大事だと気づき、ストアの運営基準の見直しを重ねてきました。中華圏では、すでにストアを再開してから数カ月が経ちましたが、運営基準のおかげで安全は保たれているそうです。

再開にあたり、ストア内の環境をさらに改善することを表明。店内のテーブルなどあらゆるものの表面や展示品、人の行き来の多い場所を重点的にクリーニングするようにするといいます。製品の故障などの相談で利用するジーニアスバー(Genuis Bar)は1対1の対面サービスを継続するものの、ソーシャルディスタンスの確保などが図られる見込みです。修理品の引き取りなどは、店舗に入らず店外でできるようになります。

このように、再オープンするアップルストアの店舗では、顧客が来店した際も安心できるさまざまな取り組みがなされます。しかし、実店舗は顧客にとって面倒で厳しい入店制限を実施するのに対し、オンラインは提供するサービスの充実を図っていることからも、アップルストアに来店する人をできるだけ減らしたい…というアップルの思いが透けて見えます。

オンライン重視の姿勢が際立つのが、製品の使い方や活用術を無料で学べる体験型プログラム「Today at Apple」。実店舗の売りの1つともいえるサービスだったのですが、実店舗での開催は中止となり、代わりにオンラインで配信される動画で体験できる「Today at Apple at Home」がすでに無料で提供されています。実店舗では予約を取るのが困難なほどだったので、オンライン化でいつでもすぐに楽しめるのは評価できます。すでに7本の動画が公開されており、今後も随時追加していくとしています。

オンライン主体の戦略を採用し、実店舗の運営を大幅に縮小したアップルストアですが、悲観的になることはありません。前述の通り、アップルは実店舗の運営基準をこまめに見直しており、状況が改善すれば開放的なお店作りが復活する可能性もあります。製品の購入が目的ではない人にも居心地のよさを感じさせたタウンスクエア型の店舗運営がしばらくお休みになるのは残念ですが、オンラインでのサポートや販売体制がしっかり整っており、ユーザーは不便を感じずに済みそうです。(磯修)

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