コロナ禍でも生き生きとした老後を! 定年までに「定活」のすすめ

0

2020年05月25日 17:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 新たな門出を迎える人が多い春だが、今年は違う。新型コロナウイルスの感染拡大は、社会や経済に与える影響が長期化しそうだ。定年を迎える人のなかには、「再雇用制度を利用して65歳まで居続けたほうがいいのでは?」と、一歩を踏み出すのをためらう人も多い。定年前に準備すべきことは?

【老後破綻危険度をチェックしてみよう!】

 60歳以降も働ける制度は整ったが、シニアの再就職はハードルが高いと言われている。

『定年前 50歳から始める「定活」』(朝日新書)の著者で、経済コラムニストの大江英樹さんは、60歳のとき大手証券会社で定年を迎え、半年ほど再雇用で働いた。

「自分のやりたい仕事をするために独立しようと決めたのは退職の半年前だったので、起業の準備はかなり遅れてしまい、間に合わなくて契約社員として再雇用されました」(大江さん)

 給料は現役時代の半分以下、雑用も自分でこなさなければならない日々だったが、想定外だったのは、仕事において「決定権」がなかったこと。クレーム処理ひとつをとっても、自分で判断を下すことができない環境は、生き生きと働ける場所ではなかったという。

「ここに自分の居場所はない」と、半年後に退職。セミナー講師として独立した。

 大江さんはその経験から、こう話す。

「役職定年はチャンスです。定年までに、その後の仕事や人生、生活を考えるための準備“定活”をしましょう。具体的にはやりたいことをいきなり始めるのではなく、(1)副業としてやってみて、軌道に乗れば退職して起業できますし、力が足りないと思ったら(2)資格取得や勉強をする。また、会社を離れたところでの生活に慣れるために(3)コミュニティーを作ったり、または参加したりして社外の仲間を増やしましょう」(同)

 役職定年を有効に活用する“定活”に取り組んだ人ほど、生き生きとした老後を過ごしているという。

 実際に大江さんは17年、各地に肩書を外したシニアが集う「定年男子の会」を立ち上げ、情報交換の場として一役買っている。

「3〜4カ月に一度居酒屋などに集まり、飲んで食べるだけですが、気楽でフランクなつながりこそが大事なのです」(同)

 定年前後に起業や自営業をスタートさせた人、転職をした人から体験談が聞けるので、“自分もやってみよう”と前向きになれるという。

「職場で私は最年長で、20歳代の同僚からも『のぶさん』と呼ばれています。仕事も楽しく日々充実しています」

 そう声を弾ませて語るのは、関東近郊に住む高橋伸典さん(62)。定年男子の会のメンバーだ。高橋さんは58歳のときに、外資系の大手製薬メーカーを早期退職し、保育園を経営する今の会社に再就職した。保育士を採用する人事担当者として、毎日出勤している。

 前職ではMR(医薬情報担当者)が長かったが、海外勤務の後、人事部門に異動となった。そこで主に採用と社員向け研修を担当した。研修後、社員の喜ぶ顔が忘れられず、営業より人事で採用や社員研修ができる会社を探したという。

 じつは高橋さん、定年後はいろいろな人が集うカフェを開業したいという夢があり、将来役立つと思い、1年前から会社の許可を得て、出勤前の早朝に近所のパン屋で修業をしている。

「パン作りの経験もないので、最初は40歳近く年下の職人さんに怒られる毎日で必死に耐えていました(笑)。1年経ちようやく必要な人材として認めてもらえるようになりましたが、最初は全くの新入社員なので、エラそうにしていると誰ともうまくいきません」(高橋さん)

 再就職先でも思わぬ試練が待ち受けていた。

 前職とは会社の規模、仕事のルールなどが全く違った。採用を任されたこともあり、今までの仕事のやり方を変えないでマイペースに仕事を進めてしまったのだ。女性が多い職場で、思うようにいかず挫折も経験する。「強引だった」と深く反省した。

 そうこうするうちに、前職で培った経験・知識を生かし次第に力を発揮するようになってきた。「分野が違っても、自分の強みを生かせば道は開かれてくるものですね」と高橋さん。

 今では、10を超える保育園の園長先生や保育士養成学校の先生たちと強い信頼関係ができ、なくてはならない存在にまでなった。保育士が元気になる研修も企画中だ。

「どちらの仕事も初めは慣れない環境で大変でしたが、自分の強みを信じて、謙虚でいれば必ず乗り越えられるし、新たな生きがいもきっと見つかる」と、同世代の人にエールを送る。

 定年後の仕事は、高橋さんのように得意なこと、自分のやりたい仕事を中心に探すとうまくいくというのは、大江さんだ。

「会社のなかで、5年、何十年と一つの部門で仕事をしていれば、営業、経理、総務でも立派なプロです。商談をまとめる力や、プレゼン能力、計画的に物事を進める力など、誰もがスキルを持っているはずですが、自分自身では気がつかないことのほうが多い。定年男子の会などで話をするうちにヒントが見つかることもあるので、ひとりで考え込まないで」

 人生100年時代、明るい老後生活を送るためにも、お金と働き方をじっくり考えよう。(ライター・村田くみ)

※週刊朝日  2020年5月29日号より抜粋

    あなたにおすすめ

    前日のランキングへ

    ニュース設定