×ジャパリ団、HR/HMファンも魅了する会心の一撃 デビューアルバム『×・×・×』への期待

0

2020年05月25日 18:02  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

×ジャパリ団

 ×ジャパリ団(ばってんじゃぱりだん)の動向が、ゲーム/アニメファンのみならず音楽ファンにとっても非常に面白いことになっている。


 ×ジャパリ団というユニット名を知らなくても、2017年に放送され大ヒットしたテレビアニメ『けものフレンズ』の主題歌「ようこそジャパリパークへ」のことは知っているという音楽リスナーも少なくないだろう。大石昌良が作詞・作曲・編曲を担当し、アニメに登場するキャラクターたちによるユニット「どうぶつビスケッツ×PPP」が歌うこの曲は、二度にわたる『ミュージックステーション』出演効果もあり、同年発表されたアニソンの中でも突出した盛り上がりを見せた。


 以降もさまざまな形でメディアミックス展開され続ける『けものフレンズ』からは、数々の良質な楽曲が発表されており、その完成度の高いキャッチーな楽曲群に筆者も毎回驚かされ続けている。そんな中で登場した×ジャパリ団の楽曲は、特にハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)を愛聴する筆者にとって驚きを通り越し、思わず笑顔でガッツポーズしてしまうほどの会心の一撃だったのだ。


 ここで改めて、×ジャパリ団というユニットについて軽く説明しておく。このユニットはセガのスマホアプリ&アーケードゲームで展開中の『けものフレンズ3』プロジェクトから生まれた、未来みき(ブラックバック役)、小泉萌香(タスマニアデビル役)、船戸ゆり絵(オーストラリアデビル役)の3人からなる声優ユニット。昨年7月27日に開催されたイベント『けものフレンズPARTY』で初のオリジナル曲「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」を初披露し、11月9日開催の『けものフレンズ3 LIVE』ではさらなるオリジナル曲「×レゾンデートル」を歌唱したという。「という」と書いたのは、この時点で筆者は彼女たちのことを認識できていなかったからだ。今思えば、非常に勿体ないことをしたものだと反省している。


 さて、先に書いたようになぜ×ジャパリ団が「アニメ/ゲームファンのみならず音楽ファンにとっても非常に面白いことに」なっており、かつ「HR/HMを愛聴する筆者にとって驚きを通り越し、思わず笑顔でガッツポーズしてしまうほどの会心の一撃」だったのかについて述べていきたい。


 まずは、今年3月に先行配信された「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」を聴いていただきたい。この曲は冒頭のセリフこそコミカルさが伝わってくるものの、サウンドやメロディそのものは王道かつクラシカルなHR/HMだ。要所要所にフィーチャーされるテクニカルなギタープレイや手数の多いドラミングは正真正銘メタルの一言。


 それもそのはず、この曲の作曲・アレンジおよびギターを担当したのが2000年代以降のジャパニーズメタルシーンを牽引するバンド・GALNERYUSのSYU(Gt)その人なのだから。ギターとキーボードの絡みや各楽器のユニゾンプレイなど、GALNERYUSファンなら思わずニヤリとしてしまうポイントが随所に用意されているほか、小野正利(Vo)が歌えばそのままGALNERYUSの楽曲として成立してしまいそうなメロディラインなど、とにかく聴きどころの多い1曲に仕上がっている。


 そういった王道のメタルサウンドに乗るメンバー3人の歌唱も、イントロ&エンディングに挿入されるセリフのコミカルさに反して非常に堂々としたものがあり、可愛らしさと力強さ、まっすぐさとが相まって過去の『けものフレンズ』関連楽曲同様の中毒性を感じずにはいられない。


 さらに音楽ファン、いやメタルリスナーにとって面白いことになりそうなのが、このたび7月8日にリリースされることが決定した×ジャパリ団のデビューアルバム『×・×・×』(ばってん・ばってん・ばってん)の内容について。5月に入ってから解禁された収録内容および制作陣を目にすれば、「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」を初めて聴いたとき以上に気持ちが高揚しないわけがない。


 アルバムには全5曲のオリジナル曲、および収録曲のインストゥルメンタル・バージョン2曲の計7曲を収録。先のSYUによる「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」をはじめ、ジャーパニーズスラッシュメタルシーンの頂点に君臨し続けるレジェンド・OUTRAGEが作曲&演奏で参加したヘヴィチューン「確固不×論」、今や日本人よりも“日本の心”を理解する元Megadethのギタリスト、マーティー・フリードマンが作曲&ギターで加わったミドルナンバー「どきどき黙示録」、元day after tomorrow/ストロボの北野正人率いるLUV K RAFTによるパワーバラード「絆ふぉーえばー」、ガールズメタルバンドCYNTIAのギタリスト&メインソングライターのYUIが作曲&ギターを手がける疾走ハードロック「×レゾンデートル」と、どの曲も聴く前から期待を煽るものばかりだ。


 この情報公開にあわせて、OUTRAGEが参加した「確固不×論」のMVの一部がYouTubeで公開されたのだが、ほんの20秒程度ながらもそのグイグイ攻めまくりのヘヴィサウンドと、四文字熟語を叫ぶメンバー3人の凛々しさを前に、自然と笑みが溢れてしまうのではないだろうか。たった20秒だが、されど20秒。これだけの短さで聴き手を夢中にさせてしまう楽曲の強さと×ジャパリ団の魅力、恐るべしと言ったところだろうか。


 そして、5月25日には「確固不×論」MVの90秒バージョンも新たに公開。穏やかなオープニングから切れ味鋭いギターリフとヘヴィなバンドアンサンブルが加わる序盤の構成は、まさにOUTRAGEの楽曲そのもので、これに女性3人のまっすぐな歌声が乗ることでOUTRAGEが持ち合わせたキャッチーさをより増幅させることに成功している。ここに先のMV20秒バージョンで披露されたパートが追加されるのかと思うと、完全版への期待はさらに高まるばかりだ。


 読み方も一歩間違えばパロディと受け取られかねないユニット名や、ゲームやアニメから派生した声優ユニットとHR/HMの絡みなど、受け取り方次第では「シャレでやっている」ように思われてしまう可能性もある×ジャパリ団。しかし、彼女たちも、アルバムに携わったアーティストや制作陣も本気だ。本気でとことん作り込むからこそ、カッコよくて可愛くて、そして笑えてくるのだ。中途半端なものほど笑えず、むしろ怒りが込み上げてくるはずだが、「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」と「確固不×論」を聴く限りではそんな感情はまったく湧いてこない。むしろ、「早くほかの曲も聴かせてくれ!」と飢餓状態に陥るはずだ。


 そんな中毒性の高い楽曲&サウンドを持つ×ジャパリ団が、アルバム『×・×・×』を通して我々にどんな感情を与えてくれるのか、筆者は7月8日のリリースを今から待ちきれずにいる。リリースの際には改めて、ほかの収録曲に細かく触れつつアルバムの魅力について語るつもりだ。(文=西廣智一)


    ニュース設定