ラファエル『秒で決めろ!秒で動け!』は究極の時短本? 年収5億円YouTuberが明かす自己管理術

2

2020年05月26日 08:01  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『秒で決めろ!秒で動け!ラファエル式秒速タイムマネージメント』 ラファエル 著

 トップYouTuberのラファエルが「これまで語ってこなかった独自の仕事術を大公開」してくれるのが、この『秒で決めろ!秒で動け!』だ。白仮面にパーカー姿でこちらを睨みつけてくる表紙を眺めているだけで、思わず自己防衛的な半笑いが出てしまうが、とにかく年収5億円という圧倒的な事実と成功者のオーラが読者の気持ちをねじ伏せてくる。モデルプレス編・宝島社発行という同じ座組で作られたラファエルの前著『無一文からのドリーム』は自伝的な内容だったが、今回はラファ様のビジネスにおけるノウハウやマネジメント術をご開帳するのが主旨。私はラファエルに限らず、YouTuberの動画をほとんど観たことがないのだが、本書を読み進めていくと、YouTube業界でのラファエルという人の立ち位置がなんとなく理解できた。


参考:“炎上仮面”ラファエル、著書『無一文からのドリーム』で明かす半生とその生存戦略


■引用と模倣が基本の理論


 YouTubeでは、「やりたいこと」を動画にしても成功はせず、「できること」を特性にしたほうが良い結果が得られます。


“僕はエンタメ系チャンネルを開設していますが、特にやりたかったわけではありません。営業マン時代に培ったトークのスキルと、もともとお笑い好きだったユーモアのセンスを掛け合わせることで、ビジネス的に「俺でもできそうなジャンルだな」「あわよくば勝算があるな」と、判断しただけです。(P41)”


 儲かるかどうかは別として、「好きなことで生きていく」とばかりに、自分のやりたいことを動画にして登録者を集めたのがYouTuber第一世代とするならば、ラファエルは最初から「稼げる場」と認識してYouTuberとなり、試行錯誤しながら登りつめたタイプ。その成功メソッドは、ラファエルが自衛隊に4年間入隊していた経験や、その後に一部上場企業で営業職に就いていたときに培った自己管理術が基本となっているようだ。


 現在のラファエルは、とにかく忙しい。


 YouTuberとして動画を上げるだけでなく、ネットのコンサルタント業や、ジュエリーのデザインや制作販売、さらに医療人材紹介サービスを立ち上げるなど、経営している会社だけで8社もあるという。その合間に趣味と実益を兼ねたDJもやっている。これだけの激務をこなすには「秒で動く」ことが前提であり、厳格なタイムマネージメントが必須なのだ。


 現在の平均睡眠時間は約4時間。


“ほかの人よりも1日3時間多く活動していることになり、1年間だと3時間×365日で11095時間。つまり、僕は人よりも45日多く生きている計算になります。僕のカレンダーには13月が存在するのです。(P69)”


 ここで浮かび上がってくる「ラファエル式秒速タイムマネージメント」とは、徹底的な効率化と時間管理、そしてそれを実行するために「従来の常識を切り捨てろ」というものだ。この白仮面にパーカーという特徴的なスタイルも、動画を撮るときにいちいち身だしなみを整える必要がないように「工数の短縮」を突き詰めた結果だそう。移動時間は無駄なので、動画撮影のロケをするのはいちばん遠くて「新幹線を使えば1時間で行ける熱海まで」だという。さらにビジネスを円滑に遂行するためには「ザイオンス効果」や「メラビアンの法則」などの心理学を生かし、最近では「織学」に傾倒しているようで、そのタイムマネジメント理論を信奉している。


 ハッキリ言ってどこかの自己啓発本に書かれているようなことは多いが、それも当然で、ラファエルの理論は引用と模倣が基本。それらを実際に実行できるかどうかが重要なのだ。


 ただ、時間を切り詰めて寝る間も惜しんで働き、類いまれな営業スキルとバイタリティで成功を遂げたという「ラファエル」像は、誰かがプロデュースした「キャラクター」なのだろう。ラファエルは、自身が制作したドッキリ動画などは「99%がヤラセ」であると告白している。虚実にとらわれず、ただひたすら「バズる」ための企画を考え、実際に数字を獲得してきたのだ。それを考えると、この書籍で語っている考え方や、その生活スタイルも99%が作られた「偶像」であり、ファンが求める最大公約数に寄せていると考えたほうがいい。逆にいえば、そこからこぼれおちた1%の生身のラファエルが興味深い。
 
 例えば、


”芸能人に会食を誘われても、断ったりスルーしたりすることはよくあります。
芸能人と友達になりたいという承認欲求もないからです。
せいぜい周囲に軽い自慢話ができる程度であり、そこに大きなプラスはありません。(P97)”


  と冷たく言い放つところからは逆に強烈なコンプレックスのようなものを感じるし、


”僕にとって視聴者=ファン、フォロワー=ファンではありません。僕は熱烈なファンとの交流はあまりメリットがないと考えます。
ですからオフ会なんかも絶対やりません。(P197)”


僕はお金が好きだし「悪党」だと自覚していますが、決して「悪魔」ではありません。


“疑似恋愛でファンからお金を集め、裏ではしっかり彼氏と仲良くやっているアイドルはたくさんいますが、人の気持ちまで奪うのは「悪魔」の所業です。(P198)”


 と、熱を帯びるあたりで、アイドル的な女性となにかあったんだろうかと心配になる。とはいえ、そんなことくらいでラファエル像は崩れないし、秒速で成功に近づきたいフォロワーにとっては些細なことかもしれない。


 ただ、不安なのは、そこまでして得る「成功」とは何なのかまでは明示されないことだ。詰め込んで働くことや、積み上げたルーチンをこなすことが目的化して、「ゴール」の先が見えない。そしてたぶん、ここに答えはない。「1秒でも無駄にしたくない」という主旨に賛同して手にとった読者が、この本を何秒かけて読むのか。このパラドックスの解き方を、ラファエルは白い仮面の奥から投げかけているのである。


このニュースに関するつぶやき

  • ウタエルがいい
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

前日のランキングへ

ニュース設定