「意識低い」「うわさされたら外歩けない」 ウイルスの第3の顔、差別と偏見への対処策

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2020年05月26日 11:30  AERA dot.

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写真新型コロナウイルス感染拡大のため、さまざまな制限下で暮らす人々にストレスがかかっている。ウイルスへの不安や恐怖は断絶を起こしかねない(撮影/写真部・高野楓菜、イラスト:kucci)
新型コロナウイルス感染拡大のため、さまざまな制限下で暮らす人々にストレスがかかっている。ウイルスへの不安や恐怖は断絶を起こしかねない(撮影/写真部・高野楓菜、イラスト:kucci)
 国内での感染拡大から2カ月以上、第1波こそ収まりつつあるものの、自粛続きの生活がさまざまなストレスを引き起こしている。新型コロナウイルスへの不安や恐怖、差別や偏見に心を侵食されないためにはどうすべきか。AERA 2020年6月1日号から。

【アンケート結果公開】あなたのストレスの原因は?

*  *  *
「家族で話し合って、スーパーに行くのは5日に1回にしたの」

 そんな話を友人から聞いてどきっとした、と言うのは神奈川県在住の40代女性。感染リスクを考え混雑する時間帯は避けているという友人は、まさに自粛優等生だ。

 一方、女性の家では大人4人が在宅で過ごしている。一気に買いだめすることもできず、2日に1回はスーパーへ。「意識低いと思われちゃうかな」という心配がとっさに頭を駆け巡った。

「コロナに対して危機感をそれぞれ持っていても、温度差があり、取り組み方も考え方も異なります。最近は当たり障りのないことばかり言うように気を使っていて、疲れました」

 新型コロナウイルスの感染拡大から2カ月以上経った今、大多数の地域では緊急事態宣言が解除され、首都圏でも報告される感染者数は減少してきた。だが、感染そのもののリスクに加え、私たちの生活を脅かしているのが、さまざまな形で顕著になってきた「ストレス」だ。

 4月末から5月初旬にかけてAERAでアンケートを実施したところ、9割を超える人が「新型コロナウイルスによる生活の変化が原因で、ストレスを感じることがある」と回答した。

 原因は回答が多かった順に、日常生活、仕事・働き方、報道・情報、行政、夫婦・家族関係、家族以外の対人関係、子育て。複数要因をあげる人も多かった。

 都内で働く30代女性は、2歳の娘と夫とマンション暮らし。

「あのスーパーで出たんだって」
「あっちの保育園は親がコロナにかかって休園になったらしい」

 近隣のコロナ感染のうわさがママ友ネットワークで回ってくるたび、情報の早さにおののいていた。

 3月下旬、夫が39度の熱を出した。2日後に下がったのでPCR検査は受けられなかったが、その後、娘がせきと高熱、揚げ句には自分もひどいせきに見舞われた。数週間後、マイコプラズマ肺炎だったことがわかったが、病名が判明するまで絶望的な気分だったという。

「コロナ家族と近所に知れ渡ったらどうしよう、と気が気ではありませんでした。『あのマンションで出たんだってよ』とうわさされたら外も歩けなくなる。そうなったらご飯も買えず、家族が機能停止になってしまう」

 それだけではない。「夫婦間除菌リテラシー」の違いもストレス源だ。

「自分は危機意識を強めに持っているほう」という女性は、家では常にアルコール除菌剤を離さず、ネットの動画で見た「除菌の心得」を忠実に実行する。使い捨て手袋を愛用し、家族のタオルは別々にして頻繁(ひんぱん)に替える。

 それなのに夫は除菌の概念もなく、買い物に出かけた先でベタベタとどこでも触るので腹立たしい。家族の体調に気を揉みながら、地域と会社でのうわさの広がりに怯え、「除菌疲れ」でストレスはピークに達した……。

 そのほか、アンケートで具体的に挙げられたストレスの原因で、特に目に付いたのは、危機感に対する周囲との温度差がストレスになっているケースだ。

「監視されているようだ」と不快感を示す人もいれば、監視する側に立って周囲の人の行動様式に怒りを表す人もいる。

 ギスギスした空気、同調圧力。

 コロナハラスメントという言葉も生まれつつある。

 いち早くこの問題への取り組みを始めたのは、日本赤十字社だ。3月には「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!」というガイドを作成し、4月には「ウイルスの次にやってくるもの」と題した動画を作成、YouTube上で配信した。この動画はすでに再生回数200万回を超えた。

 一連のガイドや動画は、不安や恐怖にのみ込まれて偏見や差別に加担することがないように啓発するものだ。

 病気そのもの(第1の顔)の他、ウイルスがもたらす不安や恐れなどの心理的な影響(第2の顔)、不安から引き起こされる偏見・差別といった社会的な影響(第3の顔)をあわせ、「ウイルスの3つの顔」と呼んでいる。

 動画を監修した同社の災害医療統括監・丸山嘉一医師が説明する。

「外出自粛など、感染の予防ばかりに目が向けられてきましたが、実はウイルスによってもたらされるのは疾病そのものよりも、社会的な影響、第2・第3の顔のほうが大きいのです」

 感染者や周囲への差別に対して危機感を持つのは、過去の教訓があるからだ。

「赤十字は国際的な組織です。これまでアフリカで猛威を振るったエボラウイルス病、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)などの感染症の流行時に、不安や差別が社会を分断してしまった状況を経験しています。幸い、日本ではこれまでそういった不安や差別に晒(さら)される経験がありませんでしたが、今回は新型コロナウイルスのもたらす心理・社会的影響が広がる確信がありました」

 コロナ禍ならではの事情について、丸山医師はこう補足する。

「これまで日本が経験した地震や津波、豪雨といった自然災害であれば、被災地は特定の地域に限定されます。コロナウイルスの場合はすべての地域、生活圏が被災地と言えます。影響を受ける人数の規模が異なります。また、自然災害の場合は脅威の対象が明確ですが、今回の場合脅威が曖昧(あいまい)で見えないことも特徴的です」

(編集部・高橋有紀、小長光哲郎)

※AERA 2020年6月1日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 我々ブサメンはコロナ流行前から病原菌扱いされてたから別に何も変わらんよ。少しは差別偏見を受ける側の気持ちを知りやがれ
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  • 意識高いも、意識低いもダメですw
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