【特集】自動車メーカーのコロナとその後 第8回 いすゞはコロナ危機でも黒字確保へ、ボルボ・UD連合で勝ち残り目指す

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2020年05月28日 09:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
小型トラックで国内トップシェアのいすゞ自動車も、新型コロナウイルス感染拡大の影響は避けられない見通しだ。2020年度は前期比21%の販売減を見込む。アフターコロナの生き残りに向け、重要になるのはボルボおよびUDトラックスとの協業をどう活用するかだ。

○大幅減益も黒字確保の見通し

いすゞ自動車が5月26日に発表した2020年3月期(2019年度)連結決算は、売上高2兆799億円(前期比3%減)、営業利益1,406億円(同20%減)、当期純利益812億円(同28%減)で減収減益となった。

決算発表の電話会見に臨んだ片山正則社長は、「後半期から商用車市場がスローダウンしたが、国内トラック販売のシェアは回復した。主力のタイは昨夏から市場が減速しているが、新型ピックアップトラックの投入は順調。新興国市場は一時の勢いを失うものの、ほぼ中期経営計画の通りとなった。コロナの影響は3月に出たが、軽微にとどまった」と総括した。

新型コロナウイルスの影響については、「事業活動の制約は長期化すると考えられるが、『運ぶ』を支える企業としてお客様に必要とされる車両をお届けし、アフターサービスによって稼働を支えていくことで、関係者と従業員の安全および社会的責任の両立を果たしていく。世界各国の需要は今後、落ち込みが本格化して厳しい時期が続くものの、物流は動いており、今年度中のどこかで需要回復は始まると想定している」との見方を示した。

今期(2020年度)の見通しは、世界販売47万6,000台(前期比21%減)、売上高1兆7,000億円(同18%減)、営業利益500億円(64%)とする。片山社長は「先行きは不透明だが、現時点でのコロナの影響を踏まえて見通しを策定した。今期は販売の減少が甚大であるため緊急事態体制で臨み、費用圧縮の徹底により利益を確保したい」とし、営業利益が大幅減益となる中での黒字確保に意欲を見せた。

いすゞは今期が3カ年中期経営計画の最終年度となるが、「コロナの影響で想定していたものと状況が大きく乖離したため、次期中計については、生活様式を含む社会構造の変化、物流インフラの大切さなど、社会ニーズに応える方向でアフターコロナの事業を考え、今期中にもスタートさせる」(片山社長)とする。
○アフターコロナの商用車事業は

いすゞはかつて、トヨタ自動車、日産自動車と並んで“自動車御三家”に数えられた日本自動車メーカーの名門だ。自動車資本自由化時代の1971年に米GMと資本提携し、長らくGMグループにあった。この間に乗用車事業からは撤退したが、GMグループにおいては商用車とディーゼルエンジンで存在感を示した。

GMの経営悪化により、いすゞは2006年に同社との資本提携を解消。同年にトヨタと資本提携を結んだことで、GMからトヨタに乗り換えたかに見えたいすゞだったが、2018年にはトヨタとの資本提携も解消している。トヨタとの提携の大きなきっかけとなったのは、いすゞが得意とするディーゼルエンジンの技術供与だった。しかし、ディーゼルエンジンを取り巻く環境の変化により、トヨタとの協業は進まなかった。

いすゞは2019年12月、スウェーデンのボルボと戦略的包括提携の覚書を結び、いすゞ・ボルボ連合を組むことで基本合意した。ボルボとは現在、商用車分野での協業を検討中。具体的には先進技術、日本・アジアにおける大型トラック、中・小型トラックなどの分野で協業が進みそうだ。

ボルボはUDトラックス(旧・日産ディーゼル)を100%子会社としているが、いすゞはボルボとの提携を受けて、2020年12月をめどにUDトラックスを買収し、連結子会社とすることとしている。

いすゞは中・大型トラック事業やディーゼルエンジン事業を展開しているが、「エルフ」に代表される小型トラック事業に強く、国内のシェアはトップだ。タイでは乗用車的感覚のピックアップトラックを展開しており、同国での収益力も強い。一方のUDトラックスは、日産ディーゼル時代から独自の技術力で商用車を作っていて、現在は大型トラックに特化している。

いすゞ・ボルボ連合の目指す方向は、来たるべき物流革命に対し、両社の協業により最大の価値を提供することだという。いすゞとUDトラックスは、日本・アジア地域で突出したNo.1を目指すそうだ。

「2020年の中頃にはボルボとの契約締結を予定していたが、コロナの影響で手続きが遅れるかも。いすゞとしては、先行開発、先端技術への開発投資には今期も引き続き、費用をかけていく」(片山社長)とするいすゞは、ボルボとの連合をいかし、アフターコロナにおける商用車メーカーとしての生き残りに賭けることになる。

○著者情報:佃義夫(ツクダ・ヨシオ)
1970年に日刊自動車新聞社入社、編集局に配属となる。編集局長、取締役、常務、専務、主筆(編集・出版総括)を歴任し、同社代表取締役社長に就任。2014年6月の退任後は佃モビリティ総研代表として執筆や講演活動などを行う。『NEXT MOBILITY』主筆、東京オートサロン実行委員なども務める。主な著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)、「この激動期、トヨタだけがなぜ大増益なのか」(すばる舎)など。(佃義夫)
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