『ゴールデンカムイ』アシリパが杉本に抱く感情は“恋”なのか? 大人になってきた少女の胸中を探る

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2020年05月30日 08:01  リアルサウンド

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『ゴールデンカムイ(11)』 野田サトル 著

 『ゴールデンカムイ』242話では(『週刊ヤングジャンプ』2020年26号)森の中で歩を進める杉元とアシリパに、思いもよらぬトラブルが発生。緊張が走る中、そんな瞬間にまでアシリパに気遣う心優しき杉元の姿があった。


 一方で森の中へ入らなかった白石も、二人の異変に勘づく。森のトラブルは何が原因なのだろうか? そして気付いた白石は、どう行動する――? 兎にも角にも、二人が無事であることを願うしかない。


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■杉元に対するアシリパの想いとは?


杉元とアシリパは金塊争いにおいての“相棒”だ。お互いがお互いを唯一信頼している間柄であり、絆は強く結びついている。二人の出会いはもはや奇跡的なもので、筆者も思わず運命を感じてしまったほどだ。


 本作が進んでいくにつれて、アシリパの印象が徐々に変化していく。作中では正確な年齢は書かれていないのだが、序盤は明るい・元気いっぱいな少女というイメージが強い。狩りの知識や弓矢を慣れた手つきで操るたくましさ、肉親を亡くしても真実へ立ち向かうタフさこそあるものの、愛らしい幼さが溢れる雰囲気であった。


 また杉元の持ち歩く味噌を「オソマオソマ!(オソマ=アイヌ語で大便)」と指摘する、子供らしい一面も覗く。森の中へ歩けば動物のオソマを杉元に見せる、シカのオソマを触らせる……など、アシリパの「オソマエピソード」は尽きない。


 そんな可愛らしさいっぱいのアシリパだが、段々と杉元を意識するような素振りを見せ始める。決して「好き」だとか「オソマ」という単語を杉元の前で言わなくなったとか、そういうことではない。


 杉元には自身のふるさとに、恋心を抱いていた「梅ちゃん」という人物がいる。彼が金塊を欲しがる本当の目的は、彼女への気持ちからなのだ。それを知ったアシリパは、少し表情を曇らせて複雑な表情を浮かべていた。その後、突如鶴の舞いを踊り始めたのも印象深い。


 「なぜ急に踊った?」と驚く杉元と白石だったが、これは彼女なりの複雑な気持ちを拭い去る方法だったのだろう。筆者はこのシーンにとてもやきもきさせられたのだが、同じ感情を抱いた読者も多いはず。最も、一番やきもきしたのはアシリパ本人であることに間違いはないのだが。
 杉元と関わり続けていくことで、ゆっくりと大人としての顔を見せていく彼女。ただおちゃめで、元気いっぱいなだけの少女ではない。まだ杉元をどこまで意識しているのか、彼に何を求めたいのかは分からない。もしかすると、好意がただの執着という可能性もある。


 だが確実に分かるのは、アシリパは杉元と共にいることを心から楽しんでいるということだろう。二人で食事をする姿、狩りをする姿――。どんな時も、杉元といるアシリパの笑顔は何よりも輝いているのだから。


 彼女の想いは杉元へと届く日が来るのだろうか? そして杉元自身も、アシリパへの気持ちを明確に表したことがない。青年漫画のはずなのに、まるで少女漫画を読んでいるようなもどかしさが読者を襲う。妙にドキドキさせられるので、『ゴールデンカムイ』はそういう意味でも“ニクい”作品なのだ。


 金塊の行方も気になるのだが、杉元とアシリパの関係性も大きく気になるところ。二人が笑いあって幸せになれる日がいつか来るといい、そう願ってやまないのだ。


■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。


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