結果出ないと“恐ろしい事態”に…秋山所属のレッズは日本人選手にとって「超鬼門」?

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2020年05月30日 16:00  AERA dot.

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写真今季からメジャーリーグのレッズでプレーする秋山翔吾(写真/gettyimages)
今季からメジャーリーグのレッズでプレーする秋山翔吾(写真/gettyimages)
 今年新たに海を渡った、筒香嘉智と秋山翔吾。

 NPBで大きな存在感を発揮してきた2人にかかる期待は大きい。しかし初めて迎える米国生活において、野球以外でも直面する問題は多い。特に選んだチームの本拠地によって、パフォーマンスが大きく変わるのは間違いない。

 筒香嘉智はDeNAだけでなく日本を代表する強打の左打者。NPB通算10年で977安打205本塁打613打点を記録。どの方向へも本塁打を打てるパワーと柔軟性を併せ持つ。

 秋山翔吾は2015年に216安打でNPB記録を樹立したヒットメーカー。NPB通算9年で1405安打116本塁打513打点を記録。加えて112盗塁をマークした俊足、強肩で堅実な守備もあり、現在の日本人最高の外野手と評価されている。

 侍ジャパンのチームメートである2人は足並みを揃えるようにメジャー挑戦を選んだ。しかし選んだ球団は筒香が新興球団タンパベイ・レイズ、秋山が古豪シンシナティ・レッズと好対照だ。

「筒香はベストに近い選択をした」と米国在住スポーツライターは合格点を与える。

「米国挑戦の出発点としては最高の場所。タンパ湾エリアは米国有数の保養地であり、余生を過ごすような人々が暮らすノンビリ暮らす土地。雑音がなく野球に集中できるのではないか」

 本拠地セントピーターズバーグはフロリダ特有の温暖な気候で身体も動きやすい。DeNA時代と変わらぬパフォーマンスを出せるはずだ。

 レイズ(デビルレイズ)には、日本人では野茂英雄、岩村明憲らが在籍していた。

 野茂はわずか3カ月ちょっとの在籍ながら、2005年6月15日には日米通算200勝を達成し話題になった。岩村は2007年から2009年まで在籍、2008年にチーム史上初のワールドシリーズ進出にも貢献。現地でも2人への評価は高い。

 また野茂は『トルネード投法』で、米国でも野球ファンの多くが知っているレジェンド。そして岩村は新興球団のリードオフとして存在感を発揮。登場曲・矢沢永吉『HURRICANE(止まらないHa〜Haの英詞版)』が地元エリアのラジオ局でチャート上位に入る人気を誇ったほど。レイズ関係者、ファンに日本野球のレベルの高さを強烈にアピールした。

 球団側の日本人選手へのサポート体制もしっかりしている、と語るのはMLB日本人選手中心に取材するスポーツ紙記者。

「岩村の場合は米国挑戦が初だったため、フルタイムの通訳と契約し万全のサポート体制を敷いた。岩村退団後も次なる選手発掘のため、極東地域担当スカウトのポジションも新設。日本を中心にアジアでの調査活動を継続した結果が筒香獲得へ結びついた経緯がある」

 球団、地元など、フランチャイズ全体として日本人選手への理解度が深い。チームへの忠誠心が強く献身的にプレーすることをわかっているからだ。

「早い時期で結果が出なくとも長い目で筒香を見守ってくれるはず」と付け加えてくれた。

 秋山の場合、事情が大きく異なってくる。

「日本人選手未開の地を選んだのには驚いた。米国でも有数の保守的な土地柄。古くからの独特の習慣なども残っている場所だけに、気を使うことが多くなるはず」(米国在住スポーツライター)

 本拠地シンシナティは、米国中西部オハイオ州に位置する中規模都市だが、野球をはじめすべてにおいて地元愛が強烈に強い町。強い逆風が待ち受ける可能性もあり不安要素も少なくない。

 かつてレッズには『トラディショナル・オープナー』の権利があった。毎年、本拠地開幕戦の権利が与えられ、どの試合より早くプレーボールが宣告されるもの。これは1869年、レッズの前身シンシナティ・レッドストッキングスが米国発のプロ野球チームとして誕生したことに敬意を表してのものだった。

 しかし1986年、デトロイト・タイガースがレッズより早く開幕戦開催。この際にはシンシナティ市議会が「デトロイトからの航空機乗り入れ禁止」の決議までおこなった。シンシナティ市民は野球、そして自らの町へのこだわりが強烈だ。

 近隣に位置する全米3位の大都市シカゴへの意識も強い。同じナ・リーグ所属の伝統球団カブスへの対抗心は並々ではない。

 MLB取材経験のあるスポーツ紙記者は、シンシナティでの苦い思い出を振り返る。

「福留孝介(阪神)がカブス在籍時代、シンシナティの試合で取材パスを発給してくれなかった。カブス戦は地元メディアが多数来場するから、日本メディアには限定数しか出さないということ。しかしレッズは消化試合で注目度もかなり低く、取材者数も数えるほど。当然、広報部長を交えて揉めに揉めたが結局、ゴリ押しされて取材できなかった。その後、地区優勝が決まりそうな大事な試合では、メディアが多くても簡単に取材パスを出してくれたんですがね」

 試合のみならず取材者数など、すべてにおいてカブスには負けたくないことの裏返し。地元愛が強いが故だったのだろう。仮に秋山が結果を残せなかった場合、日本からやってきた『外様』選手への反応が心配になる。

 MLB挑戦時、どの都市を選ぶかは活躍への大きな要素と言える。周囲からの逆風を受け、早々とその土地を後にした選手もいる。よく言われるが、ニューヨークなど大都市でその傾向は顕著だ。

 伊良部秀輝、井川慶(元ヤンキース)、松井稼頭央(元メッツ、現西武二軍監督)は、ニューヨーク時代にファンやマスコミの大ブーイングにさらされ日本時代とは別人のようだった。

 また地方の牧歌的な場所にも、選手への評価や風向きの波が大きく変動する土地がある。

 イチローが数年在籍(15〜17)したマイアミ・マーリンズは中南米系の多いマイアミ。地元コミニティの結束が強固で、レジェンドのイチローでさえブーイングが起こることもあった。また松井稼頭央がプレーしたことがあるコロラド・ロッキーズは山間部に位置するデンバーが本拠地。保守派が主流の都市であり、移籍当初の松井には懐疑的な評価も多かった。しかし2007年ワールドシリーズ進出を果たすと、それまでのものが嘘のように大人気となったのはデンバーらしかった。

 筒香のタンパと秋山のシンシナティはどちらも後者にあたる地方の中小規模都市。しかし伝統球団と新興球団の違いなのか、MLB球団を取り巻く環境は対照的だ。

「レッズも初の日本人選手ということでリサーチは行い、準備は整えているはず。以前のようなことはないと思うが、土地の風習は変えられない。これは差別などとは異なる話で、いわゆる文化。始まってみないとわからないが、秋山自身が結果を出すしかない」

 前出の米国在住スポーツライターが言うように、秋山を取り巻く周辺環境の方はかなりタフであると言わざるを得ない。

 開幕へ向けてカウントダウンへ入ったMLB。解決すべき問題は残っているが、ナショナルパスタイムの復活を待ち望む声は多い。新型コロナウイルスの壊滅的被害に苦しむ米国にとって、野球の存在が大きな希望になるのは間違いない。そして野球への期待度の高さは我が国も同様。筒香と秋山の2人には環境にしっかりアジャストして実力をいかんなく発揮して欲しい。








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