『魔進戦隊キラメイジャー』文科系レッドはどのように誕生した? プロデューサーに聞く

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2020年05月31日 08:01  リアルサウンド

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『魔進戦隊キラメイジャー』(c)2020 テレビ朝日・東映AG・東映

 「宝石」と「乗り物」をモチーフとし、「キラメこうぜ!!」のキャッチコピーを掲げる、スーパー戦隊シリーズ第44作目の『魔進戦隊キラメイジャー』(毎週日曜午前9時30分〜/テレビ朝日系)。明るく楽しい王道の作風ながら、レッドが極端な文科系だったり、故障時の修理方法が宝石らしく「研磨」だったり、敵ロボを抑え込んで無理やり合体したりと、なかなかどうして攻めている。


 新型コロナウイルス感染症の影響で新規の撮影が行えない中、新たな切り口での挑戦も続く本作について、プロデューサーの井上千尋氏と塚田英明氏にインタビュー。これまでの振り返りを含めて存分に語ってもらった。


参考:『魔進戦隊キラメイジャー』の“安定感”と“懐かしさ” いまを明るく照らす戦士たちの輝き


■劇場版のTV放送は「大サービス」
――エピソード10まで放送された翌週に、劇場版の『エピソードZERO』が放送されました。これまでは、前の戦隊の映画に顔見せ的に新戦隊がちょっと出演するパターンが主流で、そもそもTVシリーズ放送開始前に劇場版が公開されるのは、初めての試みでしたよね。


塚田英明(以下、塚田):『劇場版 騎士竜戦隊リュソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』をやることになり、新戦隊も何らかのかたちで関わり、プリキュアさんにもご参加いただいて、「戦隊祭り」みたいなものをやろうということになったんです。それで、どうせなら複数の作品があるほうが良いだろうと、単体の作品になりました。


――こういう状況にならなかったら、劇場版のTV放送は当分なかったわけですよね。10話後のエピソードZEROは、視聴者的にはベストタイミングの印象でした。


塚田:TTFC(東映特撮ファンクラブ)での配信のほか、6月24日にはパッケージ化され、劇場で見逃した方はそうしたタイミングで観られる予定だったんですが、テレビでみんなが無料で観られる予定はありませんでした。このタイミングで放送したのは、いろいろあっての大サービスです(笑)。初めて観た方も多く、喜んでいただけましたね。それに、劇場で初めて観るのと、TVシリーズを観てからとでは、見心地が違うんです。劇場で観るときには「今回の戦隊はこういう人たちなのね」という認識になるでしょうが、10話まで観た後では、それぞれのキャラも把握できているから「最初はこうだったんだ」という観方になるので。


――私も後者の観方でした(笑)。ちなみにここまでの反響はいかがですか?


井上千尋(以下、井上):おかげさまでとてもいい反響をいただいております。お子さんから大人まで幅広い年代の方から感想の声をいただいています。それぞれの多様性を認め合い、5人が助け合う姿が心地よくとらえられたのだとおもいます。本来の自分らしさを失わないことこそ最高のキラメキを手にできる。第2話で提示されたテーマがキラメイジャーの方向性を決定づけ、この点が視聴者の皆さんにも受け入れられたのだと思います。自分を押し殺してシャカリキになっても本物のキラメキは手に入れられない。シンプルですが、とても大事なメッセージです。


ーーところで、モチーフに「宝石」と「乗り物」を選んだのは、そもそもなぜだったんでしょうか?


塚田:子どもたちが好きなものといえば、動物か乗りものに大別されるなか、今回はまず「乗り物でいきたい」と。それで、なるべくシンプルにまとめられ、物語のモチーフにもなりえて、世界観をあらわすルック的にもモチーフになりうるものとして、乗り物の変形をどうするか、と。そこから、乗りものをクリアパーツでキラキラしたものにすると、派手で良いなということになり、お話的にも「キラキラ」とか「輝き」は、この時代に明るく楽しく見られるモチーフとして良いんじゃないか。では、もう一つのモチーフに宝石はどうだろう、と。


■キラメイレッドが文科系な理由とは?
――出発点は乗り物で、見せ方としてのキラキラから、人としてのキラキラ→「輝いて生きる」が出てきたわけですね。レッドが5人の中で最後に見つかるのも斬新でしたが、他の4人は、陸上選手、アクション俳優、eスポーツのプレイヤー、女医さんと、それぞれの分野で輝く人たちで。職業のセレクトにも時代性を感じますね。


塚田:できれば全部クリアしたい方程式のようなものがあって。まず、メインのレッドは「持たざる一高校生」で、彼が4人のキラキラした仲間と出会うところからお話が始まるほうが、子どもたちも感情移入しやすいかと。そこから、キラキラした4人のメンバーと同時に「魔進の相棒」も決めていき、持つ武器も決めました。レッドは剣と銃の両方を使うんですが、それ以外の4人は、剣が2人で銃が2人。では、剣を使うキラキラした人は? というところから、今は『刀剣乱舞』なども人気ですから、アクション俳優が良いんじゃないか。銃はいろいろあるけど、ゲームのシューティングも銃だから、eスポーツというのは概念的に新しいよね、と。さらにヒロインの片方は「速」のイメージから陸上選手、もう片方のヒロインは癒しで、医師。テレビ朝日さんなので「失敗しない女医さん」も良いだろうと考えました。


――ピンクはSキャラの気がしていたんですが、そういうことだったんですね(笑)。近年は割合として少なくなっている熱血で真っすぐで猪突猛進型という王道のレッド的性質が、グリーンで、女子だという点も面白いですよね。何より、突出して文科系で、オタクで気弱で妄想力のあるレッドは斬新で。「文科系の体力のなさ、甘く見ないでほしい」というセリフが視聴者から共感を得ていましたが(笑)。


塚田:レッドは「どこがキラキラなんだろう?」から入って、「でも実はすごい」「何がすごいかというと、イメージできること」という流れが面白いと思ったんですよ。レッドはイマジネーションによって絵を描いて、キラメイストーンを魔進に変えられるし、すべての源になる、秘めたる魅力を持った主人公。そのコンセプトをなるべく極端にやっていったら、想定より話題になったというか(笑)。実は、企画会議の段階で「このレッドで、本当に大丈夫?」という心配の声もあったんですよ。


井上:わかりやすい腕力の強さや、人を束ねるリーダーシップが足りないんじゃないのかという声があって。でも、キラメイレッドはすごく意志が強くて、筋の通った人間じゃないですか。僕らから見ても、絶対になれない遠い存在ではなく、「芯の強さを持っていれば強く生きられるかもしれない」と思える、親近感を抱かせるものがあって。


塚田:それに、充瑠(レッド)は、他の4人の良いところを認めて、輝かせていく人。そこが今回のレッドが評価されているところだと思うんですね。例えば、瀬奈(グリーン)に大事な大会があるとき、戦隊の仕事もあるけど、キラキラ輝くためには「そっちの大会を優先しても良いじゃん。俺たち4人がその分支えるから」と言ってあげるんです。否定するのではなく、みんなを認めていくのが今回のレッドの良さで、それがキラキラするということなんじゃないかと。


――先日、『警視庁・捜査一課長』のゼネラルプロデューサー・関拓也さんに取材させていただいたとき、関さんがおっしゃった「一課長の魅力」とも重なってきます! 一課長が「理想の上司」と言われるのも、変わったヤツらの良いところを見つけて、一人ひとりを認めてくれるところですから。


塚田:まさか大岩純一と一緒だったとは(笑)。でも、コロナなど大変な時代だからこそ、一人ひとりの内面や生き方がどうキラキラするかが大切で、その輝きを認めてあげるというのが今の時代にふさわしいかなと思います。


■『魔進戦隊キラメイジャー』は塚田プロデューサーの集大成
――ところで、今回のメガホンを取る山口恭平監督は、仮面ライダー作品をたくさん作ってきた方で、戦隊は初めてですよね。


塚田:彼は、僕が桐山漣くんと菅田将暉くんW主演の『仮面ライダーW』をやっていたとき、総集編的な作品で監督としてデビューしてもらった人で。ライダーのキャリアがあるにもかかわらず、戦隊のほうは関わっていなかったので、僕が久しぶりに戦隊をプロデュースすることになったとき、フレッシュな感覚や良いセンス、新味を持ち込んでくれたらという思いでお願いしました。


――新鮮というと、5月24日放送分では、エピソード1・2の未公開カットが披露されましたね。未公開カットを観られる機会はなかなかないので、刺激的でした。


井上:どの戦隊もそうですが、1〜2話はパイロット版なので、制作日数も余裕を持って、年間通して使う分の映像も含め、たくさん撮るんですよ。だから、1〜2話では「これ、カットするのはもったいないよね」というものがたくさんあって、なかでもキラメイジャーは泣く泣くカットしたところが多いんです。それを披露する良い機会でした。ちなみに、5月31日と6月7日放送分では、新規の撮影ができなくなっている状況下で、手を変え品を変え、新しいモノをご提供できるよう工夫している最中です。今後は5月31日、6月7日と2週にわたって魔進の声優さんに新たに録り下ろししていただいた新しい企画『キラトーーク!』を準備しております。


塚田:格納庫に宝石たちが並んでいる状態がひな壇芸人のように見えること、達者な声優さんたちがキラメイジャーを語ったら面白いんじゃないかという発想から、同じテレ朝さんの『アメトーーク!』みたいなものをキラメイジャーでやったらとご提案したら、井上さんが本家にかけ合ってくれて許可が出て。ちょっと面白いものになっていますよ(笑)。


井上:今は編集とアフレコしかできないので、それらを駆使してあたかも新作のように楽しめるものになっています。伝統的にスーパー戦隊は総集編を得意としてきました。たとえば、偽物のヒーローをあぶりだすため、過去のバトルについてのクイズを出して、記憶が正しいか検証しながら総集編やるとか。プラスオンの工夫が素晴らしい! これまで培ってきた経験がいま生かされています。新規撮影できないと、編集とアフレコしか武器がない。でもめげません。新作再開までバラエティ豊かな放送をお届けできるようがんばりますので、お楽しみください!


――キラメイジャーならではの魅力とは?


塚田:ステレオタイプじゃない価値観や意外性を見せつつも、30分間、パッと見てわかる1話完結で、毎回「あっという間に終わった」という見心地を心掛けていることです。


井上:日本で1年間のオリジナル企画の連続ドラマを放送しているのは、特撮番組と大河ドラマだけ。とても稀有な枠です。東映さんが手がける特撮番組はシリーズ構成の役目をメインシナリオライターとともに東映さんのチーフプロデューサーも担っており、他には類をみない作品づくりの仕方をしています。『魔進戦隊キラメイジャー』は塚田プロデューサーがチーフを務めていらっしゃいますが、そばからみていてもこれまでの「集大成をつくるぞ!」との意気込みでクリエイティブをやってらっしゃるのが伝わってきます。作品を貫くテーマはもちろんのこと、これまで担当された『マジレンジャー』や『ゲキレンジャー』のオマージュが目に見える形で映像にあらわれているところもあり、塚田作品のパーツを探してみるもの一興かもしれません。


(リアルサウンド編集部)


このニュースに関するつぶやき

  • 昭和発想だと、レッドは画家の卵、イエローは警官、ブルーは剣道の達人とかの設定になったのでしょうね������ 追加戦士も含めて、今後の展開を楽しみにしています���줷����
    • イイネ!9
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