「#KuToo」石川優実さんと「#検察庁法改正案に抗議します」笛美さんが語る木村花さん問題の根の深さ

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2020年05月31日 15:00  AERA dot.

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写真亡くなった木村花さん=「テラスハウス」ホームページから(C)朝日新聞社
亡くなった木村花さん=「テラスハウス」ホームページから(C)朝日新聞社
 フジテレビの恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんの死をきっかけに、インターネット上で誹謗(ひぼう)中傷表現規制を求める声が高まっている。

【写真】#KuTooを支えた署名サイトの運営者ら

 5月26日には高市早苗総務相が「匿名で他人を誹謗中傷する行為は人として卑劣で許しがたい」と述べ、発信者情報の開示を定めるプロバイダー責任制限法の改正について検討を急がせる姿勢を示した。

 木村さんの場合は亡くなった後に誹謗中傷が注目されたが、著名人・一般人を問わず、現在進行形で苦しむ人は少なくない。

「自分と同じ思いをする人をこれ以上出したくないと思っていましたが、木村さんの死を受けて、『被害者が出てしまった』と感じました」

 こう話すのは、女優の石川優実さんだ。2019年、職場でのパンプス着用義務に異議を唱える運動「#KuToo」を世に広げた。

 同年に、

「いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思っている」

 とツイート。その後、インターネット上で署名キャンペーンを始め、衆院厚生労働委員会で取り上げられるなど、社会的に大きな反響を呼んだ。

 一方、キャンペーンを始めた当初から、SNS上では多くのアンチコメントを受けてきた。石川さんの職業を侮辱するものから、キャンペーンの文面がうそだと決めつけるものまで、内容は様々だった。時間のある限り、それらに一つ一つ返信していった。

「相手とコミュニケーションを取りたいわけではありません。外に向けて被害を可視化させるためにやっていました。SNSで誹謗中傷を受けていても、当人以外にはわかりにくいですから」

 懸命に打ち消しても、デマが拡散されていくスピードには勝てず、無力感にさいなんだ。

「SNSでデマが拡散されているのを見た翌日、電車に乗ると気分が悪くなり、パニック状態になる日もありました。最近は、自分が死ななければ事態を収束できないんじゃないか、という考えが頭をかすめる日すらあります。でも、それをつぶやくと、『自分で死ぬとか言っているくせに死なないのか』というリプライがくるんです」

 今年に入ってから5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)に石川さんの実家の電話番号・本名・住所がさらされた。中傷はエスカレートする一方で、法的措置を検討中という。

「今は誹謗中傷ツイートを受けたら、スクリーンショットやURLとともに、逐次記録を残しています。作業は友人に依頼しています。全部自分で向き合おうとすると、精神的に参ってしまう。近くに被害を把握してくれる人がいるなら、謝礼を渡してでもやったほうがいいと思います」

 20年5月、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグで注目を集めた会社員・笛美さんも、その被害をSNS上で見ていた一人。石川さんが受けているのは「ネット私刑(リンチ)」だと感じ、悪質なユーザーにオンラインで注意をしたこともあった。

 笛美さん自身、検察庁法改正案のツイートで世の注目を集めて以降、「工作員」「スパイ」など誹謗中傷ツイートが送りつけられる回数が増えた。中には、笛美さんの投稿内容を元に、本人像を割り出すプロファイリングをしたり、勤め先を特定しようとしたりするものもあった。

「声を上げるという行為そのものをラベル貼りし、否定したがっているように感じました」

 匿名の誹謗中傷にさらされるのは男性よりも女性のほうが多く、特に世代の若いユーザーほど狙われやすい傾向にあると観察する。

「男女平等が進んだと言われる現在も、女性が意見を述べることに対して、内心いら立っている男性は少なくないのではないかと思います」

 法務省の発表によれば、インターネット上の人権侵害に関する事件数は、17年時点で2217件。5年連続で過去最高を記録している。

 年々被害が深刻になっているにもかかわらず 、国内で誹謗中傷対策が進んでこなかったのはなぜか。インターネット上の誹謗中傷案件を多数手がける最所義一弁護士は、以下のように説明する。

「ネット上で匿名の誹謗中傷を書き込んだ者の責任を追及するためには、投稿者を特定する必要がありますが、任意に投稿者の情報を開示するプロバイダーはほとんどありません。そのため、投稿者の情報を取得するためには、まずは裁判という手段に訴えなければいけません。このことが大きなハードルとなっています」

 裁判に進んでも、課題は残る。

「例えば、名誉毀損を理由に開示を求めるには、投稿内容が真実でないことを立証しなければなりません。これは、犯罪者に対して無罪を証明しろと言っているようなものです。また、ツイッターをはじめとしたSNSでは投稿時のIPアドレスを保存していないので、名誉毀損表現が認められたとしても、投稿者の特定に至らないケースも多々あります」

 運用上の問題もあるという。

「何をもって『誹謗中傷表現』とみなすのか、一般人と裁判官の感覚にギャップがあります。裁判所では『表現の自由』を重んじており、権利侵害を認定するハードルは極めて高い。IPアドレスの特定に関しては制度改正が進むと考えられますが、裁判所の判断基準が変わるとは考えにくい。被害者がもどかしさを感じる状況は、今後も続くのではないかと思います」

 制度改正は大きな前進となるが、法にすべてを期待するのは難しいようだ。裁判以前にできることはあるだろうか。笛美さんはこう話す。

「誹謗中傷表現について、社会全体で『許さない』という空気を作ることが大切だと思います。例えば日本では、公益社団法人ACジャパンが昔話『桃太郎』を題材に、おばあさんが桃を拾うと『窃盗だろ』『桃の気持ち考えたことがあるのか!』と大量の批判が寄せられている動画を17年に作り、大きな話題になりました。広告はもちろん、一人ひとりの立場から起こせるアクションがあると思っています」(本誌・松岡瑛理)

※週刊朝日オンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • 女性がーって言ってるけど、今回の中傷で特にひどかったのって主婦や女性の書き込みがひどかったんじゃなかった?
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  • あ〜、なんかいろいろ見えてきたこの並びwww
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