木村花さんを追い詰めた動画と「あいのり」出演者が語るリアリティー番組の危うさ

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2020年06月02日 11:30  AERA dot.

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写真5月23日、亡くなった木村花さん。5月21日には自身のツイッターにこうも投稿した。「今までの幸せとこれからの幸せが沢山詰まった夢をみました。とにかく幸せだった」(写真:テラスハウスHPから)
5月23日、亡くなった木村花さん。5月21日には自身のツイッターにこうも投稿した。「今までの幸せとこれからの幸せが沢山詰まった夢をみました。とにかく幸せだった」(写真:テラスハウスHPから)
 人気恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた木村花さんが亡くなった。SNS上での誹謗中傷に悩んでいたとされる。「炎上」を「盛り上がり」と捉えてはいけない。AERA 2020年6月8日号では、リアリティーショーがもつ危うさについて取材。その一部を掲載する。

【写真】木村花さんの死後、SNS上には様々な声が上がった

*  *  *
 プロレスラーで人気恋愛リアリティー番組「テラスハウス」(テラハ)に出演していた木村花さんが5月23日、22歳で亡くなった。自殺と見られる。未明に更新された木村さんのインスタグラムには愛猫と撮った写真にこんな言葉がつづられていた。

<愛してる、楽しく長生きしてね。ごめんね。>

 24時間で投稿が消えるインスタグラムのストーリーズ機能に残したのは、<さようなら。>の文字だった。異変に気付いた母親や共演者らが木村さんの自宅に駆け付け、亡くなったことがわかった。

 プロレス団体に所属し、ヒール(悪役)として活躍する木村さんがテラスハウスに入居したのは昨年9月のこと。華やかなピンクのドレッドヘアと元気の良さで、番組内でも存在感を放った。

 だが、今年3月末に「コスチューム事件」が配信されると、視聴者からの木村さんへの風当たりが変化する。さらに、“テラハ史上最悪の修羅場”などとネットニュースなどで取り上げられ、番組ファン以外にも動画は拡散した。木村さんのプロレス用衣装を誤って洗濯し、縮めてしまった入居者との口論のインパクトは大きかった。

 アメリカ在住の映画評論家の町山智浩さん(57)は言う。

「木村さんはプロレスラーで、リングの上でヒールという憎まれ役を好演できる人です。台本がないとはいえ、ここぞというときに自分のアドレナリンを上げてショーを盛り上げるエンターテイナーだったのでは」

 この配信をきっかけに木村さんのSNSには「死ね」「消えろ」といった誹謗中傷が殺到するようになる。さらに、亡くなる9日前の5月14日には「コスチューム事件 その後」として、木村さんと他の入居者とのコスチューム事件をめぐるやり取りを収めた未公開動画が3本立てでユーチューブにアップされた。

 この関連動画の公開に疑問を呈するのは、ABEMA制作の恋愛リアリティーショーでプロデューサーを担当した経験もある、テレビマンユニオンの津田環さん(45)だ。

「評判が良かった放送を切り出したり、未公開映像を出したりするのはよくあることです。ただ、今回に関しては、本編で炎上があったにもかかわらず、ショッキングな部分を選んだと感じます。制作陣があの炎上を盛り上がりと感じ、動画を出せばおいしいと思ったのでしょう」

 木村さんが誹謗中傷に悩むなか、出演者の精神的ケアは行っていたか、なぜ追加動画をアップしたのか。フジテレビに質問状を送ったところ、企業広報室から返答があった。コロナ禍で撮影を停止した後も、「木村花さんをはじめ番組に出演いただく方々とスタッフの間では近況を共有するようにしておりました」「動画の回数は素材の分量や編集の都合によります」(抜粋)

 番組制作側が炎上を盛り上がりと捉えてしまう背景には、リアリティー番組に対する視聴者の欲望もある。アメリカでは、リアリティー番組の見方を「ヘイトウォッチング」と呼び、文句や不快感をぶつけながら視聴することが一種の娯楽になっている。この感覚は国境を超え、イギリスでは視聴者が嫌いな出演者をクビにできるシステムを取り入れた番組もあるという。

 テラハの場合はどうか。木村さんと同時期にテラハに入居していた“社長”こと新野俊幸さんは、こうツイートした。

<演者の言動を陰湿に批判することがテラスハウスの面白さのひとつであったという事は否めない>

 スタジオ出演者の一人、アジアンの馬場園梓さん(39)はこうコメントした。

<仕事としてコメントの依頼を受け、責任を持って、厚かましながらいろんな方の『行動』について意見をさせていただいてきました>

 つまり、出演メンバーもスタジオタレントたちも、“ヘイトありき”で番組が成り立っていることに以前から気付いていた。だとすれば、制作側はなおさら演出に気をつかわなければいけなかったはずだ。

 恋愛観察バラエティー「あいのり」に出演したプロレスラーの崔領二(さい・りょうじ)さん(39)はリアリティー番組の危うさを指摘する。

「20代のフツウの男女がいきなり脚光を浴びるため、出演前の自分とのギャップが大きくなる。プライベートを切り売りするので、丁寧にケアしないと傷つく人も出てきます」

(編集部・福井しほ)

※AERA 2020年6月8日号より抜粋

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