「ウイルスに接するのでは」 宣言解除で恐れながら「満員電車」通勤に不安の声

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2020年06月02日 11:30  AERA dot.

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写真緊急事態宣言が解除された東京では、朝夕の通勤時間帯を中心に人波が戻ってきつつある/5月29日午前、渋谷駅前(撮影/写真部・掛祥葉子)
緊急事態宣言が解除された東京では、朝夕の通勤時間帯を中心に人波が戻ってきつつある/5月29日午前、渋谷駅前(撮影/写真部・掛祥葉子)
 緊急事態宣言の解除を受けて、在宅勤務から通常通りの出勤に戻る人も多い。だが、満員電車に乗ることは、ウイルスの危険にさらされる可能性があるともいえる。AERA 2020年6月8日号は、日常に戻る不安の声を聞いた。

【写真】換気をしていない空間で咳をすると飛沫はこんなにも空中を漂っている

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 首都圏の緊急事態宣言が解除された翌日の5月26日夜9時ごろ。記者が都内の自宅に近い飲食店街を訪ねると、20軒ほどの飲食店が軒を連ねる通りにはネオンが輝き、酔客の声が響いていた。客席を間引いている店もあり客の入りは5割程度のところが多いが、満席の店も。2週間ほど前の同じ時間帯に訪ねたとき営業していたのは1店だけだったが、この日は宣言前に近いにぎわいだ。

 屋外の席で友人4人と飲酒していた男性は、「解禁祝い。ようやくおおっぴらに飲めるようになってうれしい」と話す。

 1カ月半に及んだ緊急事態宣言が解除され、都道府県単位で定められていた自粛要請も少しずつ緩和されている。東京都では20時までとされてきた飲食店の営業が2時間延びて22時までになり、無観客ならスポーツ施設の利用も認められた。神奈川県でも全業種で休業要請が解除され、屋内100人以下、屋外200人以下の小規模イベント開催が解禁された。

 在宅勤務を行っていた企業でも、通常出社を指示したり、準備を始めたりするケースが増えている。しかし、そんな日常を取り戻す動きを不安げに見つめる人もいる。

 PR会社勤務の女性(45)は6月1日から、週に3回は通常通りの出勤が必要になる。それも半月後には見直され、完全にコロナ禍以前の出勤スタイルになるかもしれない。緊急事態宣言中は原則在宅勤務。出社が必要な場合も空いている時間帯を狙って電車に乗っていた。同じ車両に乗客が数人程度の「ガラガラ」状態だったという。

 しかし緊急事態宣言が解除され、1カ月半ぶりに混雑した電車に乗った。仕事相手から誘われて飲みに出たのだ。ぎゅうぎゅう詰めとまではいかないが、動けば肩が触れ合う程度には混み合っていた。「ウイルスに接するのでは」という不安と、人混みの中、空気が薄くなったような感覚で息苦しくなった。

 6月1日からは通勤でも混んだ電車に乗ることになる。ウイルスを恐れながらストッキングにヒールという通勤スタイルで満員電車に乗ることを考えると、暗い気持ちになるという。

 より切実な声もある。フリーのデザイナーの男性(54)は、糖尿病歴5年。「糖尿病患者は新型コロナに感染すると重症化しやすい」という報道を目にする度に、不安になる。複数の人がいる電車に乗ったり喫茶店に入ったりすることが恐ろしく、極力外出しないよう生活してきた。緊急事態宣言の発出中はクライアントから呼び出されることもなく、仕事はすべてオンライン。しかし、緊急事態宣言が解除されたことで呼び出しが増えそうだ。「社に来てほしい」と言われると、それが電話やオンラインで済ませられる内容であっても断りにくい。

 さらに理不尽に感じることもあった。先日の仕事では、男性に仕事を発注する立場のクライアントは「在宅勤務を命じられている」と同行せず、男性だけが電車に乗って依頼先に行かされたのだ。クライアントはオンラインで打ち合わせに参加した。

「自分の身は自分で守るしかないけれど、クライアントに“配慮して”とは言い出せません。怖いです」(男性)

(編集部・川口穣、ライター・羽根田真智)

※AERA 2020年6月8日号より抜粋

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