レスターに見る若手成長のカギ…キーワードは“いい塩梅”【雑誌SKアーカイブ】

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2020年06月02日 11:33  サッカーキング

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写真マディソンら勢いのある若手が中心的役割を担い、攻撃サッカーを実践するレスター[写真]=Getty Images
マディソンら勢いのある若手が中心的役割を担い、攻撃サッカーを実践するレスター[写真]=Getty Images
[サッカーキング No.007(2019年11月号)掲載]

文=リチャード・ジョリー
翻訳=田島 大
写真=ゲッティ イメージズ
補強戦略を変更。若手の発掘、育成に注力
 昨シーズンのチャンピオンズリーグ準優勝チームから決勝ゴールを奪ったあと、MFジェイムズ・マディソンはこう言い切った。「僕らはトップ(一流)のチームなんだ」

 その言葉に異を唱える者はいなかった。レスターが一流のチームかどうかなんて議論はもう起きない。問題は“トップ6”に割って入れるか否か、その一点に絞られている。

 今シーズンのプレミアリーグで7試合を終え、トップ6との対戦成績は1勝1分け1敗。マンチェスター・ユナイテッドには0−1で惜敗したが、敵地でのチェルシー戦は引き分け、本拠地ではトッテナムに勝利した。第7節終了時点で、レスターの上に立つのは2強のリヴァプールとマンチェスター・シティだけだ。

 世界をひっくり返してから3年、彼らは再びフットボール界の序列を乱そうとしている。とはいえ、あのときとは決定的に違うことがある。1つ目は、いくら頑張っても今回は優勝できないということ。2つ目に、ビッグ6に入っても世界はひっくり返らないということだ。優勝オッズ5000倍をつけられた15−16シーズンとは違い、今の彼らにはビッグクラブと渡り合えるだけの実力がある。

“奇跡の優勝”のあと、レスターは一時迷走した。「プレミア王者」と「CL出場クラブ」の冠を引っさげ、高価な輸入選手をかき集めてはみたものの、FWイスラム・スリマニやMFアドリアン・シルヴァ、MFビセンテ・イボーラはどれも失敗に終わった。だが、高い授業料を払った意味はあった。レスターは若い才能に新たなアイデンティティを見出したのである。彼らはビッグクラブが羨むようなタレントを輩出する育成所を目指した。

 エンゴロ・カンテやリヤド・マフレズを発掘した敏腕スカウトのスティーヴ・ウォルシュは、2016年の優勝後に引き抜かれてしまったが、「ダイヤモンドの原石」を見抜く目は継承された。イングランド代表に呼ばれるようになったマディソンは、ノリッジが2部にいるときに引き抜いたし、MFデマレイ・グレイも19歳のときに2部のバーミンガムから連れてきた。今夏、DF史上最高額の8000万ポンド(約104億円)でユナイテッドに移籍したDFハリー・マグワイアだって、ハルが2部に降格した年に1700万ポンド(約22億円)で引き抜いた選手だ。他にもナイジェリア代表のMFウィルフレッド・ディディ(22歳)やトルコ代表のセンターバック、チャグラル・ソユンク(23歳)、ベルギー代表のMFユーリ・ティーレマンス(22歳)を獲得するなど、“国産”ではない選手にも目をつけている。

 レスターは同時に、実績のない若手にチャンスを与える冒険心のある監督を連れてきた。せっかく才能ある若手を発掘しても、使わなければ育たない。レスターではイングランド代表の左サイドバック、ベン・チルウェル(22歳)だけでなく、U−21代表のMFハムザ・チョードゥリー(22歳)やMFハーヴェイ・バーンズ(21歳)といった若手が出場機会を得ている。彼らはアカデミー出身であり、後者2名に至ってはレスターシャー州生まれという“ローカルボーイ”だ。
ロジャースのもとで確固たるスタイルを築く

 どうして若い選手が即座に結果を残せるのか? それは“いい塩梅”にある。レスターは若手が活躍できるような環境作りに余念がない。才能豊かな若手を集める一方で、実績のある中堅選手も獲得する。昨シーズンに加入したDFジョニー・エヴァンスはすでに30歳を超えていたし、今夏に獲得したFWアジョセ・ペレス(26歳)はプレミアリーグで約150試合の出場経験を持つ。

 そうしてタレントをそろえたあとで、適任の指導者を当てはめる。前任者のクロード・ピュエルもビッグクラブを“食う”ことがあったが、安定性を欠いた。何より優勝の味を知ってしまったファンには物足りなかった。ポゼッションスタイルを志すも、そのせいで持ち味のダイナミズムが消えてしまったのだ。だがブレンダン・ロジャースは違う。彼は攻めることを目的としたパスワークを定着させた。0−1で敗れた第5節のユナイテッド戦について、「押し込めた場面もあるが、もっと縦を意識すべきだった」と指揮官は振り返っている。「よりアグレッシブに、どんどんボールを要求すべき」として、その直後の試合でマディソンを中央に戻し、システムを4−3−3から4−1−4−1に変更してトッテナムを撃破した。

 クラウディオ・ラニエリ時代の後ろ重心の4−4−2とは全く別のやり方だが、レスターがロジャースのもとで再び確固たるスタイルを築こうとしているのは間違いない。

“いい塩梅”というのは何も補強方針だけの話ではない。戦力に目立った穴がないことも今シーズンのレスターの特長だ。監督はオーレ・グンナー・スールシャールやフランク・ランパードよりも実績がある。アーセナルのような守備の失策はないし、トッテナムよりも若手が充実している。何より、ビッグ6ほどの重圧がない。だから、とりわけビッグクラブが過渡期にある今シーズンならば、6強の牙城を崩せるかもしれない。

※この記事はサッカーキング No.007(2019年11月号)に掲載された記事を再編集したものです。

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