朝ドラ『エール』裕一は契約打ち切りのピンチ 「船頭可愛いや」から見える流行歌事情

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2020年06月02日 12:11  リアルサウンド

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写真『エール』写真提供=NHK
『エール』写真提供=NHK

 裕一(窪田正孝)は木枯(野田洋次郎)から作詞家の高梨一太郎(ノゾエ征爾)を紹介される。高梨は売れっ子作詞家であり、裕一に自身の詞に曲をつけてほしいと依頼。こうして裕一と高梨の筆による「船頭可愛いや」が完成する。


参考:朝ドラ『エール』第48話では、環(柴咲コウ)からの提案に小山田(志村けん)が……


 コロンブスレコードの専属になったまでは良かったが、作曲家としてなかなか芽が出ない裕一。書く曲は採用されず、採用されても鳴かず飛ばずで、ついに廿日市(古田新太)から「最後のチャンス」と宣告される。もし「船頭可愛いや」が売れなければ裕一はクビになり、契約金も一括返済しなければならない。しかし、周囲の期待も空しくレコードは一向に売れる気配がなかった。


 『エール』(NHK総合)第47話では当時の流行歌事情が垣間見える。その頃の歌手は音楽学校で音楽教育を受けるか、芸者など花柳界で芸を磨いた者に限られていた。特に芸者はアイドル的な立ち位置で人気も高く、「日本一の美人」と呼ばれた萬龍などを輩出。「船頭可愛いや」も当初は芸者に歌わせる予定で、人気芸者を一目見ようとスタジオに押しかける久志(山崎育三郎)と鉄男(中村蒼)の姿から当時の熱狂ぶりがうかがえる。


 結局、録音場所に現れたのは「下駄屋の娘」藤丸こと沼田松子(井上希美)で本職の芸者ではなかったが、可憐な船頭に憧れる歌詞の内容や職業作曲家とアイドルという組み合わせがこの時点ですでに確立していたことは興味深い。


 一方、記念公演に向けて練習に励む音(二階堂ふみ)は双浦環(柴咲コウ)の指導を受けていた。実力で勝る千鶴子(小南満佑子)を退けてヒロイン役をつかんだ音だったが、その分プレッシャーも大きく、「正確に歌うことと表現をすること」の両立に苦心する。そんな音に対する環の指導は具体的かつ基本に忠実なもので、息継ぎと歌う時のイメージについて助言する。


 ヒット曲の出ない裕一について、音は環に「きっかけさえあれば」と話す。夢の途中で悩む裕一と音は、離れていても互いのことを考えており、苦しい時に支え合う姿に夫婦仲の良さが出ている。環は音に「あなたはそれ(きっかけ)をつかんだんだから無駄にしないようにね」と返す。音を励ますつもりで言ったと思われるが、環の言葉になんとなく胸騒ぎを覚えたのは筆者だけだろうか。


 もう一人、第47話で忙しかったのが鉄男。廿日市とやり合ったり、おでん屋の大将になったりと失恋を乗り越えてたくましく生きているようだ。やっとそろった福島三羽ガラスなのに、今度は裕一が契約打ち切りの大ピンチ。この危機を裕一はどうやって乗り越えるのだろうか?


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。


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