なぜ「歯周病」は怖いのか? 歯の周りの骨を破壊していく病気の正体

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2020年06月02日 17:05  AERA dot.

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 厚生労働省の「歯科疾患実態調査」(2016年)では、4ミリ以上の歯周ポケットを持つ人の割合がどの年代においても過去、最高となり、症状の進んだ歯周病の人が増えています。 その状況を反映してかドラッグストアに行くと、「歯周病ケア」「歯周ポケット対策」「知覚過敏」……といった、歯周病関連のグッズが多く並んでいます。とはいえ、「歯周病のいったい何が怖いの?」と問われると答えに「?」がついてしまう人が多いのではないでしょうか。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会による、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』から一部を抜粋して紹介します。

*  *  *
 歯周病の怖さは、

「歯を支えている周りの骨(歯槽骨)が溶けてしまうこと」

「歯を失う原因になること」

「歯周病以外のさまざまな病気を引き起こしたり、悪化させたりすること」

 が代表的なものです。

 同じ口の病気であるむし歯と比較して、圧倒的に怖い病気といえるでしょう。しかも、痛みなどの自覚症状があまりなく進行していきます。それゆえ、「サイレント・ディジーズ(静かに進行する病気)」や「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」という別名でも呼ばれています。

 では、なぜ口の中の細菌がここまで悪さをするのか、歯周病の怖さの理由を解説していきましょう。

 歯は大きく分けて歯ぐき(歯肉)の上に見える部分の歯冠と歯肉の下に隠れている部分の歯根からなります。歯周病は、歯を支える組織である歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨からなる「歯周組織」に生じる病気です。

 歯周組織と聞くと、歯の「周り」だから、歯そのものに比べればそれほど重要には思えないかもしれません。しかし、そうではありません。歯周組織は、歯をしっかり支える上で重要な役割を果たしています。唯一、歯肉は外から見えますが、その他の組織は歯肉の内側にあるため、病気の兆候に気づきにくいのです。

 歯周病の原因となる歯周病菌は、その多くが空気を嫌う嫌気性菌です。歯磨きが不十分だと歯の表面にネバネバした黄白色の粘着物であるデンタルプラークが作られます。このプラークは細菌の塊で、時間とともにやがてプラークの量が多くなり、酸素が少ない状態になると、このプラークの中で嫌気性菌が多くなります。この嫌気性菌の中に歯周病の原因菌がいて、歯周組織を破壊していくのです。

 歯と歯肉の境目のプラークにより生じた炎症は、セメント質、歯根膜、歯槽骨へと広がっていきます。

 炎症が起きている部分では、発赤、腫れや出血、時には痛みが見られますが、これは本来、からだを守る防御反応です。プラークの中の歯周病菌が歯肉に攻撃を仕掛け、中に侵入しようとすると、からだはなんとかして菌をやっつけようとします。からだへの侵入を抑えようと、病原菌を撃退する働きをする白血球などが毛細血管の血流を通じて病巣部にたくさん送られます。

 いうなれば歯肉を戦場として、歯周病菌と白血球のすさまじい戦いが始まるわけです。戦う際に白血球などから産生される各種の炎症性物質が細菌を殺す成分です。一方、歯周病菌も負けじと毒素など、色々な武器を繰り出します。こうしたさまざまな物質の働きで、歯肉に炎症が起き、歯周組織の破壊が起こるのです。

 この戦いによる代償は大きいものです。戦場となった土地は荒れ果てて、建物などが破壊されるように、歯肉も同様に炎症の代償として自分のからだを傷つける、つまり歯周組織を壊してしまいます。本来、歯にぴったりと付着していた歯肉が剥がれ、歯と歯肉の間にすき間、すなわちポケットができてしまいます。

 さらに歯周病を放置しておくとプラークはこのポケットの中に潜り込み、再びその場所で炎症を起こし、歯周組織を次々と壊すという悪循環に陥ります。

 後で詳しく述べますが、この病巣部にいる歯周病菌や炎症性物質などは、歯肉の血管から全身に入り、動脈硬化や糖尿病、アルツハイマー病などさまざまな病気を引き起こしたり、悪化させたりする要因となります。炎症を放っておくことはからだにとってよくないことなのです。

 歯周ポケットが深くなり、炎症が拡大していくと、歯の周りの骨も破壊され続け、やがて支持を失った歯はぐらつき始めます。むし歯もないきれいな歯であっても歯周病が進めば、最後にはある日、ぽろりと抜けてしまうことがあるのです。

 歯根の先まで失われた歯槽骨は元には戻りません。進行した段階では歯周病治療をおこなったとしても、炎症をコントロールして、歯周組織が破壊されるのをストップするのがせいいっぱいで、歯周組織再生療法をもってしても治療には限界があります。

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会/1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会/1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。

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