「あつ森」ブレークで変わるゲーム観 勝ち負けよりも大切な「要素」とは

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2020年06月03日 17:00  AERA dot.

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写真あつ森のゲーム内で開かれた「卒業式」の様子(gettyimages)
あつ森のゲーム内で開かれた「卒業式」の様子(gettyimages)
「あつまれ どうぶつの森」(以下、あつ森)が、記録的な売れ行きをみせている。ゲーム情報誌「ファミ通」によると、3月20日に発売されたあつ森の国内累計販売本数はすでに400万本を超え、「Nintendo Switch」(以下、スイッチ)史上最多の売り上げを達成。また、海外を含めた販売本数では、発売日から年度末までのたった12日間で1177万本を記録するなど、世界規模で驚異の売り上げペースを刻んでいる。あつ森はなぜこれほどのブームになり得たのか。そこには、あつ森だけが持つ「ユニークな要素」があった。

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*  *  *
「あつ森は明確な勝ち負けが存在しない数少ないゲームなんです。特に海外ではこうしたゲームはほとんどありません」

 ゲームジャーナリストの小野憲史氏はあつ森の「特異性」をこう語る。

 賞金をかけて勝敗を競う「eスポーツ」が顕著なように、昨今のゲーム市場では高い技術や勝敗を競うことに重きが置かれている。米調査会社の「Newzoo」によると、2017年のeスポーツの世界市場規模は700億円だったが、2021年にはその2.5倍の1765億円にまで成長すると見込まれている。

 だが、この「技術・勝敗重視」の流れと真逆の路線を取るのが、あつ森だ。あつ森では、ゲーム内でプレーヤーが「島」の住人と会話をすることで親密になったり、家具集めをして部屋の模様替えを楽しめたりと「勝ち負けのない世界」が広がっている。

「eスポーツが支持されてきた欧米では、勝ち負けを競うゲームが盛んに作られてきました。しかしコロナ禍の状況では、人々は心の癒やしを求め、あつ森のような直接勝ち負けを競わないコミュニケーションツールに志向がシフトしているようです」(同前)

 その言葉通り、eスポーツ発祥の地とされるアメリカで3月に最も売れたゲームは、あつ森だった(米NPDグループの調査より)。

 ゲームジャーナリストのジニ氏は、あつ森特有のコミュニケーション方法に着目する。

「勝つためにプレーヤー同士で戦略を立てたり、情報交換をするなどのコミュニケーションがなされてきたゲームが多いなか、『ささいな生活』を共有するために交流を図っていくあつ森は、そもそも出発点が違うのです」

 これを可能にしたのは、もともと「どうぶつの森」シリーズが、家族や友人との会話を促すためのコミュニケーションゲームとして開発された背景があるからだ。

 2001年発売の初代「どうぶつの森」の開発に携わったディレクターは、過去のインタビューで次のように明かしている。

「最終的には人と人とのコミュニケーションに持って行かれるように、ぜんぶのネタを作ってあります。キミのところの家具と僕のところの家具を交換しようよ、とか」(2003年6月 任天堂オンラインマガジン「N.O.M」59号より)

 シリーズの基本的なゲームシステムは約20年前の初代から変わっていないが、売り上げは作品を追うごとに右肩上がり。ジニ氏はその理由についてこう分析する。

「SNSの発達やネットの接続環境向上などによって、どうぶつの森がもともと持っていたポテンシャルが引き出された。時代が追いついたと言ってもいいでしょう」

 加えて、世界中が「外出自粛という特殊な状況下」に置かれたことで、あつ森が持つコミュニケーションツールとしての強みが遺憾なく発揮されることとなった。

 ツイッターでは「#あつ森写真部」などのハッシュタグとともに、ファッションやインテリアをはじめとした「生活」の様子が盛んに投稿されている。「#あつ森民と繋がりたい」というタグ付きで、コミュニケーションの域を積極的に広げようとするユーザーも多い。

 ゲームに詳しい評論家のさやわか氏は、外出自粛とあつ森ヒットとの相関性をこう語る。

「さまざまな活動が制限される中、外出して人と会ったり、家を改築したりといった行為をバーチャルな空間で代替できてしまうところが、あつ森人気の一因でしょう。現実と地続きで、生活を代替するような形で使われているのです」

 その「代替行為」は日常生活にとどまらない。ロックダウンで外出が制限されたフランスでは、セックスワーカーたちによる買春者処罰法への抗議デモがあつ森のゲーム内で行われた。

 ほかにもゲーム内に正装したゲストたちが集まって「結婚式」をしたり、学帽をかぶった生徒たちが架空の会場に着席して「卒業式」を開催したりする動きが生まれた。

「あつ森では日常生活、社会生活のほとんどがゲーム上でできてしまいます。そうした自由度の高さが、『現実で制限されていることを補完する』という潜在ニーズに応え、世界中で好まれたのだと思います」(同前)

 あつ森のブレークは家庭用ゲームの未来を変える「パラダイムシフト」となり得るのか。

 さやわか氏はアフターコロナにおけるゲームの動向をこう推察する。

「これまでは、サッカーゲームや戦闘ゲームなど、ルールの制約があった上でのコミュニケーションが中心でした。しかし、あつ森のブレークを機に、今後は制作側がゲームの『遊び』として残しておいた隙間に、ユーザーの創意工夫が反映されるソフトが支持を集めるでしょう。今回ゲーム内で起こったデモや結婚式などが象徴的ですが、ゲームを手段として、ユーザー同士で目的を作り出していくことができるようになるはずです」

 実社会で閉塞感が強まるほど、バーチャルな空間で人々を癒やすあつ森は支持されるだろう。そのなかで、多士済々のユーザーがどのような「創意工夫」をしてあつ森を盛り上げていくのか。今後も注目したい。
(AERAdot.編集部・飯塚大和)

このニュースに関するつぶやき

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  • 勝ち負けはないけど、コレクター魂は揺さぶられるよね 虫、魚、ファッション関連、家具、配信アイテムなどなど、集め出したらキリがない(・∀・)
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