児童書で描く“おばけ”は、なぜ怖くないのか? 「小さなおばけ」40周年でもなお愛される秘密

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2020年06月04日 08:40  ORICON NEWS

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写真『スパゲッティがたべたいよう』(C)角野栄子・佐々木洋子/ポプラ社
『スパゲッティがたべたいよう』(C)角野栄子・佐々木洋子/ポプラ社
 絵本『スパゲッティがたべたいよう』でスタートした「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズが昨年40周年を迎えた。成人向け作品では、“怖い化け物”として描かれる“おばけ”だが、なぜ児童書では、愛らしく友達のような存在として描かれることが多いのだろうか? 数多くの児童書を手がけ、『魔女の宅急便』でも知られる作者・角野栄子氏が、“おばけ”を友達のような存在として描いた理由や長く愛される秘訣について語った。

【画像】全く怖くない…とっても可愛い“おばけ”たち、「小さなおばけ」画像集

◆子どもたちの想像力を刺激する“おばけ”は、作者の気持ちを自由にする

――「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズを書こうと思ったきっかけを教えてください。

【角野栄子】 書き始めたのは、今から41年前です。20代で2年間暮らしたブラジルで、美味しいスパゲッティの作り方を覚えてきたので、スパゲッティの話を書いてみようと思ったことがきっかけです。当時、全くの新人でしたので、“ただ面白いものを書きたい”そういう気持ちでした。

――なぜ“おばけ”を主人公にしたのでしょうか?

【角野栄子】 “おばけ”は自由で、広い世界を持っている。いつでもどこでも、消えたり現れたり。その“おばけ”が食いしん坊だったら……。イメージがどんどん広がりました。

―― 一般的なイメージの“おばけ”とは異なり、本作では善良でとても愛らしい存在として描かれています。キャラクター設定はどのように決めたのでしょうか?

【角野栄子】 いろいろな作家がおばけのお話を書いていました。でも、私なりに思いっきり冒険して、新しいおばけを書きたくて、「アッチ」というキャラクターが生まれました。

――日本の成人向け作品では、“おばけ”は“怖い化け物”としておどろおどろしく描かれています。一方、童話や絵本では、「小さなおばけ」シリーズもそうですが、『オバケのQ太郎』や『おばけのバーバパパ』など、可愛らしく、友達のようなポジティブな存在として描かれることが多いです。なぜ、愛らしい存在として描かれるのでしょうか?

【角野栄子】 おばけは、作者の気持ちを自由にしてくれます。おばけを書くことで、作者も元気になる。そして、魅力的なキャラクターが生まれて、子どもたちの想像力を刺激したのではないでしょうか?

◆常識や現実の埒外にある“おばけ”や“魔女”が狂気的な存在だとは思わない

――「大人になって読むと、やさしい絵と語り口に懐かしさを覚え泣きそうに。本当の友情と夢を追うことの大切さと努力。純粋なメッセージが伝わります」など、SNSでもは大人が今読んでも心に残る作品といったコメントが寄せられています。子ども向けだからこそ、大人にも本を読んで感じ取ってもらいたいという思いはありますか?

【角野栄子】 もちろんあります。子どもが面白いと思ったものは、大人も面白い。でも、大人が面白いと思ったものを、必ずしも子どもが面白がるとは限りません。

――「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズは、毎年出版されています。40年も長く続くと思っていましたか?

【角野栄子】 こんなにも続くとは思っていませんでした。でも第1巻の『スパゲッティがたべたいよう』が出版された時に、たくさんの子どもたちから「面白かった」という感想が寄せられました。そのような読者の支えがあってこそ長く続けてこられたのだと思います。

――「小さなおばけ」シリーズが、親から子へと受け継がれ、長く愛される秘訣は?

【角野栄子】 いつも真剣勝負でした。子どもは面白くないものは、読まない。そんな一番“純粋な”読者に読んでもらうのですから。

――1985年、50歳で『魔女の宅急便』を出版し、宮崎駿さんによりアニメ映画化されました。35年経た今でもとても人気のある作品です。同作は“魔女”が主人公です。“おばけ”もそうですが、成人向け作品では異質な存在だからこそ狂気的に描かれることが多いです。一方で、勇気や仲間を大切にする心など、子ども向けの作品ではポジティブな存在として伝えやすいのでしょうか?

【角野栄子】 “おばけ”や“魔女”が狂気的な存在だとは思いません。彼らは、常識や現実の埒外にある自由な存在だから、読む人にも自由に想像する力を与えてくれるのでしょう。

――これまで多くの童話や絵本を出版しています。児童書を書こうと思ったきっかけは?

【角野栄子】 私の資質に合っていると思っています。出版されるかどうかに関わらず、毎日書いても飽きないし楽しい。そのことに気づいたのは、30代半ばでした。

◆この機会に、どんどん本を読んでほしい 本は“心のジョギング”です

――多くの作品が出版されたなかでも、思い出深い作品はありますか?

【角野栄子】 もちろん「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ」です。40年前も今も、小さな子どもたちが新しい本が出るのを待っていてくれる。これほど嬉しいことはありません。また、このシリーズが私を作家にしてくれたと思っています。

――題材を決める際のポイントはありますか?

【角野栄子】 最も重要なのは、主人公です。これにつきます。私自身が大好きになるような主人公を描き続けてきたつもりです。

――絵本を書く楽しみとは?

【角野栄子】 心が自由になれることです。書いているときは、読者と一緒に歩いているような気持ちです。

――本を通して、子どもたちに伝えたいことはありますか?

【角野栄子】 たくさんの本に出会ってほしいです。本を開けば、楽しい冒険が待っています。大きな声を出して読んでみてください。

――「おうちでわらおう」特設サイトで公開された「#おうちでわらおう」のスペシャル動画では、子どもたちへの思いが掲載されています。新型コロナウイルス感染拡大で思うように活動ができないなか、子どもたちにどのようなことを伝えたいですか?

【角野栄子】 家にいなければならないのは、辛いかもしれませんね。外に出て遊びたい。友達とも会いたい。でもこの機会に、どんどん本を読んでください。本は心のジョギングです。

このニュースに関するつぶやき

  • 初めて?中学生の自分が親にねだって買ってもらった本がアッチだった。何て言うか‥ある意味偏見かもしれないが、幼児向けのキャラの可愛さを見ると、場合によっては泣いてしまう。‥
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  • ねないこだれだは相当怖かったですけど…
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