コロナ禍で需要増、72歳“レディコミ”の女帝が語る使命感「壮絶DVに旦那の不倫も経験」

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2020年06月05日 06:30  ORICON NEWS

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写真巣ごもりでニーズ高まる“実話系”マンガ(『ホームレス主婦』(C)井出智香恵/ぶんか社)
巣ごもりでニーズ高まる“実話系”マンガ(『ホームレス主婦』(C)井出智香恵/ぶんか社)
 嫁姑問題やご近所トラブル、ドロ沼不倫など、女性の欲望をむき出しに描いてきたレディースコミックが、今再び高く支持を集めている。中でも読み応えのあるストーリー展開と流麗な絵柄、そしてときに盛り込まれる過激な性描写で、トップを走り続けるのが“レディコミの女帝”こと井出智香恵先生。自身の壮絶なDV体験を経て、漫画を通して女性読者に寄り添い続ける井出先生に、レディコミ作家としての矜持と使命感を語ってもらった。

【漫画】こっそり読みたい?DV夫と鬼姑から逃げ出した主婦がホームレス生活

◆こっそり読むレディコミは「ウェブとの相性抜群」

──レディコミ界の黎明期から活躍され、作品数も数えきれないほど描かれていますね。

【井出さん】80年代にレディコミの大ブームが来て、そのときは1ヵ月400ページも描いていました。普通の作家の1年分で、アシスタントも10人いましたから。現役女性漫画家としては世界一といってもいいかも…。まあ、だからと言って世界的に有名でもないし金持ちでもありません。レディコミは単行本化がほとんどされないから、雑誌で読むしかないんですよね。日本の特殊なジャンルだからこそ、隠れ読者が多くて支持されていたんだと思います。

──今なおご健筆です。失礼ですが、先生は御年…。

【井出さん】72歳になりました。でも頭は冴えわたってるし、創作意欲もぜんぜん衰えていません。しかもね、ウェブ漫画の時代になって私の漫画のファンがすごく増えてるみたいなの。レディコミってね、基本的にこっそり隠れて読むものなんです。だってお姑さんのいる家に『実録!嫁姑バトル』なんて置いとけないでしょ(笑)。旦那さんの前で『ドロドロ不倫モノ』なんて読めない。

 私の漫画はエロ描写が激しいものも多いですしね。読んでスッキリ、読んだあとはキレイさっぱり澄まし顔していられるウェブ漫画は、レディコミととても相性がいいんだと思いますよ。まあ、雑誌と比べると原稿料は安いけど、年金の足しにはなるかしらね(笑)。

◆「生活するため」、少女漫画からレディコミに転身

──少女漫画でデビューして、近年はGucciが先生の大ヒット漫画『ビバ!バレーボール』とのコラボアイテムを発表したことも話題を呼びました。その先生が、どうしてレディコミを描くようになったんでしょうか?

【井出さん】生活のためです(キッパリ)。もともと私はミステリー好きだったので、森村誠一先生の小説のコミカライズをたくさん担当させてもらってたんですね。それがすごくウケたんですが、また私は激しい感情表現を描くのが得意だったので、編集者が『もっと過激なエロを』と求めてくるようになったんです。それでますます読者にウケて。森園みるくさん、伊万里すみ子さん、そして私の3人で、“3大エロ女性漫画家”って呼ばれてたこともありましたね。

──『りぼん』などの少女漫画を描いていた先生としては、不本意ではなかったですか?

【井出さん】ぜんぜん。ジャンルではなく、漫画を描くことが私にとっては何よりもの喜びでしたから。たしかにバカにしてくる男性漫画家はいましたし、『なんであんな漫画描くの?』と言うお友だちもいましたよ。だけど(元)旦那は働かないし、育ち盛りの子どもが3人いましたしね。『子どもたちを食べさせるためです』って言うと、みんな黙りました。

◆「今でも夢に見ることがある」、元旦那の壮絶なDV体験

──先生はかつて元夫の方から激しいDVを受けていたそうですね。

【井出さん】どうしようもない男でね。心の病気で、季節の変わり目は特にひどかった。私は言葉では何を言われても平気な顔をしてるので、手が出るんです。

 理由は何でもいいんですよ。たとえば髪を切ったら『俺に黙ってなんで切るんだ』と食卓を引っくり返すんです。そして廊下の隅に追いやられて殴られ続ける。床に顔を押し付けられてね、脂汗がじっとり滲んだ顔が埃まみれになって…。今でも夢に見ることがあります。

──それでも10年ほどは結婚生活を続けられたんですね。

【井出さん】子どもを守るためです。離婚したいと言うと、子どもを殺すって言うんですよ。向こうは働かないですから、私の収入が目当てだったんです。田舎に似合わないランボルギーニなんか何台も買ってね。女を囲って。一番下の娘と同い年の子まで、そちらの方と作ってましたからね。

 レディコミの全盛期はそれでもなんとか払っていけたけど、やがてブームも去って、だけど借金は増える一方。いつしか首が回らないところまで膨れ上がってました。

──離婚調停には10年ほどかかったとか。

【井出さん】子どもを人質に取られていたのもそうだけど、人間、殴られ続けると思考が停止して逃げることも考えられなくなるんです。だけどあるとき元夫が長女を殴って、失明させかけた。それで決意しましたね。

『私が借金をすべてかぶりますから、形だけでも離婚してください』と言いました。『離婚してもあなたの生活は面倒見ますから』と騙しましたね。その後は一切会ってませんから。編集者さんたちも住所を知られないように協力してくれましたね。

──周りの方々には恵まれたんですね。

【井出さん】子どもたちにもね。まっすぐに育ってくれましたし、また元旦那も顔だけは良かったですから、3人とも私よりだいぶ美しく生まれてくれてね。顔で選んで失敗しましたけど、タネだけはアレでよかったかなと思ってますよ(笑)。

◆依頼が途切れないDVもの、「空想で描いても読者は満足しない」

──昨今は自粛のストレスからくるDVが社会問題化しています。先生も壮絶な体験をもとにした「DVもの」を数多く描かれています。

【井出さん】DVをテーマにした漫画の依頼はずっと途切れないですね。先ほどレディコミのブームが去った頃の話をしたけど、原因の1つは量産されすぎたことによる質の低下もあったと思います。こう言っちゃ悪いけど、稚拙な漫画家も次々デビューしていきましたからね。またそういう漫画家は想像だけで物語を描くんです。だけど実録系においては空想で描いたものでは読者は満足しないんですよ。

 私は漫画としてはファンタジーも描きますけど、人生相談をしていたこともありますし、また読者が投稿してくれた実体験を元にしたした本を出したこともあるので、ネタには事欠きませんでした。事実は小説よりも奇なりじゃないけど、空想では追いつけない、想像を絶する体験をされてる方って本当にたくさんいるんですよ。

──ご自身も経験者として、DVを描くときにこだわってることはありますか?

【井出さん】私が決めているのは、必ず希望をもたせた終わり方にすること。復讐劇とか女性が自立する話とかストーリーはいろいろですけど、とにかく読者が苦しみから抜け出すアドバイスやヒントを盛り込むようにしています。それがDVものの漫画を描く原動力にもなっていますしね。

──同じ苦しみを味わってきた先生だからこそ、読者に寄り添った説得力のある漫画が描けるんですね。

【井出さん】本当にね、私にお金があればDVに苦しんでいる女性のための施設を作りたいんですよ。だけどつい数年前に元夫の借金を返し終えたところでね。DVを受けていても経済力がないから離婚できないという女性は多いんです。

──このコロナ禍で、DVを受けながら逃げたくても逃げられない女性もたくさんいると思います。最後に先生からそんな方々へメッセージをいただけますか?

【井出さん】暴力を振るわれた後に甘い言葉をかけられても、絶対にほだされちゃダメ。DVは決して治りません。今は耐えるしかないと思ってるかもしれないけど、旦那にバレないように情報収集をして。

 私の漫画にも旦那を欺く方法をいっぱい書いてますから、どうぞ参考になさってください。幸せになるためには、ときはズルく賢く立ち回ることも大事です。私の漫画で救われる女性が1人でもいることを、心から願っています。
(文/児玉澄子)

このニュースに関するつぶやき

  • >暴力を振るわれた後に甘い言葉をかけられても、絶対にほだされちゃダメ。DVは決して治りません。←ココ、完全に同意ですw離れるのが簡単じゃないのも知ってる。
    • イイネ!3
    • コメント 3件
  • こういう系のマンガには正直興味ないけどこのマンガ家さんの性格は好きかもしれない 笑
    • イイネ!58
    • コメント 0件

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