車いすYouTuberギャル・渋谷真子が語った「生と性」

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2020年06月06日 16:02  日刊SPA!

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写真渋谷真子氏
渋谷真子氏
”現代のもののけ姫Maco”と名乗り活動するYouTuberが今、大きな話題を集めている。彼女はなぜ、SEXや排泄など、車いすユーザーのリアルな生活を包み隠さず配信するのか。山奥で暮らす彼女を訪ねた。

●渋谷真子氏……車いすのギャルチューバー。 ”現代のもののけ姫Maco”として、地元・山形の自室から車いす生活を包み隠さず動画配信している。東京オリンピックの聖火ランナーにも選抜されている

◆黒い車いすを漕ぎ続け、先の見えぬ荒野に道を開く

 愛嬌たっぷりの笑顔に親しみがわく黒ギャル・渋谷真子、28歳。26歳のときに転落事故で脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされた。彼女の配信動画を観ると、ケガの経緯や車いす生活の実情について笑いを交えて語っている。中でも排泄やSEX事情の赤裸々な告白は話題を呼んだ。そこには我々が、障害をもつ人たちに対して抱きがちな暗さは微塵も感じられない。

 “普通じゃない”底抜けな明るさに惹かれ、彼女のもとを訪れた。

 山形県の鶴岡市、湯殿山麓にある山村で、渋谷氏は車いす生活を送っている。2年前の春、勤めていた会社を辞め、茅葺き屋根職人である父親の後を継ごうと決めた。その年の7月に転落事故は起きた。

「見習いとして作業中、民家の軒先からバランスを崩してそのまま転落。3mほどの高さから、その庭の池の縁に積まれた石に背中を打ちました。下半身に痛みはなく、正座を崩したときに近い痺れが続きましたが、それが足先なのか、膝なのかはわかりませんでした」

 救急車で病院に搬送され、そのまま7時間に及ぶ手術を受けた。その3日後、医師から「胸椎が損傷。みぞおちから下の運動機能と感覚機能が失われている」と告げられる。車いす生活という未知の世界に戸惑いはあったが、彼女はいつまでも落ち込んでいなかった。

「医学的に脊髄損傷の治療法が確立されていない以上、悔やんでも意味ないやんと。それでインスタで“脊髄損傷”や“車いす”を英語で検索したら人生を満喫する“キラキラ海外女子”の写真がずらり。視界が一気に開けた気がしました」

 SNSに助けられた渋谷氏。その一方で、彼女の父親は娘の明朗快活な性格に心を救われている。

「私が娘の人生を奪ってしまった。今でも夢に見るし、気持ちの整理もついていません。でも、娘の頑張る姿が私の唯一の救いです」

◆下半身の感覚なくてもSEXは気持ちいい

 日本国内では年間約5000人ペースで新たな脊髄損傷患者が増え、その原因は交通事故、転落、転倒の順に多いという。脊髄損傷は誰にでも起こりうる身近なケガと言えよう。当然、運動機能や感覚知覚機能を失えば、それまで通りの生活は送れない。かつてはクラブや野外イベントで派手に遊ぶ“パリピ”で、熊やウサギを猟銃で仕留める“マタギ”でもあった渋谷氏は、事故以降も海外旅行やシュノーケリングなど、車いすなりに“自由”を謳歌している。

 だが、「車いすで移動中、筋肉が収縮する痙性が起きて前の人を蹴ってしまう」「見えていないのか、路上で手を上げてもタクシーが停まってくれない」など、脚が不自由ゆえの苦労は絶えない。また、「私もそうですが、脊髄損傷では高確率で排泄障害を伴います。それは歩けないことよりイヤ」と言うほど、排泄感覚を失うのはつらい。

「自分の力で溜めたり出したりできません。おしっこは3時間置きに尿道口にカテーテルを入れて出す。“うんぴっぴ”はお昼前が日課です。ゴム手袋をしてワセリンを塗った指をお尻の穴に突っ込めば出てきますが、お腹の具合が悪いと知らない間に漏らすことも少なくありません。

 リハビリパンツ(紙パンツ)をはいていても臭いは外に漏れますし、着替えるときに内腿につくので体を綺麗にするのもひと苦労です。和式トイレしかない古い建物だと、もうお手上げ。トイレで女友達2人に担がれ、M字開脚のまま下半身全体を拭いてもらったのは、苦い思い出(笑)」

 対する“性”のほうはどうか。昨年12月に渋谷氏は車いす生活になって初めて男性と体の関係を持った。相手は30代の会社員だ。

「みぞおちから下は感覚がありません。でも、相手が腰を振るとその振動が上半身に伝わるので、直接的な快感はないですが入っているのが想像できます。昔のSEXを体と脳が覚えているので下半身はちゃんと濡れるし、喘ぎ声も自然と出ちゃう。終わった後はスッキリ。私も口と手で頑張った」

 二人の関係は継続中。2回目のとき、カテーテルにより膀胱内が傷つき、出血を伴ったため、今はそれを抜いて性行為に及ぶという。

「正常位、バック、騎乗位、対面座位はできたし、体位によって膣内がちゃんと収縮していることも彼に教えてもらいました。男性に頼るしかないので私から誘うことはできません。それでも『SEXはできるのか』という不安や『満足させてあげられない』という男性への申し訳なさは解消され、女性としての自信を取り戻せました」

◆女性特有の悩みやバリアフリーの現状を動画で訴える理由

 尿漏れ事情や駅員への態度など、視聴者から叩かれても、女性特有の悩みやバリアフリーの現状を動画で訴える渋谷氏。その理由とは。

「脊髄損傷は身近なケガなのに、私が欲しい情報を発信している車いすユーザーが日本には少なかった。今後私と同じ悩みを持った脊損患者を助けられたらなと。対して『駅員の昇降機の使い方が不慣れ』や『完全バリアフリーを謳うホテルなのに部屋のハンガーラックに手が届かない』などの問題提起に関しては、障害のある人がバリアフリー設備を意識せずに生活できる社会になってほしいから」

 社会への問題提起しかり、排泄や性事情をあけすけに語るのは、弱者ではなく“普通”でありたいことへの思いが強いからでもある。

「性欲は人間の根源的な欲求なのに、“障害者”というだけでアンタッチャブルな話題になってしまう。そういう垣根を少しでもなくしたいんです。そして健常者と障害者を分断し『弱者だから助けてあげる』といった上から目線ではなく、友人や彼女が困っているから手を差し伸べる。そんな感覚で、私は“普通”に接してもらいたい」

 多くの人が障害のある人たちに対して抱く“暗さ”こそ、まさに偏見であり、それは彼女の明るさを“普通じゃない”と思ってしまったことにも表れている。渋谷氏が持ち前の明るさで、車いすで生活する人々のイメージを変えていくことを願っている。

◆日本のバリアフリー、なぜ遅れてる?

 車いす生活の動画配信を通し、渋谷氏がバリアフリーの現状を伝えているが、実際、日本のバリアフリー事情はどうなのか。

「建築・まちのバリアフリー」を専門に研究する東洋大学教授の菅原麻衣子氏に話を聞いた。

「障害のある人への差別を法律で厳しく禁じるアメリカやカナダに比べ、日本のそれには物足りなさがあります。ですが、いろいろな障害の中でも、移動・利用の制約が大きい車いす使用者に対するハード面のバリアフリー化は、多機能トイレや駅構内のエレベーター設置など、少なからず進められてきました」

 ただし交通機関に限っては、渋谷氏が「永田町事件」と題した動画で指摘したように、「乗り換えで一旦地上に出なくてはならない」「エレベーターが1か所。しかもホームの端」といった駅は、開発が難しい都心を中心に多いという。一方、障害のある人に対する意識や対応といったソフト面はどうか。

「『多機能トイレがコスプレイヤーの衣装の着替え部屋に様変わり』や『車椅子などの優先エレベーターなのに健常者で埋め尽くされ長時間待機』など、それを最も必要とする人が使えないという問題があります。

 日本では、幼少期から障害のある人と接する機会が少ないためか、ソフト面の成熟度は低いと言わざるを得ません。『障害者のためにバリアフリー化してあげる』という上から目線の社会的風潮も根強い。東京パラリンピックを機に、無意識や無知による差別からは卒業すべきでしょうね」

【菅原麻衣子氏】
東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授。研究テーマは、建築・まちのバリアフリー。日本福祉のまちづくり学会所属

取材・文/谷口伸仁 撮影/高石智一(本誌)

このニュースに関するつぶやき

  • 都心の古い、特に地下鉄の駅などはエレベーターなどの設備が遅れている感じがする。確かに場所的に難しいのもわかるけど。
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  • 勇気ある男性がいたのですね。
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