田中亜土夢が語るフィンランド現地情報「サウナのことも伝えたい」

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2020年06月07日 06:31  webスポルティーバ

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 今年3月、田中亜土夢は2度目の海外チャレンジを決断した。行き先はHJKヘルシンキ。2015年から2017年まで3シーズン過ごしたクラブだ。今回の契約は7月末までだった。フィンランドは日本と同じ春秋制で、4月にシーズンが始まる。短期間の契約は決意の表れでもあった。

「そのあとはステップアップもしたいし、違う世界も見てみたい」

 2020年前半を古巣ヘルシンキで戦い、夏の移籍市場に間に合わせる。フィンランドは大好きなところだが、現役のサッカー選手としては行ける限りのところまで行きたい。さらに、いろいろな文化に触れて吸収し、知的好奇心も満たしたい。1987年生まれの32歳はそう考えて2度目の移籍を決めた。

 しかしそんなプランは、新型コロナの影響で一変した。

 3月上旬、クラブは活動自粛に入った。4月11日の開幕戦に向けてトレーニングを行なっている最中のことだった。加入したばかりの田中も、自宅でクラブから与えられたメニューをこなしながら過ごす日々が始まった。

 オンラインでヘルシンキでの外出自粛の様子を尋ねると、田中からちょっとしたクイズを出された。

「近所の森の中に13キロのジョギングコースがあるんです。自粛期間中に走りに行ったんです。だいたい1時間10分くらいかな。その間に何人とすれ違ったと思います?」

 フィンランドでは、距離を保ったうえでの買い物など、必要な外出は認められており、「散歩はむしろ推奨されていた」というのがヒントだそうだ。スペインやイタリアのように、厳しい外出制限が敷かれていた国もあったが、ヘルシンキの様子はどうだったのか。

「答えは760人です。ふだんより多いんですよ」

 メモを見返しながら、おかしそうに教えてくれた。フィンランドではそれほど厳格な規制は行なわれてないという。加えて、筆者の暮らすドイツもそうだが、北欧には森林で自然を感じることが好きだという人がとにかく多いのだ。

 フィンランドでは4月に入り、グループでの練習が再開された。5月7日には、7月1日にリーグ戦が開幕することを発表。ひと足早く、6月16日にはカップ戦の決勝トーナメント1回戦が予定どおり行なわれる。

そもそも今回の移籍には、「自分自身を取り戻す」意味合いもあった。

 田中は高校3年だった2005年にアルビレックス新潟の特別指定選手になると、14年まで、新潟の看板選手として戦った。「このままアルビレックス一筋で」と思うこともあったというが、時とともに、サッカーを武器に広い世界を見たいと思うようになる。ただ、新潟育ちの田中は、国内のライバルチームに移籍して対戦することを、この時は好まなかった。

 自然と視線は海外に向かった。2013年末、ポーランドのグダニスクやドイツ2部のコットブスへの移籍話が持ち上がる。コットブスでは練習に参加し、手応えもあったが、チーム事情もあって加入には至らなかった。このシーズン、コットブスは最下位となり3部に降格。現在は4部にで戦っている。田中は「俺を取っておけば落ちなかったのに」と笑った。

 そして2014年末、フィンランドのヘルシンキへの移籍が決まった。田中は迷わず、フィンランドに飛んだ。チームがチャンピオンズリーグ(CL)予備予選に出ることにも魅力を感じた。

 ヘルシンキは性に合っていた。

「日本にいると気になるようなことが、言葉がわからないからというのもあって、あまり気にならないんですよね。フィンランド人は真面目で少し内弁慶で、でも打ち解けると優しい。日本人に少し似ているんですよね。そういうところもよかったと思う」

 チームでは主にトップ下でプレー。ヘルシンキはフィンランドリーグの強豪で、つなぐタイプのサッカーを志向していた。ただ、田中に求められたのは結果だった。

「助っ人として結果を求められるというのも、なんだかよかったんです」

 1シーズン目の2015年は31試合8ゴール、2シーズン目は17試合5ゴール、3シーズン目は33試合で7ゴールを決めた。この3年の間に日本人の水墨画家と出会ったことから、自身も描くようになり、個展を行なうほどになった。

 HJKヘルシンキを退団後、2018年、2019年はセレッソ大阪でプレーした。だが、この2シーズンの感触は、決していいものとは言えなかった。

「日本に戻ったら、フィンランドに行く前の、いろいろと気にする自分が戻ってきてしまったんです。それでなんかうまくいかなくて、1シーズン目なんてほとんど試合出ていない(先発出場1試合、途中出場5試合)ですからね」

 今回のコロナ禍で思うことがあった。

「サッカー選手だからといって、プレーだけしていればいいのではなく、何らかの発信をしていかなくてはいけないのだろうな、と」

 人と会う代わりに、インターネットを使うことが増え、結果的に遠くの人ともコミュニケーションをとることができるようになった。フィンランド式サウナをはじめ、フィンランドの素敵なものを紹介するウェブサイトを近々オープンしたいと思っている。

「前回フィンランドに住んだ時に、サウナが大好きになりました。日本のドライサウナと違って、フィンランドのサウナは湿度が高くてしっとりなんです。だいたい湖畔とか海辺に作るから、そのまま水風呂じゃなくて湖とかに飛び込むんです。『ロウリュウ』(フィンランド式の入浴法)っていうのも、日本では一部で誤解されているから、ちゃんとした情報を伝えたいし……」

 7月1日に開幕する今シーズン、田中は左MFでプレーする予定だ。

「4−2−3−1の2列目の左で、『どんどん裏を狙っていけ』と言われています。アップダウンが激しくて大変だけれど、まだまだ動けるなと感じています。フィンランドは人工芝が多いんですけど、人工芝だとなんか脚が速くなったような感じもするんですよね」

 7月末までだった田中の契約は、コロナの影響で11月末までに変更された。その後については、移籍市場も例年とは違う状況になっており、先を読むことは難しい。

「できる限り現役を長く続けたいと思っています。あといろんなところに行ってみたい。北欧3国全部プレーしたりとかもいいな。そのためにも、まずは今シーズンを頑張りたいです」

 開幕まであと1カ月。今は何よりもその日を待ちわびている。


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