「ずーむ?」60歳“還暦記者”、急激なデジタル化の波でもがく!

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2020年06月07日 10:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 感染が収まるアフター・コロナの時期が来ると、企業のデジタル化が一気に進むのだそうだ。瞬く間に広まったテレワークを見ていると、たしかにうなずけるが、そうなると気になるのはITが苦手な高年齢ワーカーたちの動向だ。「長く働く」が合言葉になった今、ビジネスの急激な変化についていく必要があるからだ。大丈夫なのか?


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「彼も外出したくないだろうから、Zoomなら取材に応じるかもね」

「ずーむ?」

 記者が「オンライン会議」のことを知ったのは3月下旬、取材先とのこんな会話からだった。

 60歳の記者こそ、ITが苦手な高年齢ワーカーの一人だ。次々に出てくるIT機器・ツールを上手に使いこなせず、普段からコンプレックスを感じている。

 パソコン(PC)やスマートフォン、タブレットで相手の顔を見ながらミーティングができるのがオンライン会議だ。数あるソフトの中で米国生まれの「Zoom」が人気沸騰中……。そんなことを聞いても、「また若い人向けのツールができたのか」という程度の受け止めだった。

 しかし、そこからの展開は速かった。翌週には外資系企業の取材で、応対手段を指定されて初体験。4月にはプライベートな会合でも使うようになり、テレビで知った「Zoom飲み会」にも参加した。

 コロナ禍の外出自粛で、ビジネス社会に一番広まったのは「テレワーク」だろう。

 人事関連のシンクタンク、パーソル総合研究所が3、4月に行った2回の大規模調査によると、3月半ば時点では13.2%だった正社員のテレワーク実施率が、緊急事態宣言後の4月中旬には2倍以上の27.9%に跳ね上がった。東京都に限れば、3月の23.1%が4月には49.1%。なんと約半数の企業がテレワークを導入していたことになる。しかも、「現在の会社で初めて実施」したとする、いわゆる「テレワーク初心者」は3月が47.8%で、4月は68.7%にものぼった。

 日本中の多くのビジネスパーソンが、どうやら似たような体験をしたようだ。

 もちろん体験の「レベル」は記者のほうが低い。招待されてミーティングに参加するだけの「受け身」だからだ。ミーティングでは、若い主催者が「画面共有」といった様々な機能を使いこなして会議を進めていくのを、ただ見ているだけだ。

 これまでであれば気にしなかった。しかし、「コロナ後、企業のデジタル化が加速する」と叫ばれるようになって慌てた。さらなるデジタル化? 一体、何が起きようとしているのか。流れに乗り遅れたら、高年齢ワーカーははじき飛ばされてしまうのか……。

 超高齢社会が進み、高年齢ワーカーは「長く働く」ことが推奨されているから、なおさら関心がある。「定年」後のワークを有意義なものにするためにも、デジタル化にしっかりとついていく必要がある。

 ITライターの荻窪圭氏によると、オンライン会議が広がったのは「わかりやすさ」が受けたからという。

「顔を見ながら話したいというニーズにピッタリはまりました。複雑な操作や専門知識が不要ですし、今のノートPCにはカメラやスピーカーがついているので、多くの人にとって追加の機材が必要なかったことも大きかった。手持ちの環境で参加できたのです」

 なかでも、Zoomの浸透ぶりはすさまじかった。1日の利用者数を示すデイリーユーザー数は、昨年末に全世界で1千万人だったものが、3月末には2億人に跳ね上がった。

「ほかのシステムはビジネス専用だったのに対し、Zoomは専用アプリがなくても使え、主催者以外は会員にならなくても参加できる。オンライン飲み会にも使える敷居の低さで人気が集まりました」

 そして今、オンライン“コミュニケーション”に商機が生まれ、Zoom以外の他社も攻勢を強めている。例えば、グーグルが5月に「Google Meet」を一般公開して利用を促すなど動きは急だ。人によって使うシステムが違うため、いくつかのシステムをPCに入れておくのが常識になるかもしれない。

 デジタルを活用したコミュニケーションツールの変遷ぶりには驚くばかりだ。「電子メールに始まり、インターネット上での雑談であるチャットやSMSやフェイスブックのメッセンジャーなどのインスタントメッセージ、ネットを使った音声通話、そしてオンライン会議……」(荻窪氏)

 今後も新しいツールが出てくるだろう。高年齢ワーカーが戸惑う一因だが、ITジャーナリストの西田宗千佳氏によると、「歴史」を振り返って意味づけを整理することが大切という。

「おおむね2000年以降に仕事を始めた世代とそれ以前の人たちで、ツールの使い方に大きな違いがあるんです。デジタル化された文書を印刷するかどうかです。PCがオフィスに入り始めるのは1980年代の後半。そのころはすべて紙に印刷して使っていました。ところが、インターネットが広まるにつれ印刷しない文化が出てきた。すべてをデジタルのままで流通させようというもので、今はそれが主流です」

 なるほど、たしかに高年齢ワーカーは、印字して重要だと思う部分に赤線を引くなどしないと、読んだ気にならないタイプが多い。

 もちろん、企業のデジタル化はコミュニケーションの側面だけではない。

「日本のデジタル人材の育成はドイツに10年、米国に20年遅れています」

 こう話すのは、デジタルビジネスに詳しい経済産業研究所リサーチアソシエイトの岩本晃一氏だ。

「私たちの周りをみれば一目瞭然。米国のITの巨人たち、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の商品やサービスが広く普及していますが、これに対して日本企業のそれは少ない」

 一気に立て直せるかどうかはともかく、この状況を変えていくために「デジタル化」を強力に進める流れが産業界にあるという。変化の筆頭は、やはり働き方の中にデジタル機器・サービスが入ってくることだ。

「日本の労働生産性が低い理由の一つは、人力に頼ってデジタル化が進んでいないからです。機械は人間の頭脳の繰り返し業務ができて、速くて正確。経理や人事など間接部門はほとんどがルーティン業務ですから、それらの仕事が急速に機械に置き換わっていくでしょう」

 先の西田氏は、これからはブルーワーカーの現場にデジタル技術が入ってくるとみる。

「まだ手付かずの分野で、多くのIT企業が進出を狙っています。スマホのカメラや頭にウェアラブルなコンピューターをつけたりすることで、現場の作業をスピーディーに効率よくしようとするものです。紙を見なくても倉庫の状況をチェックできたり、映像を見ただけで工場ラインのトラブルが把握できたりするかもしれません」

>>【後編】“紙に印刷”をやめてみる? 高年齢ワーカー「コロナ後デジタル時代」の働き方 へ続く

(本誌・相庭学)

※週刊朝日  2020年6月12日号より抜粋

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  • IT機器が使える若い世代も、大半は操作できるだけで理解はしていない。AIの波は急速に広がり、使う人間すら必要なくなる。今後はAIでは補えない何かを持っていないと就労先がなくなる
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