コロナ禍の就活「リーマンの影響」じわり 独自調査で見えた大学側と企業側の「乖離」

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2020年06月07日 10:00  AERA dot.

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写真新型コロナの影響で閉鎖した明治大学のキャリア支援センター。学生の入構すらできないなか大学側も対応に苦慮している(写真:明治大学提供)
新型コロナの影響で閉鎖した明治大学のキャリア支援センター。学生の入構すらできないなか大学側も対応に苦慮している(写真:明治大学提供)
 人の気配がなく、ひっそりとする大学のキャリアセンター。多くの大学はコロナ対策で入構禁止などの措置を講じた。企業側から見れば長期化が予想される21年卒の就活。一方の学生や大学は、何を思う。AERA 2020年6月8日号では、「コロナ禍の就活」を特集した。

【旧帝大、早慶上理、MARCH、関関同立…リーマン・ショック後の就職率の変動はこちら】

*  *  *
 コロナ禍の就活を「リーマン・ショック以上」と指摘する声もある。だが、学生優位の「売り手市場」であることは変わらないと言うのは、大学通信の安田賢治常務だ。

「旅行や航空など厳しい業界がある一方で、全体が冷え込むことはないでしょう。東日本大震災の直後に損保業界が人気になったのと同じで、コロナで業績が伸びた企業もある。すでに2021年卒生の採用計画は立てているので、大手の採用ハードルはこれまで通りだと思います」

 加えて、1990年代半ばからの就職氷河期で、現在その世代がごっそり抜け落ちてしまった負の経験から、企業側も採用控えには慎重になっているという。実際、アエラが企業に実施したアンケートでも、多くは採用人数は「予定通り」と回答した。

 だが、それはあくまで企業側の視点。学生の就活を支援する大学側になると、不安の度合いが色濃く出ている。

 アエラでは、5月18〜25日に旧帝大(北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州)と早慶上理(早稲田、慶應義塾、上智、東京理科)、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)の全国20大学を対象に就活状況のアンケートを実施し、18大学から回答を得た。

 注目したいのはリーマン・ショック時との比較だ。当時と比べて「影響が少ない」と回答したのは北海道大と立教大の2大学のみ。東北大、京都大、大阪大、早稲田大、法政大、立命館大は未回答で、残る10大学はリーマン・ショックと同規模か、もしくはそれ以上の影響の可能性があると回答した。人気企業へのアンケートではリーマン・ショック並みの影響があると明確に回答した企業は少なかっただけに、学生を受け入れる側と送りだす側で「売り手市場」の考え方にギャップが生じ始めている。

 とりわけ、学生や大学職員への不安を増幅させたのは、ANAとJALの採用活動中断の知らせだった。ある大学のキャリアセンターは「学生たちを奈落の底に突き落とした」と落胆するように、21年卒生の人気企業ランキングでも文系上位に位置する両社の決断の影響は大きい。

 旅行や航空業界を志望する男子学生(21)が嘆息する。

「50社ほどエントリーし、うち10社は採用活動が中止になりました。ANAを含めて志望業界の多くが影響を受けています」

 男子学生が航空や旅行に志望業界を絞ったのは昨年12月のこと。日本ではコロナへの危機感はほとんどなかったが、雲行きが怪しいと感じたのは、参加予定の説明会の9割が延期やウェブへ切り替わった3月頃のこと。

「じわじわとコロナの影響を感じ始めました。でも、まずは就活をやり切って納得できる道を選ぶことがベストだと思っています」(男子学生)

 ウイルスの終息や経済活動の再開など、はっきりと見通しが立たない日々のなかで就活生たちは前に進んでいる。それは大学側も同じだ。

 普段は就活生でにぎわう大阪大のキャリアセンター。就職相談室の明かりは消え、学生の姿はなし。緊急事態宣言発令を受け、同大では学部生の入構を原則禁止とした。就活相談もすべてオンラインに移行。阪大の他にも、政府や自治体の要請に応じてほとんどの大学が入構制限を実施し、それに伴い就活支援も非対面になっている。

「就職の明治」として名高い明治大も4月以降、就職キャリア支援センターを全面閉鎖した。

「週2回のペースでオンライングループ相談会を開き、講義形式と質疑応答で学生と相互にやり取りしています。コロナの影響を不安視する質問も多くあります」(明治大就職キャリア支援センター担当者)

 自宅にこもる就活は他の学生の動きが見えづらく、ネット上に溢れる情報をうのみにして落ち込む学生も多くいるという。相談会を通じて他の就活生の悩みを知ることが安心感につながり、刺激にもなっている。

 同大では他にも、テレビ会議アプリ「Zoom」を使って週300人程度の学生の個別相談も実施。オンライン上でも従来通りのクオリティーで応対しているが、課題もある。

「対応できる学生数も例年の約6割です。予約制のため、なんとなく不安感を抱えている学生がふらっと立ち寄ることができなくなりました。就活の長期化も予想され、ずるずると続けてしまう学生が増える懸念もあります」(同担当者)

 大学はあらゆる事態を想定して、あの手この手で学生をサポートする。だが、コロナショックの影響を受けるのは21年卒だけではない可能性がある。

 大学通信が調査したリーマン・ショック後の実就職率では、08年にリーマン・ブラザーズが破綻し、日本の景気も悪化。内定取り消しが社会問題となったが、就職率に変化が起きたのは10年からだった。コロナとリーマンを一概に比較することはできないが、大学側もリーマンのトラウマがある。前出の安田常務が言う。

「これから採用計画を立てる22年卒はもっと割を食うはずです。業績次第で採用をやめる企業が出てきてもおかしくないです」

 今回の企業アンケートでも、21年卒に比べ22年卒の採用に対して歯切れの悪い回答が目立った。すでに夏のインターンシップを見送る企業も出始めるなど、大学も危機感を募らせている。

 思いもよらないコロナ禍に巻き込まれ、就活戦線は乱れに乱れた。だが、この数カ月の間にオンライン化が急速に進むなど、新たな就活の在り方も生まれている。

 リーマン・ショック時、実就職率を伸ばした名古屋大は、アンケートでこう答えている。

「ウィズコロナの時代到来で新たなビジネスの台頭も考えられる。採用勢力図の大きな書き換えが見られるのではないか」

 新時代の就職活動に取り残されないためにも、今を前向きに乗り切る姿勢が問われる。(編集部・福井しほ)

※AERA 2020年6月8日号

■アエラでは、人気企業と大学に緊急アンケートを実施。「コロナ禍の就活」の現状について特集しました。発売中の「AERA 2020年6月8日号」では、アンケートの回答をもとに学生・大学・企業の就活最前線に迫ります。

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