新しい地図『7.2 新しい別の窓』ABEMA担当者が語る、番組作りを通じて再確認できた3人の輝き

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2020年06月07日 12:01  リアルサウンド

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(C)AbemaTV,Inc.

 音楽の魅力を広く伝えるメディアとして、大きな機能を果たすテレビの音楽番組。CD全盛期に比べて番組数が減少する中、それぞれ趣向を凝らした番組づくりが行われている。そんななかでも、注目すべき番組に焦点をあてていく連載「テレビが伝える音楽」。第11回となる今回は、番外編として、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の新しい地図が贈る、月に1度のレギュラー番組『7.2 新しい別の窓』(ABEMA/以下、『ななにー』)の番組を手がけてきた株式会社AbemaTV編成制作本部・制作局長の谷口達彦氏にインタビューを行なった。


 今年の4月に3年目を迎えた。今や毎月第1日曜の夕方17時からは、彼らと過ごす時間……という習慣がついた視聴者も多いのではないだろうか。 そんな中、4月5日放送回からは番組放送開始時間を、17時から15時スタートに変更した。その狙いや、番組作りを通じて再確認できた彼らの魅力、そしてこの春から広がる『ななにー』の新たな可能性について聞いた。(佐藤結衣)


(関連:新しい地図が「#リモートななにー」で示した、立ち止まったときの”新しい価値観”の見つけ方


■「まさか」を生み出す番組に!


――「世界初のSNSバラエティ」と銘打ち、毎回7.2時間という前代未聞の長時間生放送と、新しい挑戦を続けてきましたね。


谷口達彦(以下:谷口):「まさか」を生み出したい、というのがもともとのコンセプトではありましたね。編成枠にとらわれない生放送というのは、ABEMAの強みの1つでしたから、長いキャリアを誇る3人でさえもやったことのない長尺の生放送をしてみようじゃないか、と。そこで、何が起こるかわからない予定不調和を楽しんでもらえたらという想いで、企画しました。また3人にとって「インターネットははじめまして」というタイミングでもありましたので、稲垣さん、草なぎさん、香取さんと一緒にソーシャルメディアを学んでいけるバラエティ番組になればと考えていました。


――たしかに、番組開始当初を振り返ると、一緒にSNSを始めたというファンの声もたくさん見かけました。当初は香取さんが「教えて、世界」と呼びかけて、そこでファンの方も改めてSNSの使い方をおさらいしていく形が印象的でしたね。


谷口:そうですね。もともと新しい刺激や環境に対する対応力の高い方々ですが、あっという間に使いこなしていた姿を見ると、さすがだなと改めて感心してしまいました。おそらく見ていてくださっている方もそうだと思うのですが、SNSを活用できるようになったからこそ、さらに聞きたいこと、知りたいこともあるのではと思い、番組としてはその少し先を見せられるように、SNSをフル活用して活躍されている方をゲストにお招きしています。


■演者と裏方をスイングできる香取慎吾の才能


――番組の中で、香取さんが「打ち合わせは1人で参加していて、稲垣さんと草なぎさんは何も知らされずに当日現場入りしている」と語られていましたが、あれはリアルなのでしょうか?


谷口:そうですね(笑)。もちろん、『インテリゴロウ』のような個別コーナーは、「どんな方とお話ししたいですか?」といった打ち合わせはありますが、全体の7.2時間のトータルデザインのようなものは香取さんとメインで行なっています。


――番組制作のどの段階から香取さんは関わっているのですか?


谷口:月1〜2回定期的な打ち合わせと、毎回の生放送直後に反省会のようなものをやっているんですよ。そこで、次の月はどんなことがしたいかとか、時間をかけて取り組んでいくプロジェクトについてとか、先々のことを話しています。


――香取さんは、コンサートの演出を担当されるなど、裏方としての活躍も広く知られていますが、番組作りを共にされてどんな魅力を感じますか?


谷口:一緒に仕事をさせていただいたからこそ実感できたのは、表と裏とをスイングできる稀有な才能の持ち主だということですね。演者として魅せる一方で、それを見た視聴者がどう感じるのかを瞬時に読めるというか。徹底したエンターテイナーでありながら、圧倒的な視聴者目線を持ち得ているんだろうなと。そのすごさを例えるなら、人格が何個もあるような感じです。通常の感覚では読み測れない細部まで気を回せる、アート的なエンターテイナーです。


――SNSシャッフル(稲垣はブログ、草なぎはYouTube、香取はInstagramと担当を決めて更新を始めた3人が担当以外のメディアもスタートさせた企画)のときも、Instagram、ブログ、YouTubeと、メディアごとにコンセプトが明確になっていて、さすがだなと思いました。


谷口:そのクリエーションも、すべてご自身のアイデアで進めていますからね。香取さんはインプットもすごいんですよ。ABEMAで放送されているドラマや恋愛リアリティーショーもいろいろとチェックくださっていて「あのパロディみたいなのやろうよ」みたいなアイデアもどんどん出てくるんですよね。Kattみたいなキャラクターものも香取さんが発案してくださいました。


■繊細さと大胆さが共存する稲垣吾郎の自然体


――先ほど予定不調和を楽しむというお言葉がありましたが、その中でも稲垣さんの“イラチ(すぐにイライラする)キャラ”の開眼は、大きな発見でした。


谷口:当然、生放送なので想定と異なることが起きることもあって、本当に現場のスタッフの事前準備と変化対応力に支えられていると思います。さらに、そこで起きたことをうまく生かすことができるのは、やはり3人の持つエンタメの力だと感じています。なかでも稲垣さんは、繊細さと瞬間的な大胆さみたいなものをお持ちなので、スイッチが入ると表情が一気に豊かになりますよね。


――個人的には、昨年の今頃、目黒川沿いでお花見をした際に、イライラしながらも(笑)屋台に買い出しにいく姿が微笑ましかったです。行かないと見せかけて、ちゃんと買ってきてくれるんだ、と!


谷口:そういう茶目っ気だったり、ある種の油断や無邪気さだったりというのは、作って出せるものではないと思いますので。そういう各シーンでの様々な稲垣さんをお楽しみいただけるのは、生放送ならではかもしれません。


――また、ブログでも「自宅に飾っているお花まで見せてくれるの?」と驚きました。


谷口:今まではプライペードを見せないイメージの方だったのに、サラッとやってくれていますよね(笑)。その花の奥に映る家をもっと見たくなる感じとか、そういうABEMAを含めたソーシャルメディアで遊ぶ感覚をより捉えていらっしゃるようにも見受けられます。


■何が起こるかわからない草なぎ剛のワクワク感


――香取さん、稲垣さんと続きましたが、草なぎさんについてはいかがでしょうか?


谷口:草なぎさんは、予定不調和の象徴のような方ですね。この『ななにー』の代名詞とも言える存在です。普段の3人でのトークのとき、歌っているとき、ゲストとトークしているとき……と、それぞれ全然違う顔をお持ちなので。いい意味で危ういというか、何が起きるかわからない感じが、いつも一緒にお仕事をする中でワクワクさせていただいています。きっと、そうした先が読めない感じも、YouTubeというプラットフォームとの相性がよかった理由だと思います。


――番組でスタートさせたYouTubeが、チャンネル登録者数100万人という大きな目標を達成しましたが、間近でご覧になっていていかがですか?


谷口:新しい彼を見出しているように感じています。YouTubeじゃないと見られない彼もあると思いますし、それはテレビスターとはまた違った魅力にも映るのでは、と。より一層、世代を超えて愛されていく人だと確信しています。


――いち視聴者としてYouTubeも拝見していますが、これほどコンスタントに更新されるとは、嬉しい誤算でした。


谷口:もともとハマったら強い方だからなのかもしれませんね。デニムに始まり、好きになるとコレクション熱もすごいので。そうした凝り性な一面と、予測不能な草なぎさんらしさと、そして時代や場所に漂う空気感がすごく合っていたのではないでしょうか。


■現場で生まれる“熱”を大事に


――これまで2年『ななにー』を続けてこられて、どの回も思い出深いとは思いますが、なかでも印象的な回やコーナーはありますか?


谷口:やはり『ななにーライブ』は、これからも続けていきたいコンテンツですね。今は、コロナウイルスの影響で無観客にしていますが、ファンの方を前にしたときの3人の輝き方はすごいので。やはりファンの方々の声援が、彼らのパワーになっているのだと実感します。それから人狼ゲームも視聴者の方からの反応がよかったですね。もともとネット上で流行していたものではありますが、3人がやるとまた違った味が出て、とても見応えがありました。


――盛り上がって、そのまま延長されたとき、『ななにー』ならではだなと思いました。


谷口: 3人も現場の制作陣も、生放送に慣れていればこその判断ですよね。「ここであと人狼1ゲームやったら枠にハマらない」という状況で、「(もう1ゲーム)いっちゃえ!」となるのは。そうした現場で生まれる“熱”みたいなものを、これからも大事にしたいと考えています。逆に、夏休み企画のような視聴者の願いを叶える企画も、またやりたいですね。生放送の予定不調和とはまた違ったモニタリングにはなりますが、ああいう形でこそ見せられるものもあると思います。


――個人的にはパリロケも好きでした。稲垣さんの日傘姿や素の彼らの観光も見ていて楽しかったです。


谷口:そうですね。そうしたロケ旅企画も、定期的にやっていこうという話もあります。


■視聴者の方とも一緒に番組を作っている感覚


――オンエア時のコメント欄を見ていると、そこに集まる疑似体験のようなものも生まれていると感じます。


谷口:そうですね。もともとそうした疑似的なお茶の間を作れるというのは、ABEMAの良さでもあります。コメント欄を見ながら「そうだよね」と同調したり、逆に「そうは思わない」という個人の感想を持てたりするので。『ななにー』でもリアルタイムにコメントを拾っていくというのはやってきたので、今後はさらにその先にいきたいっていう気持ちがあります。


――視聴者の方のコメントは届いていますか?


谷口:もちろんです。みなさんの熱は、リアルタイムのコメントでもそうですし、ABEMAの公式Twitterでの反応も見ています。また、オンエアがないタイミングでも「こういうのが観たい」という声を寄せてくださっているので、とても勉強になりますし、ありがたいです。そうした意見が私や演出、プロデューサーたちの深層心理には残りますから、無意識的に企画に反映されていくことも十分あります。そういう意味でも、3人とはもちろん、視聴者の方とも一緒に番組を作っていく感覚がありますね。


――3人とカメラなしでお食事というお年玉企画は「そうきたか!」となりました(笑)。


谷口:そうですね、今までだったら「嘘でしょ!?」となる、みなさまを驚かせる企画を、これからもやっていきたいと思っています。私も、ご案内のためにお店には同行しましたが、食事のお部屋は完全に3人とファンの方のみという徹底ぶりでしたからね。本当にカメラなしでしたから。


■次なる「まさか」を生み出すための変化


――この2年「毎月第1日曜日の17時からは『ななにー』」というルーティンができあがっている視聴者のみなさんもいらっしゃる中で、4月から15時スタートとなったのは、どんな意図があったのでしょうか?


谷口:たとえばロケシーンも15時からにすることで、夜景以外の美しい場所にも足を運べるようになりますし、ゲストの方も昼の時間帯が増えることによって出られるようになるケースもあります。そうしたいろんな意味でも、もっと自由度を高められるのではないかと考えた上でのチャレンジです。


――自由度の高さといえば、3月の放送回では専門家をお呼びしてコロナウイルスに関する質問を視聴者から集める緊急企画もありましたね。


谷口:そうした時代を感じて突発的にコーナーを作ることができるのも、この番組ならではだと思います。リアルタイムで発信できることと、中長期的な視点でエンターテインメントをお届けすることと、どちらも大切にしながら番組作りをしていきたいと考えています。


――コーナーの中には彼らがかつて出演していた番組を彷彿とさせるようなコーナーもありますね。


谷口:そうですね。そこは3人やファンのみなさんにとって「懐かしい」と思えるホームのような位置づけでありながら、一方で「新しい」と感じる挑戦の場でもありたいという願いでもあります。例えば、彼らがTwitterで「今からこの収録をします。質問を募集」と呼びかけるのも、今までは見えなかった制作シーンを一緒に参加できるようにしたいと考えてのこと。そのタイミングがフリになって、オンエアで答え合わせをしにくるという新しい流れを作りたいと考えていました。


――確かに、最初に彼らのツイートを見たときには「今から収録って話していいの?」という驚きがありました。


谷口:また一方で、2年かけてそうした流れもまた安定しつつあるなとも感じているんです。3人が今後さらにやりたいものをやってみるとか、コントとか、ドラマとか……具体的にはまだお伝えするのが難しいのですが、今『ななにー』だからできること。「まさか」をもう一度生み出していきたいですね。そのためにも変化し続けていくということ。その一歩だと思って期待していただけると嬉しいです。


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