『素敵な選TAXI』理想的な最終回に 竹野内豊×バカリズムが選んだ“ほろ苦い結末”

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2020年06月10日 06:01  リアルサウンド

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『素敵な選TAXI』(c)カンテレ

 新型コロナウイルスの影響で、玉木宏と高橋一生が共演する『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)の放送開始が延期となったことにより、4月から急遽再放送されてきた『素敵な選TAXI』。途中なぜか第8話だけが飛ばされたものの、特段時代性にとらわれない題材とワンクール分まるっと再放送されたことも相まって、初放送から6年経ったことを感じさせないほど火曜21時枠に浸透したように思える。そして6月9日に放送された最終話は第10話であり、事実上の“第0話”。それを意識したオープニングタイトルの話数カウントもなかなか小粋なものだ。


参考:ほか場面写真多数


 物語は3カ月前。床屋の店主をしていた枝分(竹野内豊)は恋人の真緒(奥田恵梨華)と食事に行くが、その優柔不断ぶりで彼女を怒らせてしまい、メールで別れを切り出される。追いかけるために乗り込んだのは、標(升毅)が運転する“選TAXI”。枝分は過去に戻って真緒との会話をやり直すのだが、今度は別のことが原因で別れを切り出されてしまう。再び選TAXIに乗り込んだ枝分は、標の提案で「cafe choice」に赴き、夏希(南沢奈央)やカンナ(清野菜名)にアドバイスをもらうがまたしても失敗。さらにもう一度戻ろうとしたタイミングで、標がスピード違反を起こし免停になってしまうのだ。


 第1話からさまざまな乗客たちを“人生の分岐点”へと引き戻してきた枝分という、ちょっぴり謎めいたキャラクターのバックグラウンドに迫るという、さながらヒーローのオリジン映画のようなストーリー展開は、実に理想的な最終回といえるだろう。枝分はどのようにして選TAXIの運転手になったのかを描くことは、1話完結でドラマ全体に劇的な変化が訪れない本作をどのようにして気持ちよく完結させるかという点で、かなり考え込まれた選択肢に思える。もっぱらこうすることで、いずれ続編が作られてもすんなり物語を始めることができ、現に連続ドラマから1年以上ブランクを開けて放送されたスペシャル版「〜湯けむり連続選択肢〜」はかなりスッキリした導入であったと記憶している。


 また同時に、これまでのエピソードの中で描かれていた、枝分が“パシリ”だった過去を裏付けるようなウダツの上がらない雰囲気であったり、一切説明がなかった「cafe choice」の人々と枝分や標との関係性をしっかりとすくいあげる。また第6話で登場した漫画「おひとよしトレジャー」や第9話にもあったトイレットペーパーが切れるくだりなどのデジャブも巧妙に織り交ぜていき、ラストシーンは第7話での枝分自身の言葉と結びつく。「今の状況はいろんな巡り合わせが重なってできている」。真緒が夢を叶えた姿を見て、それをリセットしてしまう選択肢を選ぶことを躊躇う枝分の表情。ほろ苦いこの結末は、3カ月間乗客を見守ってきた枝分らしい選択肢といえよう。


 今回の再放送では、途中から竹野内とバカリズムのスペシャル対談が冒頭に1分間だけ放送される「特別編」として放送されることになったが、カンテレの公式YouTubeチャンネルではテレビ放送されていないトークもいくつかアップロードされており、そこでは毎話登場する「犯罪刑事」の話や、何度もタイムスリップする枝分の時間経過などについても語られていた(現在は閲覧不可)。そのなかで、脚本を自画自賛していたバカリズム。初のプライムタイム連ドラ脚本だった本作から6年ですっかり脚本家としての活躍が板についただけに、そろそろ枝分とユニークな乗客たちの新たな物語を描いてくれないものだろうか。 (文=久保田和馬)


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