春から夏へ、季節をまたぐ熾烈な競争…虎の開幕一軍争いで注目の“東農大コンビ”

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2020年06月11日 11:11  ベースボールキング

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阪神・陽川尚将 (C) Kyodo News
◆ アピール続ける右の大砲候補

 開幕まで10日を切り、6月2日から12球団一斉にスタートした練習試合も残りわずかとなった。実戦を重ねていく中、選手個々の状態にも多少の差が見える。春先は不調だった選手が、夏を前に見違えるように状態を上げてきたり、もちろんその逆も…。


 踏ん張りどころを迎えているのが、7年目の陽川尚将だ。武器は、なんと言っても長打力。チーム随一の“飛ばせる男”は、プロ入り初の開幕一軍へ、1打席も無駄にできない日々を過ごす。

 今年は2年ぶりに春季キャンプを一軍でスタートすると、実戦を経るごとにスイングは鋭さを増した。

 3月15日のオリックス戦で7回にバックスクリーンへ逆転3ランを放つなど、チーム最多の4本塁打と出色の成績。新助っ人のジャスティン・ボーアやジェリー・サンズらのお株を奪うアーチ連発で、存在感は際立っていた。

 矢野監督も、「右で本塁打を打てる要素はこちらとしては必要な部分。陽川がいてくれるのは大きなものになるし、評価してます」と称賛。ロースター入りもはっきりと示唆した。


 確かな手応えと、最も欲していた数字も付いてくる過程は、間違いなく開幕一軍という目標に繋がっていた。そんな矢先、チームは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で活動休止。背番号55のアピールは“小休止”せざるを得なくなった。

 誰よりも「球春到来」を待ち望んでいただけに、4月に実施されたオンライン取材では「良い形で打ててた部分は多かったので、(3月20日に)開幕してほしかったっていう気持ちはある」と偽らざる本音も口にしている。

 ただ、悲観はしない。積み上げたものは無駄になるわけではなく、そんなつもりも毛頭ない。

 活動再開後も一軍に同行し、限られた出場機会でアピールを継続。6日のソフトバンク戦では、途中出場ながら2安打1打点の活躍。今年で29歳。プロ野球人生の分岐点に立つ男は、今こそ勝負を懸ける時だと分かっている。


◆ 3年目右腕の正念場

 そしてもう一人。3年目の谷川昌希は、開幕延期の影響を乗り越えるべく、真価が問われる。

 3月末の時点で、実戦では9試合連続・9回と1/3を投げて無失点。150キロを超える直球は無くても、右打者の内角をえぐるシュートを武器に、気持ちのこもった投球で“無双”。陽川と同じく、「個人的にはやっぱり今(3月に)開幕して欲しいのが本音です」と明かしていた。


 全体練習が再開された5月下旬以降、実戦で失点する場面も目立ち、状態は良いとは言えない。

 それでも、プロ入り前は九州三菱自動車で営業マンとして革靴の底を擦り減らした背番号34。雨でも、泥にまみれても、どんな道でも前へ進んでいくことが、求める結果を導いてくれることを知っている。

 リーグ屈指の層の厚さを誇るタイガースのブルペン。その一員として開幕一軍入りを果たすことが、飛躍を目指す右腕の第一関門になる。


 奇しくも陽川と谷川の2人は、東農大で1学年差の先輩・後輩の関係。「谷川が…」「陽川さんが…」と、互いを刺激に目の前の一振り、1球に全力を注ぐ。

 春から夏と、季節をまたぐかつていない“長い競争”を勝ち抜いて、「6.19」を目指す。


文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)

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