薬物依存の当事者、コロナ禍で「ハグは無理でも、オンラインのつながりを」評判は上々

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2020年06月20日 09:31  弁護士ドットコム

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薬物などの依存症からの回復に有効とされている「自助グループ」。同じように薬物に関する問題を抱える人やその家族などが集まり、体験の共有や意見交換をおこなうなど、仲間とともに助け合う場所だ。


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コロナ禍においては、当事者たちが立ち上がり、自助グループへの「橋渡し」としてZoomを用いたオンラインによるミーティングも開催された。



NPO法人アスク(ASK)(アルコールをはじめとする依存症の予防回復支援団体)が4月20日から始めたオンラインの集まり「依存症オンラインルームA.D.N.G.(https://www.ask.or.jp/updates/8423)」(アルコール(2ルーム)、薬物、ギャンブルの計4ルームを用意)には、あわせて100人が参加(6月4日時点)。



「ルームN(薬物依存症)」のサポートメンバーを務める栃木ダルクの栃原晋太郎さんは「コロナが収束したとしてもオンラインミーティングは続けていきたい」と話す。栃原さんに話を聞いた。(編集部・吉田緑)



●当初の目的は「最初のつながり」を持ってもらうこと

これまで、自助グループのミーティングは教会や病院、施設、地域の会議室などでおこなわれてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、会場を借りられなくなり、ミーティングを中止せざるを得ない状態が続いた。



自らも薬物依存症の当事者である栃原さん。薬物を使わなくなってから16年が経過するが、つぎのような不安を抱いたという。



「僕自身も、まわりの仲間たちも、安全な居場所や正直に話ができる場面が減っていったり、自分を綺麗に浄化する瞬間がなくなったりする不安を感じていました。



特にクリーン(薬物を使わずにいる期間)が短い仲間ほど、回復の楽しさや可能性を感じていないこともあるので、不安や不安定さはより大きかったように感じました」



そんな中、ほかの仲間やASK代表の今成知美さんの呼びかけにより、サポートメンバーとなり、Zoomを用いたオンラインミーティングを開始。まずはメールで参加依頼を受けつけ、主催者側とやり取りをした後、Zoomの各ルームに招待するという仕組みになっている。



「当初は、今まさに苦しんでいてどうやって生きたら良いのかもわからない人、自助グループを知らない人などに『最初のつながり』を持ってもらうことを目的としていました。



コロナが収束したときには、実際にリアルでおこなっている自助グループに参加できるような下地を僕の仲間たちと一緒に作っていけたら最高だなと思ったんです」(栃原さん)



●継続を希望する声、オンラインならではのメリットも

こうして、コロナ収束までの「つなぎ」、そしてリアルなミーティングの場への「橋渡し」として、オンラインミーティングが始まった。



しかし、緊急事態宣言の解除後も複数の参加者から継続を希望する声が挙がった。また、オンラインならではのメリットも感じられたと栃原さんは話す。



「メンバーの中には、実際に会うのは緊張してしまったり、地域のミーティングでは人間関係が作れなかったりした人も複数参加しています。



遠方のメンバーとも繋がることができますし、オンラインのほうが司会者などに発言を制限されない(言葉として止められるだけではなく、雰囲気や仕草で止められることがない)ので、正直に話せるといった意見も多く寄せられました。



このようなメンバーからの意見や要望もあったので、今後も引き続きZoomミーティングを続けていきたいと考えています」



自助グループで実際におこなわれるミーティングでは、仲間と握手をしたり、ハグをしたりすることも多い。栃原さんは、オンラインと通常のミーティングのちがいについて、次のように語る。



「やはりオンラインの場合は、通常の(リアルな)ミーティングで感じられる緊張感や雰囲気、人間関係の難しさなどを感じることができません。それらを感じながらも続けることで、手に入る回復もあると思います。そして何より熱烈なハグができません。



そのため、どうしても通常のミーティングの『代わり』にはならないのですが、回復の道を歩むうえで1つの選択肢になりうると思います」



●回復の道を歩むために…

「薬物依存症」は、薬物をやめたくても自分の意思でやめられない病気だ。少しずつ病気に対する理解は進みつつあるが、「薬物を使った人」に対してネガティブなイメージを抱く人も少なくない。そのため、「薬物をやめたい」「回復したい」などと願っていたとしても、誰にも言えずに問題を抱え込んでしまう当事者や家族も多い。



しかし、自助グループのミーティングでは、参加者が安心して話をする空間が提供される。「違法行為をした」などと通報されることはなく、「薬物を使いたい」「やめられなくて苦しい」などという正直な気持ちを話し、仲間と分かち合うことができる。



実際に、自助グループにつながることで、回復の道を歩むことができた人も少なくない。同じように薬物に関する悩みや苦しみを抱えた「仲間」とつながることで、当事者や家族の孤立を防ぐことも期待される。



コロナ禍でも、仲間や自らの回復のために立ち上がった当事者たち。ASKでは引き続き、参加を呼びかけている。




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