ユニクロ「エアリズム」だけじゃない? 「無印良品」「グンゼ」の夏用インナーが期待されるワケ

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2020年06月20日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

 新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言が解除されると、直後から梅雨入りし、本格的な暑さが到来しました。アパレル業界では、3〜5月、苦しい状況が続きました。3月、大型商業施設は営業していましたが、後半からは週末休業や営業時間短縮などが始まったばかりでなく、新型コロナに対する世間の不安が表面化しており、消費者の洋服の購買意欲が停滞。4月、5月は、施設の完全休業が相次ぎ、服を売ること自体ができなくなったのです。

 そんなわけでアパレル業界では、春物商戦が完全にすっ飛んで、いきなり夏物商戦が始まったという印象です。とはいえ、先日まで報道や多くの人々の関心事が新型コロナ一辺倒だったため、各ブランドの夏の新商品や広告はあまり話題になっていない状況です。そもそも、メーカーの展示会や発表会も新型コロナの影響で中止になっていたので、どんな新商品があるのかも、あまり周知されていないのは致し方ないかもしれません。となると、自粛が終わったとはいえ、商品の売れ行きは伸びなさそうです。

 そんな中、今回は夏用の肌着について考えてみたいと思います。マスクをしていると顔の周りに熱がこもるため、今までの夏よりも、いっそう暑さを感じることになるでしょう。注目の機能としては「接触冷感」ではないかと思います。肌に触れると一瞬「ヒヤッ」と感じる機能です。しかし、「接触冷感」とは、決して生地自体が冷たいとか、温度を下げるという「冷却」機能ではありません。あくまでも皮膚に触れたら「冷たい」と感じさせる機能で、言ってみればメンソールみたいなものなのです。

 各社の保温肌着に見られる「発熱」機能の逆バージョンとなる本当の意味での「冷却」機能を持った繊維というのは、まだ一般的ではありません。本来、その機能を持った素材のアイテムを大々的に販売できれば、大ヒット間違いなしと言えるのですが、現状かなわないので、「接触冷感機能」を使用することになったのだと考えられます。

 また、すでに夏向けの肌着では「吸水速乾機能」は当たり前、そこに消臭・防臭機能が付加された商品もだいぶ普及していますから、新しい機能を付け加えるとすれば「接触冷感」あたりが手頃だったという面もあるのでしょう。

 さて、では夏用肌着の各社の動向を見ていきましょう。定価が1,000円以下の商品の場合、今夏は、新型コロナで各社の販促が出遅れざるを得なかったため、これまでの知名度や販売実績に鑑みて、ユニクロの「エアリズム」が圧倒的に優位ではないでしょうか。「エアリズム」は、男性用は、汗をすばやく吸収・拡散、女性用は湿気をすばやく吸い取り、ムレやべたつきを抑制する機能性素材が用いられていることで知られていますが、値段にも注目。6月11日から「ユニクロ誕生感謝祭」が開始され、一部トップス類は、定価990円(税抜き)から、790円(税抜き)に期間限定値下げされていますので、コスパも圧倒的に高くなっています。4月、5月とほとんど実店舗が稼働できなかったため、ユニクロは6月以降も頻繁に値下げ攻勢をかけ、在庫を消化しようとすると思われます。

 また昨夏は、ゾゾが「エアリズム」と同価格帯のPB肌着「ゾゾエアー」を展開、「ベントクール」という機能性素材を使用して、話題になっていました。この素材は、水分を吸収すると、瞬時に生地の編み目が広がり通気性の良さがアップするという機能性があります。スポーツ向けのユニフォームなどにも使われているので、素材メーカーからは期待の声が聞こえましたが、それほど売れ行きは伸びず、ゾゾのPB自体が大幅縮小に。

 一方、無印良品の夏用肌着は要注目。今夏、一度試してみたいと思っているのが「綿でさらっとインナー」です。吸水速乾の機能性肌着は通常、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維を使用しますが、無印は綿100%。というのも、綿の含有率が高い肌着はポリエステルやナイロンなどの合繊製機能性肌着に比べて、汗を吸うとベタッと張りつく不快感が長く続くものなのです。しかし無印は、生地を構成する綿糸の外側と中心部分の密度を変えることで、速乾性を高めたとのこと。果たしてこの肌着は通常の綿主体の肌着に比べるとどれだけ肌離れが良いのか興味をそそります。なお、今年3月から、同アイテムは、990円(税込み、以前は1,290円)に定価が下がったのも見逃せません。「エアリズム」の定価も990円ですがこちらは税別なので、税込み990円の無印良品のほうが少し安くてお得感があります。

 では、1,000円オーバーの商品となると、グンゼの夏用肌着が期待大。メンズだと「ボディワイルド」の「エアーズ」、レディースだと「キレイラボ」の「クール」で採用されているのですが、これらはカットオフ(切りっぱなし)&完全無縫製が特徴です。首、袖口、裾がカットオフになった商品は、「エアリズムシームレス」をはじめ、各社から2〜3年前から発売されていますが、この「エアーズ」「クール」はカットオフだけでなく、袖と胴体の取り付け部分も縫製ではなく圧着されており、縫い目がまったくありません。これにより着心地が良くなり、特に夏には快適なのです。

 また素材についてですが、「エアーズ」のトップスの組成はポリエステル85%・ポリウレタン15%となっており、一度着用してみましたが、綿の含有率が高い肌着に比べると、汗を吸い込んでも肌に密着しないところが非常に良い点だと感じました。一方、「クール」でも、合繊主体の素材は、特に接触冷感/吸汗速乾性が高いことをアピールしています。ちなみに「エアーズ」「クール」ともにトップスは定価2,000円(税別)前後なので、「エアリズム」や「綿でさらっとインナー」に比べると価格は高め。値引きセールのときに買うのがオススメです。

 しかし、繰り返しになりますが、今挙げた「綿でさらっとインナー」にせよ「エアーズ」にせよ「クール」にせよ、新型コロナの影響で販促や広告活動が不十分になってしまったまま夏商戦を迎えているので、売れ行きという点ではあまり期待できなさそう。ありきたりですが、今夏の機能性肌着は「エアリズム」一人勝ちになってしまうのではないかと思われますが、果たしてどうでしょうか。
(南充浩)

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