西川きよしは、なぜこれほどまで面白いのか? 千鳥、中川家、テンダラー、藤井隆らとの「団体芸」の妙

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2020年06月21日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

テレビ・芸能ウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。

【今回のホメゴロシ!】伝説の漫才師が変容の末にたどり着いた境地……西川きよしの“見守られ芸”

 ここ数年、西川きよしから目が離せない。レギュラー番組『ごごナマ・おいしい金曜日』(NHK総合)は特に要注意物件で、「おじいちゃんが家でテレビを見ながらつぶやく感想」となんら変わらぬ素直すぎる発言が5発中4発、逆に、予想の斜め上をいく放送事故寸前のアッパーな言動が5発中1発というロシアンルーレットばりのスリルがあり、「何をしでかすか見張っていないとまずい」という意味で目が離せない。

 特筆すべきは同番組でトークゲストを招く回。きよしのはりきりスイッチが入り、テンションゲージが最高位までいってしまうので、ロシアンルーレットの「当たり」が出やすい。人気俳優を招いた回で驚異的な枚数のFAXが届けば「確定申告じゃないですか」、オーディションに4回落ちたエピソードを話せば「自動車学校でもそんなに落ちませんよ」といった亜空間ボケを披露したり、ゲストが子育てエピソードを話せば「子どもって、そういうところありますよねえ」となぜか子どものいない近田雄一アナウンサー(2020年3月までMC)に振ってデリケートな問題に抵触し、メインMCのテンダラー・浜本広晃に「(近田アナには)子どもいませんて」と小声でいなされたりなど、いろいろ大変だ。

 伝説の漫才師「横山やすし・西川きよし」として一時代を築き、吉本興業所属の芸人としては(桑原和男など新喜劇俳優を除き)笑福亭仁鶴に次いで2番目に古参となる西川きよし。昭和の時代には数々の大人気バラエティ番組でメインMCを張り、関西での抜群の知名度を武器に参議院議員を3期務め、名声を欲しいままにしてきた。「破天荒な相方に苦労させられた努力の人」期に始まり、「ヘレンおおきに」「息子(次男)がロックやってますねん」「娘が結婚して離婚しましてん」「息子(長男)が新喜劇に入りましてん」を包括する「“浪速のロイヤルファミリー”の長」期を経て、ここ7〜8年で一気に「ハラハラ見守られるおじいちゃん」期へと変容していったのが興味深い。

 「全盛期の切れ味は見る影もない」という状態になっても出演番組がなくならない。このレアケースは、長年第一線で活躍し、ドル箱として貢献してきた「やすきよ」のきよしに対する吉本興業からの「特別年金制度」のようなものかもしれない。また、どれだけ下の後輩にも自分から楽屋へ挨拶しにいき、番組内でイジられても「今日は面白くしてくれてありがとう」と礼を言うことを忘れないという、バカ真面目で奇矯なほどに寛容な人となりと、大ベテランなのに「(ヘレンが許す範囲で)イジってくれてOK」の空気を作り出したことも多分に影響しているのだろう。

 大阪のローカル番組や舞台できよしと長らく共演を重ね、親近感の強い中川家や千鳥などの後輩がこすり倒す「西川きよしのすべらない話」の効果も大きい。『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ)でCM明けにクレーンカメラが回ってきたら、きよしが「大阪最高!」とコールする段取りだったのに、直前まで隣席の千鳥にきよしが漏らしていた問わず語り「緊張するわ〜」に引っ張られ、CM明けコールが「緊張するわ〜」になってしまった話(千鳥・ノブ談)や、営業先で一緒になった際「久しぶりやなあ、元気?」と声をかけてきたきよしが、2時間後には先ほどの挨拶を忘れ、再び「元気やった?」と目ん玉ひん剥きながらガッツポーズで言ってきた話(中川家・礼二談)、空港できよしと鉢合わせた際、手に野菜ジュースを持っていることを忘れて話に夢中になりロビーの床に全部こぼしていた話(中川家・剛談)、そのエピソードトークを気に入ったきよしがバラエティ番組本番中、剛に対し「ほらお兄ちゃん、あの、空港で僕がジュース全部こぼした話して」と、あらすじとオチを全部言うかたちでのムチャ振りをしてきた話(中川家・礼二談)など、きよしのド天然エピソードは枚挙にいとまがない。そして、この熟達した「イジり手」「語り部」たちがテレビ界における現在のきよしの命綱となっていることは間違いない。

 話をきよしのレギュラー番組『ごごナマ・おいしい金曜日』に戻すが、この番組の歴代MCたちの「猛獣使い」ぶりにも目を見張る。19年3月までMCを務めていた藤井隆の、大御所であるきよしに最大限の敬意を払いつつも、きよしがトークにおける“徘徊”を始めれば「はい、おじいちゃんそっちじゃないですよ。こっちね」ときっちり軌道修正する手腕には唸ったものだ。19年4月のリニューアルからレギュラーとなった浜本は、藤井とはまた毛色の違う「猛獣使い」だが、こちらはあくまでも「芸人 対 芸人」のスタンスを貫きつつ、きよしの天然ボケを拾いツッコむ自然さと取捨選択の妙(拾えばケガする場合は大胆にスルー)が目を引く。また、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言以降、2カ月の間リモート出演となったきよしに、番組冒頭で「今週はお家でどのように過ごしましたか?」とスタジオからヒアリングし「塗り絵をしたり、パズルをしたり、本を3冊読んだりしました」「ラジオ体操を毎日しています。25日間かけてやっと間違えずにできるようになりました」などというきよしの答えに笑顔でうなずく岩槻里子アナウンサーなどは、もうベテランヘルパーさんの風情である。

 現在の西川きよしと彼を取り巻く状況はある意味、超高齢化社会の理想的なロールモデルと言えるのかもしれない。「お年寄りに優しく」などという歯の浮く金看板ではなく、年少者が年配者に敬意を払いつつも、決して腫れ物扱いせず、現役としてできるサポートをしながら自然なかたちで彼らの居場所を作る。年配者の側も、現役時代と形は違えど「今できるスタイルでの社会参加」を果たし、年配者と年少者が快適に共存できるシステムを……って、何をこの連載で真面目に語り出してるんだおい。まあ、とにかく西川きよしを含む「団体芸」は面白いということだ。今後もハラハラ見守りながら注目していきたい。

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  • 大御所だからいじったら、後で楽屋でセッキョウキャラではなく、いじられても、ニコニコしてるところもある意味で凄いけど、週末の地味なw番組をチェックしたラーターさんがいたとはねぇ。
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