選手にとって「超重要時期」 FA権取得のシーズンに成績は上がるのか?

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2020年06月22日 16:00  AERA dot.

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写真FAでの国内移籍とポスティングでのメジャー移籍を経験している山口俊 (c)朝日新聞社
FAでの国内移籍とポスティングでのメジャー移籍を経験している山口俊 (c)朝日新聞社
 以前ほど大型トレードが行われることが少なくなったプロ野球界において、主力選手の移籍といえばフリーエージェント(以下FA)権を行使してのものが大半となっている。FA権を行使した選手は他球団からの条件を聞くことが可能になり、言ってみれば自分を高く売る最大のチャンスとも言えるのだ。

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 メジャーリーグでは通算3166安打を放ったエイドリアン・ベルトレ(レンジャーズなど)がFAとなる年に好成績を残し、2度にわたり大型契約を勝ち取っている。果たしてNPBでもFA権を行使したシーズンで好成績を残した選手はどの程度いたのか。検証してみたいと思う。

 2010年以降にFA権を行使して国内の他球団に移籍したケースは49例で48人(鶴岡慎也が二度FAで移籍)、海外球団に移籍したケースは10人となっている。この中で移籍前年にキャリアハイ、もしくはそれに近い成績をマークした選手を調べたところ、以下の11人だった。

・国内移籍
小林宏之(2010年:ロッテ→阪神)
許銘傑(2011年:西武→オリックス)
糸井嘉男(2016年:オリックス→阪神)
山口俊(2016年:DeNA→巨人)
野上亮磨(2017年:西武→巨人)
浅村栄斗(2018年:西武→楽天)
丸佳浩(2018年:広島→巨人)
鈴木大地(2019年:ロッテ→楽天)
福田秀平(2019年:ソフトバンク→ロッテ)

・海外移籍
建山義紀(2010年:日本ハム→レンジャーズ)
和田毅(2011年:ソフトバンク→カブス)

 全体的に見ると少ない印象を持つのではないだろうか。更にこの中で許と和田については、2011年に導入された統一球によって、極端に投手有利となった影響も差し引く必要がある。昨年オフに移籍した鈴木も新設されたホームランテラスによって、本塁打数が伸ばせたという意味ではラッキーだったと言えるだろう。また、小林は移籍前年にリリーフとして結果を残したが過去には先発としての実績があり、山口はその逆のパターンである。そういう意味ではこの二人も特にFA権を取得する年が目立って好成績だったとは言えないだろう。

 逆にFA権を行使した年に成績を落としている選手も少なくない。過去10年では久保康友(2013年:阪神→DeNA)、涌井秀章(2013年:西武→ロッテ)、成瀬善久(2014年:ロッテ→ヤクルト)小谷野栄一(2014年:日本ハム→オリックス)、今江敏晃(2015年:ロッテ→楽天)、大野奨太(2017年:日本ハム→中日)などがその例と言える。また、久保や涌井については起用法について首脳陣と折り合わず、それが移籍の原因となったとも考えられる。捕手や完全なレギュラーではない野手の場合にも、出場機会を求めて移籍するというケースもあり、そのような選手は成績よりもポテンシャルを買われての契約とも言えるだろう。

 FAとなる年に成績がそれほど良くない理由としては、メジャーリーグと比べてFA権の取得までにかかる年月が長く、よほど早くレギュラーに定着した選手でなければ、いわゆる全盛期を過ぎているケースが多いということが大きいだろう。過去に移籍した選手を見ても、FAで移籍する2、3年前にキャリアハイの成績を残しているというケースが多い。一方でFAではなく、ポスティングシステムでメジャーに移籍した選手の例を見てみると少し状況は異なっている。

 こちらは選手の“旬”を逃したくないという気持ちと、球団もできるだけ高く選手を売りたいという思惑が一致していることからも、ピークに近い時期に移籍しているケースが多いのだ。過去10年では10人の選手がポスティングシステムでメジャーに移籍しているが、そのうち日本でプレーした最終年にキャリアハイを残した選手は以下の5人となっている。

西岡剛(2010年:ロッテ→ツインズ)
ダルビッシュ有(2011年:日本ハム→レンジャーズ)
田中将大(2013年:楽天→ヤンキース)
前田健太(2015年:広島→ドジャース)
山口俊(2019年:巨人→ブルージェイズ)

 また、牧田和久(2017年:西武→パドレス)、菊池雄星(2018年:西武→マリナーズ)の二人もキャリアハイに近い成績を残しており、こうしてみるとFAで移籍した選手よりも高確率で結果を残していることがよく分かるだろう。日本で圧倒的な成績を残せないとメジャー契約は難しいということは当然あるが、それに向けて選手のモチベーションが高かったという要因も少なからずあったのではないだろうか。

 そのことを考えると、昨年の契約更改の時にメジャー移籍の要望を伝えたと言われている千賀滉大(ソフトバンク)、山崎康晃(DeNA)、有原航平、西川遥輝(ともに日本ハム)などは球団に認めてもらいたいという気持ちからも、成績を更に伸ばすことも十分に考えられる。

 明確に意思は表明していないものの、メジャー志向を持っていると言われている鈴木誠也(広島)も同様だろう。またFAでは久しぶりに超大物と言える山田哲人(ヤクルト)も権利取得を控えている。果たしてオフに大型契約で移籍を果たすのは誰なのか。そういう視点から彼らのプレーぶりを見てみると、また新たな楽しみが広がるだろう。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

このニュースに関するつぶやき

  • そう言えば、FA権取得までの登録日数。今年は「係数1.3」で計算することで落ち着いたんだっけか。ま、妥当な着地点見付けたみたいね。山田がいるから、読売さんが一番喜んでるべな(笑)。
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