「ゼルダ嫌い」を解消するほど面白かった『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』

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2020年06月23日 19:51  リアルサウンド

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 Nintendo Switchの『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は既にいろいろなところですごさが語られているゲームだ。権威あるゲーム・オブ・ザ・イヤーという賞をいくつも獲得しているし、ゲームメディアを訪れればこの作品の記事がないことはまずあるまい。もちろん単なるゲーマーからも面白いという声が聞くことができる。


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 とにかく人の心を動かしたすごいゲームであることは疑いようがないのだが、私はもう少し小さくこのゲームのことを語りたいと思う。ただひとりの『ゼルダの伝説』が苦手だったプレイヤーとして。


 『ゼルダの伝説』シリーズは作品ごとにいろいろ違いはあるものの、だいたい謎解きという要素が用意されている。街中やダンジョンには大なり小なり仕掛けがあって、それを解くとアイテムが手に入ったり冒険を先に進めることができるのだ。ゲームを遊んだことのある人は謎が解けた時の効果音を覚えていることだろう。


 しかし、私はこの謎解きが嫌で嫌で仕方がなかった。子供のころ遊んだ『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は友人が答えを教えてくれなければ絶対に途中で投げ出していたし、成長してから遊んだ『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』は最序盤の謎解きが理不尽すぎて脳の血管がブツブツと何十本も切れるかのような錯覚を覚えた(幸い、その後は問題なく遊べたが)。


 謎解きの“謎”というものはいろいろな種類があるわけだが、私が『ゼルダの伝説』シリーズでつまづくのは「発想の転換が求められるもの」だ。そういうタイプの謎は答えを知れば簡単だが、その方法は容易に思いつかないこともある。特に固定観念に囚われがちな人はこういうものが苦手だろう。まあ、私のことなのだが。


 私は発想の転換が求められる謎が解けても「やったー!」と素直に喜べる人物ではなく、「これは謎というよりミスリードなのでは?」と思えてしまう。さらに「謎は状況や証拠から答えを導くものであり、それが通用しないものは謎というより騙しなのでは……」と明らかな負け惜しみまで言いたくなる。そんなことから『ゼルダの伝説』シリーズからは自然と距離を置いていた。いや、かといってこのシリーズがダメだと言いたいわけではない。良いゲームであろうと個々人の趣味に合うかどうかはまた別の話なのである。


 さて、そんな私が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を遊ぶ気になったのは妙なことであろう。理由はふたつあり、まずこのころは任天堂が「ゼルダの当たり前を見直す」とよく言っていたのだ。もし『ゼルダの伝説』が変わるのであれば、私のような人もまたチャンスがあるかもしれないと、そう考えたのである。


 もうひとつの理由は非常に単純だ。Nintendo Switchの発売当初はそこまでたくさんゲームがあったわけではなかったので、何かひとりでじっくりと遊べるタイトルがぜひとも欲しかったのだ。そして結論からいえば、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は私の「ゼルダ嫌い」をなくしてくれた。


 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は広大なハイラルの地を自由に冒険することができる。主人公のリンクは「ゼルダ姫を助け出す」といったおおまかな目標は与えられているものの、それをどういう順番でこなすかはプレイヤー次第だ。各地を回ればより力を得ることができるものの、いきなりラスボスに挑むことだってできる。


 そして世界にはたくさんの祠があり、そこに謎解きが存在している。謎そのものも理不尽さを感じるものが少なかったが(星を数えるやつだけは論外だが)、何より嬉しかったのは祠を無視してもいいというところだ。今までであれば謎が解けなければ先に進めなくなったのだが、それがないというだけで本当に心地よい。いや、途中の大きなダンジョンには解かねばならない謎もあるのだが、それも強引な解法があったので本当に助かった。謎に詰まって苦しんでストレスを溜めるということが本当に少ないのである。


 こうなるとハイラルの広大な大地はとても素晴らしいものになる。美しいが寒さが厳しい雪山、見ているだけで汗をかいてきそうな砂漠、突如大きなドラゴンが現れて驚かされるジャングル……。好きなところへ行けばいい、世界を救うのを忘れたっていい。今までは密室でゲームを遊んでいたかのようだったが、本作は穏やかな風が吹く中ですべてを楽しめているような気持ちになったのだ。


 そんなわけで、私にとって『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はすごいゲームである以前に、『ゼルダの伝説』への偏見をなくしてくれた一作なのだ。


(渡邉卓也)


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  • ゼルダシリーズは携帯機版も含めて一通りプレイ(リメイク版は除く)したけど、自分にとっては風のタクトくらいのボリューム感が一番丁度良いと感じた。
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