結婚後に一度も会わずに「リモート離婚」 “リモート入籍”から衝撃的な離婚に至った理由とは

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2020年07月03日 16:00  AERA dot.

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写真「リモート離婚」したエステティシャンのA子さん(撮影/飯塚大和)
「リモート離婚」したエステティシャンのA子さん(撮影/飯塚大和)
 新型コロナウイルスの蔓延は、人と人との関係性も大きく変えた。恋愛においてもリモートが活用され、一度も会わずに入籍するカップルも誕生した。だが、結婚後に一度も会うことなく「リモート離婚」に至ったケースはまれだろう。当事者にその特異な“結婚生活”を聞いた。

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*  *  *
「楽しみだな」

 今年1月、東京都に住むエステティシャンのA子さん(34)は弾む気持ちを胸に、イタリア行きの航空券を購入していた。

 A子さんには婚約者がいた。相手は9歳下のイタリア人の男性だ。彼とは4年前、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していた時に出会った。当時、英語がほとんど話せなかったA子さんにも、彼は優しく接してくれた。そんな優しさとイタリア仕込みの楽観的な性格にひかれ、ほどなく交際が始まった。

 2人で日本に住むようになり、彼は1年半、日本語の専門学校で学んだ。イタリアの創作料理店で培ったスキルを活かし、将来は日本のホテルのレストランで働くことを目指していたという。学生ビザの期限が切れようとしていた昨年9月、2人で今後のことを話し合い、自然と「結婚」の話に行きついた。

「配偶者ビザが取れれば、彼の在留期間にとらわれず、ずっと2人で一緒に過ごすことができる。この時は希望しかありませんでした」(A子さん)

 配偶者ビザは、申請から許可が下りるまでに平均で数カ月がかかる。その間に学生ビザで滞在できる期限を超えてしまうため、9月に彼はイタリアに一時帰国し、アルバイトで新生活に向けた資金をためながら、ビザに必要な書類の準備を進めることにした。入籍の時期は、半年後の4月ということで話が一致した。

 2人は遠距離の間も、こまめに連絡を取り合った。予定通り、4月の入籍に向けて出生証明などの書類を郵送してもらった。

「年明けにはイタリア行きの航空券とガイドブックを買って、彼の両親へあいさつに行く際のプランも立てていました」(A子さん)

 状況が一変したのは今年2月。世界中で瞬く間にコロナウイルスが蔓延し、イタリアでは本格的なロックダウンとなった。彼は買い物以外、家から一歩も出られない。お互いの国を行き来することは難しくなったが、すでに書類は整っていたため、「リモート入籍」に迷いはなかった。入籍に向け、A子さんは平日に休みをとり、大使館や区役所などを往復した。「休みなのにごめんね」と気遣ってくれる彼のために、足を動かすこともいとわなかった。

 そして3月24日、A子さんは2人分の婚姻届を携え、役所に1人で提出した。結婚をしたという実感はあまり湧かなかったが、

「無事に入籍できて、とにかくほっとしました」(A子さん)

 彼も電話越しに、「これで僕たち2人はオフィシャルだよ!」と喜んでくれていた。あとは配偶者ビザの申請をしつつ、コロナの収束を待つだけだ。

 ところが入籍から数週間後の4月上旬、日本でも「緊急事態宣言」が出され、前向きなA子さんの心境にも陰りがみられるようになる。彼の働こうとしていた飲食業界も軒並み閉店し、就職のめどが立たなくなったからだ。コロナ前の、積極的に外国人を受け入れるようなインバウンドの機運もすっかり消えてしまった。日本に来られたとしても、この経済状況では当面、外国人の雇用は期待ができない。

 さらに、ロックダウンが強行されたイタリアにいる彼は数カ月間、家から一歩も出られず、収入が途絶えていた。渡航や新生活のために蓄えていた貯金も、大半を使い果たしてしまっていた。

 先が見えなさすぎる……A子さんの不安は募るばかりだった。

「このままだと、入籍から一度も会えずにバツが付くかも」

 そんな不安が頭をよぎった。

 それでも5月の半ばまでは、彼の気持ちは前向きだったようだ。

「夏には一度、コロナが落ち着くかもしれない。来られるようになる場合に備えて、配偶者ビザを申請するための書類を準備しておいて」

 そんな彼の言葉に安心しつつも、A子さんの心の中では「貯金がゼロで仕事もないのに大丈夫なのか」という現実的な不安はぬぐえなかった。

「別れよう」

 5月末、彼の口から発せられた突然の言葉にも、A子さんは食い下がる気力がなかった。「仕方ないかな」と別れ話を受け入れた。

 前のめりだった彼の気持ちに急激な変化が表れた理由もわかる。イタリアではこの数日前に本格的なロックダウンが緩和され、電話越しの彼は「久しぶりに友達と会った」と楽しそうに語っていた。

「ロックダウン中は、家族としか話せなかった。久しぶりに地元の仲間と会って、やっぱり安心したのだと思います。それに彼は、友達や家族を大事にするタイプの人。こんな状況では、家族や友人と離れてまで日本に暮らすイメージはもてないのも当然です。気持ちが保てなくなるのも仕方ないかなと思います」(A子さん)

 日本に来たところで、「うまくいかない」という予感はあった。コロナの影響で、A子さんも収入が2割減った。働き口のない彼を養いながらではとても生活が立ち行かない。

「(来たとしても)家賃が払えない、飲みに行くお金もない、服も買えない。きっと我慢の連続だったと思う。愛はお金じゃないと言うけれど、最低限暮らせるお金がないと、人間関係もギスギスしてしまう。これで無理やり頑張って暮らしていたら、お互いすり減って、もっと悲惨な別れ方をしていたかも」(A子さん)

 入籍して3カ月半、一度も会わずに離婚することになった。離婚届もリモートだ。

「一緒にいるために、一生懸命やれることはやりました。人と人の縁は、めぐりあわせとタイミング。それが合わなかったなら仕方がない。『私と彼はきっと、そういう運命だったんだな』と思うしかありません」(A子さん)

 4年間一緒にいて、たくさんの時間を共有し、遠距離恋愛のさまざまな苦難も乗り越えてきた。それだけに、傷はまだ癒えていない。今は友人と飲み明かして、ふさいだ気分を発散している。

「まさか本当に、結婚から一度も会わずにバツが付くなんて。でもいつか、この『まさか』を笑い飛ばせていればいいな」

(AERAdot.編集部/飯塚大和)

このニュースに関するつぶやき

  • 会わずに結婚とか上手くいく訳ないじゃん! 男の方が長距離転居とかどう考えても無理があるし! 私も遠距離結婚の末の離婚だったけど、遠距離は二度とごめんだよ!
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  • 足らなかったのは〃弉萓稼ぐ力1伸ぐΔ里匹譴任靴腓Αって聞いたら全部正解の気がするけど、まあ本人達がいいならそれでいいんじゃないかな
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